プロローグ(1)始まりの朝
私が実際に体験したこと、私がマンガやアニメ、ゲームを通じて日々妄想していたことを実際に文章にしてみたいと思い、書かせていただきました。それらを参考にし、表現を大げさに、時に美化したりと手心をめいいっぱい加えたフィクションの作品です。現実に、または2次元の世界でありきたりかもしれない。そんな恋の行方を拙い文章力ですが、表現してみました。
そして先にもお伝えした通り、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ。
アラームをセットしていたスマホが枕元で音を鳴らしている。
ピピピッ、ピッ。
「んーっ。朝か。」
アラームを止め、今まで寝ていたベッドから上半身だけ起こした。
両腕を頭の上で組んで伸びをし、はっきり目を覚まそうと試みる。
するとコーヒーの香ばしい香りが漂ってきた。
毎朝父さんが淹れてくれるコーヒーの香りだ。
僕はベッドから出て制服に着替え、2階の自分の部屋から1階に向かった。
「おはよう。父さん。母さん。」
1階に降りた僕は笑顔で挨拶をする。
「おはよう。友季。」
そうすると両親も僕の名前を呼び、笑顔で挨拶を返してくれる。
「友介さんがコーヒーを淹れてくれてるわよ。あと、今日の朝ごはんにハムレタスサンド。」
母さんが父さんの淹れてくれたコーヒーとサンドイッチを勧めてくれる。
「ありがとう。頂きます。」
お礼を言うと、友季は朝食の置いてあるカウンターの隅の席に座り、手を合わせて食べ始めた。
2人が用意してくれる朝食はいつもとても美味しかった。
「ご馳走様でした。」
これが皆方家の日常の朝だ。
満足げに朝食を食べ終えた友季は、使った食器を洗い、登校の準備をしに2階の自室へと戻った。
「今日は始業式だから、必要なものは特にないかな。学園も昼までだし。」
そう言葉に出した僕は前日に用意していた鞄を持ち、早々に2階の自室から出て1階に向かった。
「行ってきまーす。」
両親に挨拶し、僕は家を出ようとした。
「あ、友季。入り口のプレートを表にしておいてね。」
母さんが終わりつつある朝の準備をしながら頼んできた。
「うん。分かってる。きちんと表にしとくね。じゃあ行ってきまーす。」
そして友季は入り口から外へ出て、扉のプレートを【CLOSE】から【OPEN】にした。
僕の家は僕が生まれた頃に両親が始めた喫茶店 《カルテット》だ。料理や飲み物に拘りのあるお店で、今では季節のお菓子や紅茶が近所でちょっとした人気になっている。それに、アルバイトに来てくれているウェイトレスの彼女たちは皆美人揃い。それもウチの自慢の1つだ。
「もっと手伝いができるように料理も練習しないとな。」
扉の外で友季は、まだ全てを手伝えない自分自身にちょっと困ったような顔を浮かべながら思いを呟いた。
「お~い。友季。おは~。」
そう言って自分の家から少しだけ離れた1件の家の前から、気軽に挨拶をしてきた制服姿の男子がいる。
幼少の頃から付き合いのある幼馴染の1人、《夏樹一護》だ。
「おはよう。一護。今日も朝から元気だね。」
「いやいやっ!今日からまた学園だよっ!春休み終わっちゃったよっ!テンション上がらないよっ!」
2人は同じ《公立東阪学園高等学校》に通う高校新2年生。2人が通う学園の始業式が今日なのだ。
「そうかな?すごく元気そうだけど・・。」
「まぁなぁ~。無理やりテンション上げて行かないと長い休みの後の学園は辛い・・・。ほんと辛い・・・。」
「だねぇ~。」
2人は苦笑を浮かべながら互いに頷き合う。
「そういえば今日は水ねえは?」
僕はもう1人の年上の幼馴染、《夏樹水華》がどうしてるのか気になって聞いてみた。
「姉貴が行った大学は入学式は終わったけど授業開始日からまだ日にちがあるらしい。今日はたぶんまだ寝てるんじゃね?何だ。気になるのか?」
一護はニヤニヤと悪そうな笑みを浮かべながら友季に聞いてきた。
「そりゃね。水ねえ何かやらかしそうで心配。」
これまでにも色々とやらかすことのあった水華。そんな無茶をする水華をいつもフォローしていたのが友季だった。
「うぅ・・。姉貴の心配をしてくれるやつなんて友季だけだよ・・。うちの親なんて・・・」
大げさに泣くふりをしながら一護がそう言いかけたとき、
「あら、友季くんおはよう。」
「おぉ。おはよう友季くん。」
仕事に行こうと、玄関から出てきたところだった幼馴染の2人の両親が声を掛けてきた。
「おはようございます。大吾おじさん。美加子おばさん。」
僕は小さい頃から知る2人に挨拶を返す。
『友季くん!友季くん!学園卒業したら、水華のこと嫁にもらってね。』
水華の両親はほぼ同時にそう言ってきた。
「はは・・。」
僕は苦笑いを浮かべつつ、そう返す事しかできなかった。
これはもうお互いに習慣になっているいつものやり取り。
「友季。そろそろ学園行こうぜ。」
絶妙なタイミングで一護が登校を促してくれた。もちろん一連のやりとりに一護も慣れているからだ。
「うん。」
僕は一護にそう頷いた。
「じゃあ、大吾おじさん。美加子おばさん。行ってきますね。」
そう言って、友季は2人に別れを告げる。
「はーい。行ってらっしゃい。友季くん。一護。」
「あっ、後で水華がアルバイトに行くと思うから今日も宜しくね~。」
美加子おばさんはそう言って送り出してくれた。
「はい。こちらこそです。それと頼りにしてるねって水ねえにお伝え下さい。」
友季はそう笑顔で返事し、2人に手を振り、学園に歩いて行ったのだった。