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翌日、俺は一人であの子の情報を探していた。

ちょっと一人で考えたいからと伝え、リアたちには屋敷に残っていてもらった。

それでもユキやルルは付いてこようとしていたが、別に戦うわけじゃないからと伝えて残ってもらうのに苦労した。

俺もたまには一人で考えたいことがある。

獣人族の間では俺のことはすでに広まっているようであちらこちらから忌々しそうな視線を前よりも受けながら情報収集をしていた。

俺が近づくと逃げようとする者もいたが、追いかけて無理やり捕まえて教えてもらった。

やっぱりいくら探してもあの子のことはこれっぽっちも分からなかった。

諦めて屋敷に昼食でも食べに戻ろうとしたとき


「貴様が修一に手を上げた者じゃな!」


振り返るとずいぶんと高そうなドレスを着た猫耳少女が赤い絨毯の上にいた。

ありゃ、リュイン家の公女さまか、とか周囲に集まってきた者たちが言う。

公女ということは貴族なのだろう。

獣人族が一つの巨大な公国であることは昨日教えられた。

無視して帰るのも良かったが、あるものを見てしまって俺は動けなくなってしまった。


「よくも妾の修一に手を上げたな。修一に手を上げた事、その命をもって償ってもらう!」


一人で勝手に盛り上がっているが俺はそんなことを気にしてはいられなかった。


「お前、その子は一体なんだ!」

「ん?なんじゃ?コレがどうしたのか?」


少女はそう言うと少女の脇に控えていた女の子たちを指さす。

俺がいたのは道の真ん中だ。

そんなところに絨毯なんかあるはずない。

実は指で指された女の子たちがせっせと用意していた。

その女の子たちは人族の子ではない、同じ獣人族の子だった。

歳はベリルよりもさらに2つか3つ若いくらいだろう。

けれど彼女たちはひどく粗末な服を着て、痩せこけていた。


「どうして同じ獣人族の子をそんなふうに扱う!お前たちは同胞を大事に扱うと俺が聞いたのは噓だったのか!」

「な、何を怒っているのじゃ、あやつは」


近くに控えていた獣人族の騎士に尋ねる。

騎士が耳元で何かを話すと少女は納得したような顔になる。


「ふむ、貴様は外から来たということじゃな?」

「なら、なんだよ」

「であるなら、知らないのも無理はないの。妾たちにおいて同胞とは革命戦士たちの身分の者たちまでじゃ。コレのような奴隷共は同胞とは言わん」

「革命戦士?何だそれは?その子たちはどう見ても同じ獣人族だろ!」

「革命戦士とは妾たちの国、リスティア王国を作った古の者たちじゃ。妾の先祖にあたる者たちじゃ。一方、コレらは革命戦士たちに反抗した当事の者たちの子孫じゃ。コレらと妾たちが同じであるわけなかろう」


同じ種族なのに階級があるのか。

何が先祖が対立しただ!

過去は確かに大切だ。

けれど、過去がどうだからと言ってどうして今生きている子たちが苦しまなくちゃいけない!

所詮過去は過去、未来を見なくちゃいけないだろ。


「それよりもお前がわらわの修一に手を出したということを聞いた!よくも―」

「加山は知っているのか?」

「へ?」

「加山はこの国に奴隷制度があることを知っているのか?」

「し、知っておるがそれがどうしたのじゃ!それよりも妾の―」

「黙れ!」


俺の叫びに少女を含め騎士たちがひるむ。

奴隷がいるのはどこの世界にいるのも当然だ。俺の世界にだってあった。

あの子に会う前の俺なら仕方ないと思うかもしれない。

けど、今の俺は違う。

今、目の前で死にそうなくらい瘦せている少女たちを見るとどうしてもあの時の少女のことが頭の中で思い起こされる。

目の前で誰かが死にそうになっている、弱っているそんな姿を見ているとどうしても放っておくことはできない。

そして何より俺を怒らせたのは加山が知っていながらよくも俺にあんなことをいけしゃあしゃあと言えたことに怒りが湧いてきた。

誰かを救う?

