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終局

「いい加減、倒れたらどうです?」

「それはこちらのセリフよ」


バルバラさんとの戦いは大詰めを迎えそうである。

私もエミリアもバルバラさんもすでに殆どMPが尽きかけている。

私が隙を見てバルバラさんに詰めよって切り込んだり、エミリアが遠くから精霊魔法で攻撃をしたりと追い詰めることはできても決定力にはならない。

バルバラさんはいつも以上に魔力を込め始めた。

たぶんこれが最後の魔法になる。


「ナタリア、たぶん私もこれが最後かもしれない。この魔法でどうかバルバラを倒して」

「いいの?エミリアが倒したいんじゃ……」

「本当は倒したい。けど、私じゃできないことくらい分かっているから……。ナタリアに最後の役目を任せて本当にごめん」


エミリアは私に頭を下げる。


「大丈夫。任せて」


私はエミリアの肩に手を置いて二人でバルバラさんを見る。


「では、二人仲良く死ね!」


そう言うとバルバラさんは私達に向かって走ってくる。

両手には今まで以上の魔力が込められており、あれで殴られればかすっただけでも大ケガになると思う。


「固有スキル『魔力刀』」


私も刀を掴み直すとバルバラさんに向かっていく。


「『私、精霊魔術師が裁定者である彼の者の代わりに準精霊たちに願う。エレメント・ミラージュ』」


私の刀に精霊魔法が付与されたのが分かった。

私はそのままバルバラさんに刀を降り下ろす。


「勝ったーグフッ」


次の瞬間には私はからバルバラさんを刀で突き刺した。


「ど、どうやって」

「魔術騎士の固有スキル『魔力刀』は付与された魔法の効果を増大させる能力。さっきの魔法は蜃気楼の魔法を増大させたの」

「蜃気楼の魔法でそんなことは」


確かに、普通はかなり難しい。

自身の身体とそっくりの姿を蜃気楼で作り出すのは極めて高度な技術がいる。

少なくとも私ぐらいの年齢じゃ、普通はできない。


「ごめんね。私のお母さん、神速のリネットなんだ。だから、魔法操作だけなら小さい頃からずっと鍛えられてきたんだ」

「な、なん、だと」


私のお母さんはこの世界でも魔法に関して言えば、勇者を除いて右に出る者はいないほどの実力者だ。

その名を知らない人もいないだろう。


お母さんの魔法の構築スピードはあまりにも速すぎるため、神速の異名を持つ。

料理はあれだけど。


「バルバラ、どうです?自分がしたことを逆にされるのは」


刀を抜くとバルバラさんは倒れ、地面からエミリアを見る形になる。

流石に魔力切れを起こしてもう魔法は練れないようだけど。


「最期の言葉を聞きます。何か言いたいことはありますか?」

「クソッ。私にこんなことをしてただで済むと思うなよ」


バルバラさんはエミリアと私を交互に睨み付ける。


「それがあなたの最期の言葉とは思いませんでした。では、さようならバルバラ。残りの私の魔力全てであなたを葬ってあげます」

「クソオオオオオオオオオ」

「『私、精霊魔術師が裁定者である彼の者の代わりに準精霊たちに願う。エレメント・サンダーボルト』」


そのままエミリアはバルバラさんを精霊魔法で止めをさす。


「ようやく終わったね……」

「そう、だね……」


そのままエミリアは膝をつくと泣き始めてしまう。

私はただエミリアが泣き止むまで抱き締めた。

たとえ敵だったとは言え、ちょっと前まで仲間だった人をその手で殺めたんだ。

少なくともいい気分になれるとは思えない。


「ありがとうナタリア」

「どういたしまして」


私達は立ち上がると動きが止まってしまった。

優斗君たちがいる魔王城の方向に巨大なドームができていた。


「ナタリア!」

「うん!行こう!」


私達はすぐに優斗君たちがいる魔王城へと走っていった。

優斗君、どうか無事でいて!











