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エクスカリバー

「早くここから逃げて!皆まで巻き込まれる!」


けど、皆は互いに顔を合わせると僕に笑いかける。


「シュウイチがここで死ぬなら私たちも死ぬよ」

「どうして…」

「私はあの時シュウイチが助けてくれなかったら死んでいたよ。なら、最後までシュウイチのために戦いたい」

「あたしは元は奴隷だ。あの時、シュウが買ってくれなかったら今頃はそこらで魔物の腹の中か性奴隷に成っていたよ。シュウがいたからここまでやってこれた」

「私も同じ。シュウがお金を工面してくれなければ今頃あのキモイ領主に処女が奪われてた」


エミリアたちはそれぞれ思い思いの言葉をかけてくれた。


「なんでそこまで、僕に…。僕は…弱い」

「知ってる。シュウイチ弱いのにいつも無駄にかっこつけてるし」

「ならなんで!」

「私たちはそんな弱いシュウイチに救われたんだよ」


僕は思わず息をのむ。

そして皆に抱きしめられる。


「僕は逃げたんですよ…」

「知ってる」

「こんな臆病者のどこが良いんですか?」

「全部」

「全部?」

「うん。弱いところも全て含めて私は、私たちはあなたのことを愛しています」


その言葉に僕は動けなくなってしまった。


「なぁ、あの光景デジャヴなんだけど?」

「エミリアに私たちの出会い話したからかな?多分、パク、じゃなくて参考にされているんだと思うよ」

「リア、そんなふうに困った表情で言うなら素直にパクられているって言えば良いんじゃないか?」

「えっと、あはは~」


栗原さんたちが何やら話しているけど、僕の耳にはほとんど届かなかった。


「シュウイチ、あなたが立てないというなら私たちが立てるまで頑張るよ。戦えないって言うなら戦えるまで私たちが戦うよ。あなたが死ぬのなら私たちも死ぬよ。だって、本当はあの時死んでいたかもしれないのをシュウイチが助けてくれたんだもの」

「死ぬのは怖くないんですか?」

「怖いよ。すっごく怖い」

「なら-」

「でも、それ以上に私たちはシュウイチを失うのが怖い。あなたがいない世界に生きても私たちは幸せになれない。なら、最期の時は一緒にいたいんだ」


僕は自分が情けなくなった。

大事な人を守りたいと思っていたのに僕は逆に守られている。


「でも、シュウイチが死ぬのは今じゃない。シュウイチはいつでも誰かを助けてくれる心は弱いけど、志は高い人だって知ってるよ」


エミリアたちは僕の手を握ってくれる。


「自分に負けないで」

「あんな男の魔法くらい吹き飛ばすかっこいい姿を見せてくれ」

「シュウはあんな男に負けない。ナタリアたちの惚れている男よりシュウの方が何倍もかっこいいところ私は知っている」


人から指図されるのが一番僕は嫌いだった。

実の両親すら僕の気持ちは考えず、一方的に決め付けた命令だった。

でも、エミリアたちの言葉には全く嫌な気持ちがなかった。

むしろ、エミリアたちを守りたい、僕と一緒に死んでくれるとまで言ってくれているこの人たちをこんなところで殺されたくない。

絶対に、守りたい。

そう強く思った。


「ありがとう、エミリア、レレイ、ジュリエッタ」


そうだ、こんなところで彼女たちを殺させるわけにはいかない。

僕は再び剣を握りしめると栗原さんに向き合う。

僕の最強のスキルであれを止められるとは思えない。

けど、ここで素直に殺されたくない。


僕から死の恐怖が消え、絶対に抗ってやるという思いがわきあがっていった。

剣に心を委ねながらもう諦めたくない、逃げたくないと心に決める。

僕は弱いということも受け入れよう。


両親にもきちんと自分の考えも言えず、言われたことをやるしかなかった。

結局、何も言えずこの世界に来たけど、それが分かったうえで頼む。

もう、逃げない。

もし元の世界に帰れるのなら次はきちんと向き合う。


だから、どうかエミリアたちを守れる力を……


すると、どこからか声が聞こえた。

耳を澄まして聴くと僕の握る剣から聞こえていた。

エミリアたちは一切聞こえていないようだった。

僕にしか聞こえないということか。

僕は剣の言葉聞いていく。


『己の弱さを知ったか?』

「はい、分かりました。僕は弱い。栗原さんの言う通り、僕は自分で決めたことすらまともにできない人間でした。こんな自分のままだったら両親に心の底から従っているべきでした。けど、もう諦めません、逃げません。きちんと自分に向き合います。僕の大切な人たちと信念を守りたいです」

