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断絶

「どうしてリュインさんに手をあげたんだ!」

「修一あの男じゃ!」


加山に会いに行くと開口一番そう言われた。

隣にはなぜか俺が先ほどシバイてやった貴族娘がいた。


「加山、お前に聞きたい。あの時、俺に言った弱い人たちを助けたいというのは本心か?」

「なんですか?それよりも僕の質問に答えるんだ!どうして―」

「修一、早くあの男を殺してやってくれ!」

「俺の質問に先に答えろ。あの時、助けたいって言ったのは今でも本当か?」


加山は俺に向かってそう言うが俺は無視してもう一度言う。

貴族娘のことはどうでもよかった。


「ああ、もう。本当だよ。僕は弱い人たちを助けたいんだ!」


加山は髪をかきむしると俺に投げやりに答える。


「なら、どうして奴隷の子たちを助けてやらない?あの子たちはお前の助けを待っているんだぞ」

「そんなのは分かっているよ!けど、実際この国では奴隷が正当化されているんだ。そんな状態で僕が何をしたって無理だったんだ」

「それで魔王退治か?魔王を倒せば魔王に捧げられる人たちを救えると」

「そうだよ!」

「修一、早くあの男を殺してくれ!あの男は妾の物を奪ったんじゃ」


貴族娘がハエみたいにうるさく騒ぐ。

俺は加山に一番言いたいことを言った。


「加山、お前はこの国が変わらないからってだけで諦めたのか?」

「仕方ないでしょう!」

「仕方なくない!」


つい大声を出して加山の言葉を否定してしまった。


「できない、無理、そんな言葉でお前は諦めるのか勇者のくせに!俺はそんなことを言われたって諦めない!」


あの子のことをいくら聞いても調べても見つかないからって諦める訳にはいかないんだ!

それが俺があの子にできる唯一のことだから。


「栗原さんは勇者じゃないからそんなこと言えるんですよ!責任も義務もないくせに!」

「その通りだ。俺は勇者じゃない。お前のように果たすべき義務もなければ負わなければいけない責任だってない。でもな加山、俺はこの国の在り方を変えて見せる!」


もう2度とあの子のような子が生まれないようにするにはこれしかない。


「バカなことを言わないでよ!栗原さんはただの冒険者でしょう!そんな人がこの国を変えられるはず―」

「そうやってまたお前は諦めるのか?お前は勇者だろ!自分で自分が勇者になったのは必然だって言っただろうが!だったら、勇者であるお前がただ《・・》の冒険者が諦めてないうちに諦めるな!」


加山は俺にそう言われて一瞬言葉に詰まってしまった。

加山だってこの国を変えるべきことくらい分かっているに違いない。


「言いたいことだけ言って!栗原さんはまずリュインさんに謝るのが先でしょう!」

「加山、お前の隣にいる女は奴隷の子たちをぞんざいに扱い自由を奪っていたんだ。お前が今本当に助けるべき相手は違うだろ!手を差し出すべき相手を見間違えるな!」


加山は言い返せずに動けなくなってしまう。


「そうやって…」

「なんだよ」


加山はうつむいて床を見た後俺に鋭い眼光を向けてくる。


「そうやってまただますつもりだ!」

「だます?ふざけんな!だますわけ―」

「栗原さんはブロウさんにだってまだ謝っていないじゃないですか!」

「!!」


どうして俺が、クソ王子に謝らないといけないんだよ!

ぶっ殺されたいのか!

俺が怒りで顔をゆがませたのを加山は何を勘違いしたのか言い返せないと勝手に察したらしく


「図星を突かれて言い返せないんでしょ!やっぱり僕をまただまそうとしたんだ!」

「ふざけるな!あのクソ王子にどうして俺が謝らないといけない!それに俺はお前に嘘なんか言っていない。俺があの時言った言葉はすべて本当だ!」

「嘘だったでしょう。あの場には死体なんかなかった。僕たちのことをうらやんで僕たちとブロウさんの仲を悪くしたかったのでしょう!」

「いい加減にしろ!あのクソ王子と同じように異世界から来た俺のどっちを信用するつもりだ!」

「そんなのブロウさんに決まっています」


分かってはいた。クソ王子のせいで俺の信頼が地に落ちたことくらい。

でも、少しくらいは信用してくれてもいいだろうが!