「疲れました」

「つかれたー」

「ありがとうございます。ベリル様、ユキ様」


とりあえず魔王に奪われた全ての都市を奪還して近くのテラスで一息ついているとジュリエッタさんがやって来た。

ルルちゃんは現在各都市をレレイさんと回って結界を張るのに忙しいようでここにはいません。


「様付けしなくて良いですよ」

「いえ……させてください。お願いします。私達、今までベリル様たちのことをその……」


まぁ、なんとなく分かりますよ。

私達の力は普段あまり出していないですが、今回は早急にご主人様の元へ行くという予定がありましたからつい全力を出してしまいましたからね。

怯えても仕方ありません。

ルルちゃんなんて私が声かけただけでビクビクしますから、流石の私もちょっと心が痛いです。


「さて、ユキちゃん。そのご主人様からもらったおやつを食べ終えたらご主人様の元へ行きますよ」

「うん!わかったー!」


早くご主人様の元へ向かって魔王を殺さなければ。

たくさんやることがあって大変です。

ふとテラスからご主人様がいる方向を見て私は立ち上がってしまった。


「どうしました?ベリル様」

「あれは『氷河』」


私の加護による魔法の3段階目の魔法だ。

あれを使わなければいけない状況ということですか!

私はすぐに支度をする。


「ど、どうしたのですか?」

「私はすぐにご主人様の元へ向かいます。ユキちゃんのことは任せました」

「あ、えっと、ちょっと」

「ああー、ベリルさきいったー!ずるい!」


ユキちゃんとジュリエッタの言葉を背中で聞きながら私はテラスから飛び降りてそのままご主人様の元へと向かって行った。











祝詞を頭の中で構築していく。

この魔法は初めて使うな。

きっとこの状況をひっくり返せる魔法だと直感的に理解できる。


「『我、海の精霊と契約する裁定者が願う。我が望むはあらゆるものの静けさなり。その動きを止め、我を導き給え。我が成すその真なる力の片鱗を示せ』」


右腕に強烈な痛みが走る。

腕を見ると霜焼けのようになっているが、痛みが尋常じゃないほどきつい。

内側から刺すように痛く、思わず膝をついてしまう。

だが、ここで倒れるわけにはいかない。


「『氷河』」


直後、辺りが一瞬で静まり返るようにあらゆる音が消えた。

いや、違う。

氷柱・・が音を吸収してしまったようだった。


「な、なんだよこれ!?」

「すごい」


魔王と加山は今まで話すのを忘れたように急に言葉を発した。

だが、その言葉も随分と小さく聞こえた。

俺は痛みに耐えながら地面から前に顔を上げると魔物たちが氷漬けになっていた。

正確には魔物たちは俺が作りだした氷柱に閉じ込められて動けなくなっていた。


「ベリルの加護の魔法らしいな」


あくまで攻撃ではなく、防御や相手の無力化が主体的なのか。


「クソッ!」


魔王は踵を返すと逃げようとする。


「させるか!」


直後、天空を氷が覆い大きなドームのようになる。


「オラァ!」


魔王の魔法が放たれるがドームに穴が開くどころか、全くヒビも入らない。


「加山!乗れ!」


俺がそう言うと空中に氷の足場できる。


「これは!」

「早くしろ!お前が決めろ!」

「はい!」


加山は足場を駆けていくと魔王の近くまで来たところで跳躍する。


「クソが!死ね!トリー・ボルテニックサンダー」

「加山!避けるな!」


魔王の生み出した雷の前に氷の盾ができる。

その雷を受け止めると雷は何事もなかったかのように消える。

加山の足元近くにもう一段氷の足場を作る。

加山もそれに気付いたようでさらにもう一段跳躍する。


「『僕、剣の勇者が己の真なる力を以て、あらゆる障害を斬り捨て、人々を導く』」


あれは俺も知っている。

魔王は避けようとしたので最後に氷柱を一気に出現させると下半身を氷漬けにして拘束する。


「クソッ!放せ、放せよ!」


これで勝ったな。


「『エクスカリバー』」

「ギャアアアアアアアアアアアア」


魔王の真上から加山の斬撃が降り注ぐと魔王に直撃する。

そのまま俺の作った氷柱も破壊すると氷のドームに大きな亀裂を作って斬撃は消えた。

あれだけの強固な守りすら突破するのか。

やっぱり勇者って言うのは強いんだな。

俺はそれを改めて知った。

今回も読んで頂けてありがとうございます。

感想、評価、アドバイスぜひお願いします。


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