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魔王討伐④

「会うのはこれで2回目ですね」

「よく俺の前に立つことができたな。それだけは誉めてやるよ」


相変わらず上から目線な人ですね。

僕が栗原さんと別れて討伐軍に戻ってきてしばらくすると魔王がやって来た。

上手くこちらに誘導できて良かったです。


「良いのか?今ならまだ逃げられるぜ」

「残念ですが、前のように上手くいくと思わないで下さいね。僕も前とは違って本当に大切なことが分かりましたから」


魔王は僕を嘲笑しますが、僕は至って冷静に返します。

前の僕ならすぐにムキになったかも知れませんが、今の僕なら大丈夫そうです。

あの時の僕は弱いのに自分は強いと思っていた。

そして自分は特別だと過信し、何でも自分の力でどうにかなると勘違いしていた。


だけど、今は違う。

僕は自分の弱さを知っている、知った上で逃げないで戦いたいと誓った。

大切な人を守りたいと。


「チッ、さっさと終わらせてやる!」


魔王はそう言うと地面に降り立ち、前回と同様に魔物を召喚した。


「ゆ、勇者様」

「大丈夫です。ここはすべて僕に任せてください」


僕がそう言った瞬間


「おい、なんだよこれ!?どうして奴隷紋が消え始めている!?」


どうやら栗原さんは上手くやっているようですね。

奴隷紋は奴隷を縛り続ける物でその主人にしか解けない特殊な魔法です。

それは本来外部から消すことはできないはずですが、栗原さんはなぜかその魔法を解くことができます。

僕がじっとその様子を眺めていると


「勇者様、レレイ様たちから報告が届きました。現在、奪われた都市の7割の奪還が完了したそうです」

「ずいぶんと早いですね」

「はい。何でも二人ほど未知の魔法によって次々と魔物たちを蹂躙しているようで、破竹の勢いの進行しています。さらにその……マスターに早く会いたいなどと大声で言いながら魔物が消し飛んでいるらしく……町の清掃費が莫大になりそうです」


つくづく怖いですね、栗原さんのお仲間は。

良い意味でも悪い意味でも。

魔王は苛立ちながら僕を忌ま忌ましい物でも見ると


「お前の仕業か!」

「さぁ~、なんのことでしょう?」

「俺の奴隷共を殺しやがって!お前の始末は後回しだ。まずは俺の奴隷を殺しまくっている奴を殺してやる!」


そう言うと魔王は魔物たちに僕たちを始末するように命じると戻って行ってしまった。

奴隷紋が消えた原因が奴隷たちが殺されていると勘違いしているようですが、問題なさそうですね。


「勇者様、あの魔物たちをどうしましょうか?」


一人の兵士が怯えながら尋ねてくる。

確かに今ここにいる兵士ではあの魔物は倒せなさそうですね。

仕方ありません、本当はすぐに栗原さんの元へ行きたいのですがとりあえずここにいる魔物たちを全部倒しますか。


「腕がなりますね」


僕は剣を握ると魔物たちへ向かって行った。









俺がリリたちを見守っていると扉が吹き飛び、外から誰かが入って来た。


「てめぇが俺の奴隷を殺しまくっている奴だな!『トリー・ファイヤー』」


俺が何かを言う前にいきなり攻撃をして来た。

まぁ、事前になんとなくこうなるんじゃないかと思っていたからそんなに慌てなかったが。


「『我、水の準精霊と契約する裁定者が願う。アクアウォール』」


魔王の攻撃を防ぎ、奴をしっかり見ると俺と同じ日本人だった。

確か、一なんとか何々氏だっけ。

覚えてねぇや。


「てめぇ、俺の攻撃を防いでんじゃねえよ!」

「知るか」

「俺の奴隷共はどうした!」

「うるせぇな。キャンキャン騒ぐなよ」

「黙れ!俺の奴隷たちを殺しやがって!許さねぇ!」


何コイツ?

俺が奴隷たちを殺したと思っているのか?

ま、別に勘違いしているならこのまま勘違いさせておくか。

殺されたと思っているならそのままにしておけば奴隷たちの逃げる時間が稼げるからな。


「優斗さん、気をつけて下さい」

「分かっている。リリは治療に専念してくれ」

「はい」


それよりも俺の後ろで氷の壁に囲まれているリリたちの方が心配だ。

ここでこのままあの魔王と戦ったら問題だな。

外に出て戦うか。

そう考えたところで祝詞を構築する。


「てめぇは俺が惨たらしく殺してやる!魔王スキル『魔弾』」

そう言うと黒い塊が空中に現れ飛んでくる。

「『我、天空の精霊と契約する裁定者が願う。我を妨げるあらゆる障害を蹴散らし、我を導きたまえ』『業風』」

「ぐっ!なんだこれ!」


俺に着弾する前に魔弾共々魔王を外へ吹き飛ばす。


「てめぇ、何者だ!」

「お前を殺しに来た者だよ」

「チッ、勇者かよ」

「ふざけんじゃねぇ!あんな者どもと一緒にすんな!」


全く誰が好き好んであんな勇者勇者ともてはやされて浮かれているバカ共と一緒にされなきゃいけない。

全く、ただでさえ今回加山だけで面倒くさかったんだ。

もう二度と勇者なんかと関わるか!


