新たな誓い
「さて、君たちのことは分かったけど、今後はどうするつもりだい?」
「どうって?」
優斗君が一人でどこかに行ってしまった後、シルヴィアさんがそう私たちに尋ねてきた。
今、リビングにはベリルさんを除いて全員いた。
ベリルさんはちょっと用があるって言ってどこかに行ってしまった。
「もう、獣人族の方にはいけないだろう?だからどうするのかと思ってね」
「たぶん、だけどこっちで魔獣討伐をしていると思う」
だいぶ動きづらくなったとは言え、人族の方でもクエストはある。
特に魔獣関連のクエストは世界的にも一気に増えた。
「そうか…なら、できる限り便宜を図るよ」
「ありがとう」
このまま生活するにもお金がかかるし、特に獣人族の奴隷にされていた人たちを連れてきちゃった以上、余計に出費がかかると思う。
その後も世間話をしながら今後のことを話していると。
「あの」
ふと、獣人族の少女が私たちに話しかけてきた。
「なに?どうしたの?」
「すみません。少し気になったのですが、皆さんはどういったご関係で」
そう言えば、話してなかった。
その子に私たちの関係を伝える。
個人的にはここにいる全員が優斗君を狙っているというのは何とも頭を抱えたくなるようなことだけど。
「そ、そうなのですか。それなのに、意外と仲がよろしいのですね」
「そうかな?」
「はい。私が先輩から聞いた話ではもっとドロドロしていると聞いていたので」
ドロドロって。
「まぁ、ここで争ったってしょうがないし」
「そうのですか?」
「うん」
優斗君の心の中にいるのはきっと……お墓の子のことだと思うし
「そうだね。あそこまで露骨だとさすがに争いは生まれないさ」
「そうですね」
「そう思います」
リリたちも頷きながら口々に言う。
やっぱりリリ達も分かっているんだと思う。
「ちょっと、お姉ちゃんまでなんで他人事みたいな顔しているの?」
「えっ?」
リリは急に私に問いかけてきた。
「そうだね。リアに僕らの気持ちは分からないんだからそんなふうに分かったような顔をしないでくれるかな」
「全くです」
どうして急に私が非難されているの?
「まさか…お姉ちゃん気づいてないの?」
「え、何が?」
私が困っているとリリ達は心底呆れたように私を見てくる。
「お姉ちゃん、自分が一番優斗さんに構ってもらえているっていう自覚ある?」
「いやいやいや」
私は否定したが、リリ達はジト目で見つめてくる。
「お姉ちゃん、優斗さんがいつも最初に可愛がりに行くのってお姉ちゃんが最初なんだよ。しかも、お姉ちゃんだけいつも長いし」
そうだったの?
「でも、優斗君の心にいるのはお墓の…」
「そうかもしれないけど、その次にいるのはお姉ちゃんでしょ!まったく、いつもいつもお姉ちゃんばっか……」
リリが恨めしそうに見つめる。
シルヴィアさんやフェルミナさんも同様に見つめてくる。
えっと、それはホント?