『そうか。精霊の契約者にまた貸しを作ってしまったな』


そう言うと剣から声が聞こえなくなってしまった。

でも、同時にこの剣の本当の使い方がなんとなくだけど分かった。


「そうか、そうやって使うのか」


ブロウさんに教わった宝具の使い方とは全く違っていた。

これなら、あの魔法を打ち消せる。

僕は静かに目を閉じると剣を天高く掲げた。







「これは!」


突然加山の剣が強く輝き出す。

俺やユキ、ベリル以外には見えていないようだった。


「なにこれまぶしー」

「ようやくですか。少しは期待できますかね?」


ベリルは一人でそうつぶやく。


「はい……分かりました」


一人で呟きながら静かに答える。

距離があるので何を言っているかはあまり聞こえない。

けど俺の方もそろそろまずい状態だ

くそっ、こっちももう限界だ。

このままじゃ、抑えられない。


「加山!お前がここで終わるような人間でないことを証明して見せろ!」


俺は加山に向けて雷激を放つ。


「蹂躙せよ!」


加山は目を閉じてゆっくりと剣を掲げると


「『僕、剣の勇者が己の真なる力を以て、あらゆる障害を斬り捨て、人々を導く』」


そして剣を降り下ろしながらはっきりと叫んだ。




「『エクスカリバー』」





今まで加山の斬撃とは明らかに違った。

何より今までの攻撃は黒い斬撃や白い斬撃だったが、今回のそれは金色に光り輝く斬撃だった。

雷激と加山の斬撃がぶつかり合う。

激しい衝撃が起こるが、雷激が徐々に弱まっていく。


「危ない!」


リアに抱きつかれてそのまま横にリアと転がる。

その瞬間、雷激が消滅し加山の斬撃はそのまま俺の横をすり抜け加山邸に直撃する。


「「「あっ!」」」


エミリアたちは間抜けな声をあげるが、加山の斬撃は加山邸を一刀両断して屋敷の後ろにあった木々も木端微塵に吹き飛ばした。

あっぶねぇー。

リアが助けてくれなかったら死んでた。

俺は立ち上がるとすぐに精霊魔法の準備をしようとしたが…


「栗原さん、僕の負けです」


加山は剣をゆっくりと鞘に戻すと頭を下げてきた。


「どうした?」

「栗原さんの言う通りでした。僕は腰抜けで、どうしようもないくらい臆病者です」

「……そうか」

「はい。でも、分かったんです。このままじゃ、僕はまたあの時の…、前の世界に生きていた僕に戻ってしまうって。せっかく、望んでいた自由を手に入れたのにそれを捨てて逃げるような真似はもうしません。僕はあの時の自分が嫌いだ。親の言いなりに生きている自分が」


少しは立ち直ったか?

まぁ、エミリアたちのお陰だけどな。


「それに大事な人たちを置いてこのまま魔王にやられるのもまっぴらごめんです」

「なら、どうすればいいか分かっているだろ?」

「はい、魔王を倒すしかありません。だからー」


加山はそう言って初めて俺に頭を下げる。


「栗原さん、どうか手伝って下さい。あなたの力を僕に貸して下さい」

「私からもお願いします」


エミリアたちも頭を下げる。


「この貸しは大きいからな」

「はい、ありがとうございます」


加山はそう言って顔を上げると今まで見てきた中で一番清々しい顔をしていた。

「なら、仲直りの握手をしようよ」


リアが近づいて俺に笑顔を向ける。


「そんなの別に要らん。子供のケンカじゃないんだから」

「そんなこと言わずにしませんか?」


加山が意外にもそんなことを言うので思わず目を疑った。


「栗原さんには散々酷いことを言っていましたし、今回のことも助かりました。少なくとも、僕はもう2度とあんなことは言いません」

「お前、急にどうした?イッたのか?」

「ちょっと、優斗君。ストップ!それはまずいと思うよ」


いやだって、そう思うだろ。

今までのコイツの対応を見れば絶対、特に俺にはそう言わないだろ?


「剣から少なくとも栗原さんはブロウさんより信用に値する人間だと助言を受けました。でも、その……個人的にはブロウさんのことも信じたいので……」

「皆まで言うな。分かったよ」


俺が手を出すと加山も手を出して握手を交わす。

宝具が加山を説得してくれて態度が良くなったのなら感謝こそすれ、ここで頑なに拒む必要もない。

それにコイツの言いたいことも分かる。

クソ王子は外面だけは良くして見せてやがるからな。


個人的に信じたいなら信じれば良い。

いつか手の平を返されるからな。

その時が楽しみだぜ。


とりあえず、俺たちは無事加山を立ち直らせることができた。

全く、下手をすれば魔王と戦うよりも面倒だったかもしれん。

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