「ともかくお前は殺す。自分のやってきたことよく理解しているよな?」

「ハッ、俺を殺す?できるもんならやってみろ!俺は無敵だ。それに俺のやることにいちいち雑魚ザコが口挟むんじゃねえよ!」


ため息が出る。

自分が最強とか無敵とかよく言えるな。

そう言えばチートだのなんだのとかも言っていたんだっけ。

チート持ちとか全員死ねば良いのに。

だいたい、加山早く来いよ!

コイツといるとマジ面倒なんだけど。


「泣いて詫びろ」

「仕方ないから相手してやる。さっさと死ねよ」


頭で祝詞を構築する。


「させるかよ!『トリー・ボルテニックサンダー』」

「『我、雷の準精霊と契約する裁定者が願う。エレメント・サンダー』」


俺の精霊魔法と魔王の魔法がぶつかる。

俺の精霊魔法が押されていると


「俺に楯突いたこと後悔させてやる!」


下衆ゲスのような笑いを浮かべて俺を見る。


「お前の笑った顔キモくね」

「なんだと!」


そのまま俺の精霊魔法が押しきられそうになった瞬間一気に巻き返して魔王を感電させる。


「ギャアアアアアアア」


だいたいトリークラスの魔法で自分最強とか勘違いしているじゃねえよ。

まぁ、雷系の魔法は俺が雷の準精霊とだけでなくユキと契約しているから強いのが原因だけど。


「殺す、殺す、殺す!」


やはり腐っても魔王なのか、そうそう感電させてもピンピンしている。

俺に対して呪いの言葉を吐きながらも向かってくる。

けど、その前に祝詞の構築終わったけどな。


「『我、大地の精霊と契約する裁定者が願う。我を拒むあらゆるものを破壊し、我を導き給え。我がなすその力を示せ』『雷光』」

「ギャアアアアアアアアアア」


さらにこんがりと感電させる。

けど、このままでは正直決着つかないな。

たぶん雷鳴でも殺すことはできないだろうな。


「もういい!やめだ!」

「何お前、自分から吹っ掛けておいて止めるの?ダッサー」

「ちげえよ!お前はゆっくりいたぶって殺して殺りたかったが、そんなのやめだ!今すぐ殺してやる!」


魔王はそう言うと俺が祝詞を言う時のように集中する。

あれはまずい。

直感的にそう思った。

俺は精霊魔法を唱えようとしたが、その前に魔王が祝詞を唱え始めた。


「『俺、この世を統べるいにしえの支配者がその力を紐解き顕現させよ』」

「『エレメント・アクアショット』」


間に合え。


「『融合』」


その言葉の直後辺りが光に包まれる。

目を開けると周りが多くの魔物たちに囲まれていた。

それに先程俺が倒した魔物たちよりも何倍も大きく力強そうだ。

まるで俺が初めて戦ったキングゴブリンを思い出す。

一体のゴリラのような魔物が殴りかかってきた。

とっさに後ろへ飛ぶとさっきまで俺がいた場所が大きく抉れる。


「おいおい、どうしたんだよ!さっきまでの威勢はどこへいった!ギャハハハハハ」

「お前、笑う時にそんなキモい笑い方すんなよ。見ているこっちがドン引きする位なんだが」

「てめぇ、それ以上喋るな!」

「なんだよ。急にマジギレするなよ。もしかして生前もからかわれたのか?」

「ちげえ!」


顔を真っ赤にして怒りを現す。

図星だったか。

けど、さすがにちょっとまずいな。

どうやって切り抜けようかと考えていると……


「遅れました」


ようやく来たか。


「遅いんだよ」

「主人公は遅れて来るものでしょう?」

「引きこもりが主人公面しゅじんこうづらすんな」

「お前、なんでここにいる!俺の魔物たちはどうした!」


魔王が加山を指さして声を上げる。


「あれなら片付けて来ましたよ。意外と弱いですね」

「ふ、ぶざけんな!前は手も足も出なかっただろうが!」

「前は前、今は今ですよ」

「よく言うな。ただの引きこもりが」

「栗原さんは黙っていて下さい」


加山を含めて魔王と下らない話をしながら祝詞の準備をしておく。


「加山、魔物は俺に任せろ。お前はアイツを討て」

「大丈夫ですか?」

「お前を更正してやったのが誰か分かっているのか?」

「エミリアたちでしょう」

「どうやら魔王よりも先にぶっ殺されたいようだな」

「じょ、冗談ですよ。本気でこちらに敵意を向けないで下さい。分かりました。魔物は任せます。しかし、魔王は浮いていますよ。どうやって討つんですか?」


魔王は魔物たちを召喚した後、空中に浮かんでいる。


「問題ない。この魔法なら魔王を討てる」

「わかりまた。お願いしますよ」

「ああ、任せろ」

「二人になったからっていい気になるなよ。お前らはここで俺が殺してやる!」


さて、魔王。

お前が成してきたことに対して俺が直々に裁定・・して殺すと決めたんだ。

せめて最期に泣き叫びながら死ねよ。

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