「シュウイチ、それに栗原さんも少し落ち着きましょうよ」


エミリアが仲裁に入るがもう遅かった。


「あんなクソ王子を信じるとはとはとんだクズだな、お前は!それだから魔王城の攻略もできないんだよ!」

「なんだと!悪いことをきちんと謝ることさえできない人に言われたくありません!」


そこから先はもうほとんど覚えていない。

お互い醜い罵り合いをしていた。

加山のパーティーメンバーが止めようとしていたが止まる気がしなかった。

残念なことに俺達の罵り合いを止めたのは貴族娘だった。


「修一、いい加減あの男を!」

「そうでした。早くリュインさんに謝ってください」

「あくまでその女に付くつもりか」

「早く謝ってください。それともブロウさんにも謝らないようにリュインさんにも謝れないのですか?」


いい加減にしろ!

俺はクソ王子の名前を聞くだけで虫唾が走るほどなんだ。

加山は俺にぶっ殺されたいようだな。

それにあの貴族女もふざけやがって!

俺の堪忍袋の緒が切れた気がした。


「良いだろう。そんなに謝ってほしいなら謝ってやる。ついでに謝罪の品もくれてやる」


俺は祝詞を構築した。


「『我、大地の精霊と契約する裁定者が願う。我を拒むあらゆるものを打ち砕き、我を導き給え。我が成すその力を示せ』『雷鳴』」

「ぐっ、なんだこれは!?前よりもずっと重い」


俺のありったけの魔力とつぎ込み、ついでに微精霊たちの力も存分に借りた。

天井を突き破って加山に雷鳴が降り注ぐ。

貴族娘はその威力に腰を抜かしている。


「どうして微精霊たちが力を…」

「エミリア」


ずいぶん暗い声が出た。


「な、なんですか?」

「魔王城攻略の件、なかったことにしてもらう」


もう無理だ。

ここまでよく我慢したと褒めて欲しい。

俺にとって鬼門であるクソ王子のネタを振られ、貶され嘘つきだと呼ばれる。

これで魔王城の攻略を手伝えだと、ふざけるな!


「ま、待ってください。そんなもう一度―」

「エミリア、もう、いいですよ!こんな人と、一緒にいても、できる事も、出来なくなります」


加山は必死に雷鳴を受け止めながら俺に敵意を向ける。


「なら、お互い次会う時は敵同士でいいな?」

「ええ、それで、構いませんよ!くそ、このままじゃ、もう一度固有スキルを!」

「なら、じゃあな」


俺は転移石を取り出す。


「加山、どうせだ。最後に言う。俺が諦めてないうちにお前が諦めることだけは決して認めない」


そう言って俺は転移石を使って屋敷に戻ってきた。





「ということがあってあいつらとは縁を切った」

「そんなあっさり言っちゃ駄目だって」


リアから痛烈なツッコミをもらう。


「リアには本当にすまないと思っている。けど、これ以上あいつといるとぶっ殺したくて思わず精霊魔法を唱えてしまうんだ」

「まぁ、うん、優斗君の怒ったのは分かるけど…」

「実際、本当に打って戻ってくるとは思いませんでした」


リリには呆れたような言葉をもらってしまった。


「もう、優斗君が信頼を取り戻すのって……」

「やめよう、お姉ちゃん」

「ああ、問題ない。俺はリアたちがいれば問題ないしな」

「問題はあるような気が…ううん、なんでもない。そうだね、いつかきっと本当の優斗君のことを皆知ってくれる、そう、知ってくれる」


リアは一人自問自答を始めてしまう。

チャンスだと思ってリアには加山との仲介をしてくれたんだと思うが、俺はもうあいつらとは付き合えん。


「それでお前たちは調子はどうだ?」

「大丈夫です。本当にありがとうございます」


助けてきた元奴隷の子たちもリリの魔法で顔色も良くなっている。

傷も見た感じ良さげだ。


「リリ、本当に助かった」

「いえ、けどどうするんですか?このまま彼女たちをここに匿っているといずれ問題に……」

「そうだな…確かにどうにかした方が良いがあの貴族のところに帰していたら助けた意味がなくなる。なんとか策を考えないとな」

「あの、これ以上迷惑は」


助けた少女たちが心配そうに声を上げるが、それを手で制止する。

けれど、未だに心配そうな顔をしているので頭を撫でて安心するように優しく言う。


「お前たちはその心配はしなくていい。俺にもあの国の制度を潰す理由を見つけたからな」


もう二度とあの子のように悲しい思いをさせるわけにはいかない。

とりあえず彼女たちにはしばらくこの屋敷から外には出ないようにしてもらった。

見つかると問題になるからな。

現状、この屋敷に留まってもらい安全が確認できるまでここにいてもらうことにした。

この屋敷は無駄に部屋はあるし、食費に関しては外食することもなくなったし、安く仕上げられるようになったからそれほど問題ない。


この後、フェルミナとシルヴィアが帰宅し事情を説明して理解してもらった。

それを終えると俺はあの子の墓参りに向かった。

いつも一人で行くことが多いのだが、この日はベリルが付いてきた。


修正終了しました。

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