いや、本当なら凄く嬉しいけど、今のこの状況で顔に出せば間違いなくやられる。
皆になんて言い訳をしたらいいか分からない。
ユキちゃんたちに助けようと思って目を向けても
「これ、おいしい!」
「本当ですね!今までにない変わった舌ざわりがします!」
ユキちゃんとルルちゃんは優斗君からもらった杏仁豆腐っていうものに夢中で聞いていない。
「ちょっとお姉ちゃんには色々と理解してもらった方が良いみたいだね。いつまでも自分だけが特別扱いを受けていると思わないでよね」
「せっかくだし僕も手伝うよ」
「では、私も」
「ねぇ、待って!お願い!話をしよう、ねぇ!」
私はそのままリリ達に捕まると体を十字固めにされる。
そのままの体勢で脇や足の裏をくすぐられ続けた。
「ちょっと、ま、待って!それ本当に、キャハハハ!」
「リアはとこが弱いのかな?」
「お姉ちゃんは脇の下よりも首の方が効くよ」
「ちょっと、リリ!」
「では、そこは私がします」
そこからもう地獄だった。
笑い死ぬかと覚悟したほどだった。
特にユキちゃんたちもおもしろそうとか言って参戦してからはもう地獄の極みだった。
そうして優斗君が帰ってくるまで続くのでした。
「ベリルとここに来るのは初めてだな」
「そうですね」
ベリルと共にあの子の墓の前にまで来ると俺は綺麗に掃除をしてから腰を下ろした。
ベリルも隣に座る。
本当はここにベリルを連れてきたくはなかった。
ここは俺にとって自分の一番の弱みだから出来れば誰にも知られたくない。
でも、ベリルはどうしてもついていくと言って聞かなかった。
だからこそ今回は特別に一緒に行くことにした。
それになぜかベリルとならいいようなそんな気がした。
「久しぶり、と言っても昨日も来ていたね」
俺はそう言い始めると墓に話しかける。
下らない雑談から今日のユキたちに作ってあげた杏仁豆腐の話をしていく。
その間、ベリルはずっと隣で聞いていてくれた。
「実はね、君の故郷というかもしかしたら君について分かるかもしれない場所でちょっとあることを聞いてね」
今日、ジュリエッタから聞いたことを話し始める。
自分にとってはもうほとんど彼女のことを見つけるのは不可能に等しいことかもしれない。
「ようやく、君のことが分かるかもしれなかったのに分かったのはさらに見つけることが難しいということだけ。改めて自分の力のなさを痛感したよ」
「……」
ベリルはじっと聞いていてくれていたが、俺の手をそっと握ると体を預けてきた。
「結局、獣人族の方にはもう行きづらくなっただけ……俺がやったのはこんなことだけだ」
そんなことはない、そうベリルは俺に語るように視線を向けるが俺はそれに微笑むことしかできなかった。
ベリルは優しいから俺が悪いことや失敗を行っても許してくれるかもしれないが、俺自身はそれを許すことはできない。
過程は大切だと思う。
けど、その過程がいくら良くても結果がなければその過程は何もしていないのと等しい。
だからこそ、俺は…
「もう二度と君のような子が生まれないようにあの国を変えてやる!」
次こそは過程に見合う結果を残して見せる。
あの国のゴミみたいな考えをぶっ壊す!
それが俺にできることだと思うから。
そのためにはレベルを上げる必要がある。
今の俺のレベルではあの国を変えるだけのことはできない。
だからこそ、もっと強くなってできるようにしないといけない。
「きっと、今度君の故郷に行くときはもっと違った結果に導いて見せる。だから、少しの間だけここには来れなくなると思う」
俺にこの子への償いという意味で目標ができた。
この目標を達成するためにはこちらも死に物狂いでやらなければいけない。
「だから、少しの間だけ待っていて欲しい。次、ここに来るときはきっとすごい土産話を持ってくるから」
俺はそう言うと立ち上がる。
ベリルに手を差し出して立たせるとベリルが俺に抱きついてくる。
「えっと急にどうした?」
「ご主人様、どうかご自分を大切にしてくださいね」
「分かっている。もちろん無理するつもりはない。けど、あの国ふざけた制度はぶっ壊す」
これは俺が決めたことだ。
どんな汚い手を使ってもぶっ壊す。
「きっとこの子も喜んでくれています」
「そうだと良いが」
「はい、きっと喜んでくれていますよ」
そう言うとベリルは俺にキスをしてくれた。
「墓場なんだからそういうのはもうちょっと良いところでしないか?」
「ここだからですよ」
「?」
どういう意味だ?
墓場なんて情緒もへったくれもないだろ。
むしろ墓の中の非リア充から呪われそう。
俺達はその後、二人で屋敷に戻るとリアが全身に汗をかきながらぐったりしていた。
ちょっと色っぽい…じゃなくて、心配したが心配しなくていいからリリ達と仲良くしていてと言うので気にはなったがそっとしておいた。
その後はいつもの通りハーレムメンバーを可愛がった。




