訪問者
それから俺たちは魔獣討伐を中心にレベル上げに徹した。
俺の冒険者ランクは竜人族たちの働き掛けのおかげかCからいきなりAに上がった。
そのおかげで今までよりも魔獣狩りに参加しやすくなった。
やっぱりCよりはAの方が個人プレイができたりして動きやすい。
そして初めて魔獣を相手にしたときは苦戦をしたが、龍神との契約の後『雷光』や『雷鳴』だけでもかなり威力が上がり、時間はかかるが魔獣も倒せ、少なくともケガを負うようなことは少なくなった。
魔獣は魔物よりも多く経験値をくれるので俺のレベルも74から98程度までこの一カ月で上がった。
おかげで新たな固有スキル『真実』が手に入った。
この『真実』使うと、相手が嘘を言っているかどうか分かるらしい。
嘘か本当か見分けられるなんてすごいとか思うかもしれないが、このスキル基本的に本当に下らない嘘しか見分けられないという弊害がある。
例えば、朝飯を食べていないのに食べたと言ったのを嘘だと見分ける程度だ。
心配させないためについた嘘などの善意ある嘘、やむにやまれぬ事情で吐いた嘘は全く分からない。
相変わらずほとんど使えもしないようなゴミスキルだが、基礎体力やMPが少し上がるだけまだましだった。
リアたちもレベルが上がり50でクラスアップしたことでリネットと同じ宮廷魔導士のジョブに変わることができた。
何でも才能がある者しかなれないということでジョブチェンジしたとき大騒ぎになった。
俺もできるかなぁ~と一縷の望みを託して行ったが、案の定微精霊たちが邪魔して出来なかった。
畜生!
リアたちはそのままレベルが70代後半まで上がりもはや並大抵の魔物は一瞬で吹き飛ぶレベルだ。
そして相変わらず、俺いらなくねという状況に陥った。
他にも屋敷に連れてきた元奴隷の子たちで意志疎通ができなかった子たちにも読み書きを教えて一人立ちできる程度には面倒を見ることにした。
読み書きさえできればそれなりの場所に就職できるしな。
そうしてある日、剣の勇者加山修一が獣人族たちと共に魔王を倒したという情報が入ってきた。
俺達がいなくても結局勝てたということか。
散々、騒いでこれとか本当にうるさかったな。
加山が魔王を倒したとの情報を得てから数日の後、魔獣退治で金も貯まったことなので近々オヤジのところにでも行って武器を新品に変えようかと思っていたその日、朝食を取っていると屋敷のチャイムを鳴らす音が聞こえた。
「朝っぱらからいったい誰だ、シルヴィア」
「今日は誰も来る予定はないよ」
フェルミナやリアたちに顔を向けても否定の言葉返ってくる。
「全く、今日は色々と忙しいんだぞ。居留守にするか」
「さすがにそれはやめてあげない?今だって何度もチャイムを鳴らしているし」
リアが言うなら仕方ない、出てやるか。
何度もチャイム鳴らしやがってうるせえな。
ドアを開けると玄関にフードを被った者が来訪してきた。
即座に閉める。
「優斗君、どうしたの?急に扉を閉めて。というか、なんで精霊魔法を使う準備をしているの!?」
よく分かったな。
「怪しい奴がいたからこのまま精霊魔法を叩き込むだけだが」
「ストップ!ストップだよ、優斗くん!」
「栗原さん、私です。エミリアです!お願いします、助けて下さい!」
リアと問答をしていると聞いたことがるような声が聞こえた。
「どうやら幻聴を聞かせる人物のようだな。やはりここは―」
「優斗君、お願いだから一旦落ち着いて!どうみてもエミリアさんだと思うから!」
リアは必死に止める。
まぁ、少し冗談が過ぎたかな。
俺はもっとリアと問答していたかったが、仕方なく扉を開ける。
屋敷に入りフードを取るとやはりエミリア、その人であった。
ただ、前にあった時よりも装備がところどころ壊れかけているし、何よりもひどく疲れているようだった。
「どうした?ついにあのバカ勇者に飽きられたか?」
「優斗君!!冗談に聞こえないからそういうことは言わないで!私も優斗くんに飽きられるかもって思うから…」
俺がリアを飽きることなんてない!
むしろ一日中愛でていたいくらいだ。
俺はリアを抱きしめ謝罪をすると顔を赤くしながら照れる。
本当に可愛いなぁ~。
「いえ、そうではないですが…」
「まぁいい。ゆっくりしろ」
エミリアは俺のセリフを否定する。
名残惜しいが、リアを放すと俺が背を向けてリビングに戻ろうとする。
「待ってください!私たちを助けて下さい!」
エミリアにそう言われるので俺はため息をついて再び歩みを進める。
「えっと、優斗くん?エミリアが呼んでいるけど?」
「リア、俺はもうあいつらとは付き合わない。俺はあのバカ勇者に次会う時は敵同士だと伝えた。だから、俺がアイツら助ける義理はない」
何が助けてだ。
他を当たれ。
「お願いします。もう頼れるのはナタリアたちくらいしかいないんです」
エミリアは俺に頭を下げる。
「何度も言わせるな。これ以上関わる気もなければ助けるつもりもない。だいたい、助けろだ?あのバカ勇者ですら手に余って助けを求めたことに俺たちが何かできると思っているのか?」
俺の言葉にエミリアは言えなくなってしまう。
玄関の騒ぎを聞いてかリリ達も集まってくる。
とりあえずリリ達に事のあらすじを伝える。
「エミリア、お前が単純にリアたちに会いに遊びに来たのなら問題にするつもりはない。だが、別の理由で来たというのなら分かっているんだろうな?」
精霊魔法がいつでも放てるように準備をしておく。
「それを承知で来ました。お願いします!何でもしますからどうかシュウイチを助けて下さい!」
膝をついて頭を下げる。
「優斗くん、話だけでも聞いてあげない?」
ため息が出てくる。
どうして俺がこんなに面倒なことに巻き込まれなくちゃいけない。
「分かった。話だけは聞く。ただ、話を聞いたからって助けてやるとは思うなよ」
「はい。ありがとうございます」
エミリアはリアの手を掴むと立ち上がって涙汲む。
そんな顔すんなよ。
ムカつく相手が苦しんでいる姿を見るのは気分が良いが、さすがにムカつく相手の仲間にまで目の敵にするつもりはこっちにはないんだから。
エミリアを応接室に通して気分を落ち着かせる。
とりあえず、シルヴィアやフェルミナにもいてもらった。
「それで助けるってなんだ?」
「はい。その、何から言えばいいのか分かりませんがまずは聞いて驚かないで下さい」
「いいから言え」
「は、はい。実はー」
エミリアは一瞬迷ったようにするが俺たちに聞こえるようにハッキリと言った。
「魔王に負けました」