目の前で苦しんでいる人を見捨ててよくそんなことを言えたな!

自分が地下室でやってしまったからこそもう二度と繰り返しはしない。


「加山に手を出したか聞いていたな」

「そ、そうじゃ。よくも修一を―」

「いいぜ、来いよ。俺を殺しに来たんだろ?だったら俺も容赦はしない」


こいつらを含め加山に問い詰めないといけないことができた。

そして何よりこの国が腐っていることも確認しないといけない。

俺は集中すると一気に祝詞を完成させた。


「『我、天の精霊と契約する裁定者が願う。我を妨げるあらゆる障害を吹き飛ばし、我を導き給え。我が成すその力を示せ』『烈風』」


俺の精霊魔法によって辺りを強烈な風で吹き飛ばす。

初めて疾風魔法を使ったが風の準精霊の魔法と違って風をコントロールできる。


「なんなのじゃー!?」

「「「?!?!」」」


風によって貴族と騎士たちを大きく吹き飛ばす。

少女たちを飛ばさないように気をつける。

風は少女たちの前では見えない壁のようなもので迂回している。その光景に少女たちも不思議な様子で首をかしげている。

俺は少女たちに近づくと話しかけた。


「お前らはこのままあの女の奴隷でいるつもりか?」


三人の少女のうち2人が困惑する。


「あのどこのどなたか知りませんが、お嬢様に危害を加えないで下さい」


全く心のこもってない声でそう言われたって俺がはい、そうですかって引き下がると思っているのか?


「それにこの子たちに話しかけても無駄です。この子たちは話せませんので」

「そんなことを聞いているんじゃない!お前たちはこのままずっとそんな生活を過ごして一生を終えるので良いのかと聞いているんだ!」

「……はい」


うつむきながらそう言われた。

顔は見えないが、諦めに近い聞いているこっちが悲しくなるような声だった。


「自由になりたいと思わないのか?」

「思ったって無駄です。だって私達には奴隷紋があるんですよ。逃げられません」

「なら、その奴隷紋がなければ自由になりたいと思うか?」

「バカなことを言わないで下さい!奴隷紋は死なない限り解くことすらできないものですよ!そんなのできるはずがありません!」


やっぱり、束縛があるのか。

しかも、死ななければ解けないとはふざけたものを付けやがって。

でも、聖海なら解くことができるはず。


「『我、海の精霊と契約する裁定者が願う。我が救いしあらゆるものの束縛を解き放ち、我を導き給え。我が成すその力を示せ』『聖海』」

「な!?」


俺の足元から出てきた水が少女たちを取り囲む。

すると何かが壊れる音がした。


「嘘!?なんでどうして奴隷紋が壊れているの?」


少女は違和感を感じたのか胸の部分の服を引っ張るとそこから顔を覗かせる。


「それでどうする?お前たちはいつまでもあの女の元にいるつもりか?」

「あなた様がして下さったのですか?」


奴隷の少女は俺を見上げて尋ねる。


「それよりも答えろ。自由になりたいと思わないのか?」

「思い、ます。自由になりたいです!」

「なら、俺の手を取れ!助けてやる。後ろの2人も自由になりたいなら早く手を取れ!」


話せない二人にはもう一人の子がジェスチャーで伝える。

二人は我先にと俺の手を掴む。

転移石で飛ぶにはメンバー登録をするか飛ぶ人間の体の一部に触れていないと飛べない。


「き、貴様!どうやって妾から奴隷共を奪ったのじゃ!」

「へぇー、よく気づいたな」

「当たり前じゃ!妾の所有権が無くなればすぐに気付く!それよりもどうやってー」

「残念だか、お前たちとこれ以上話すつもりはない。置き土産を渡してやるからそれで我慢しやがれ」


頭の中で祝詞を構築、目標はあのバカ共に定める。


「『我、大地の精霊と契約する裁定者が願う。我を拒むあらゆるものを打ち砕き、我を導き給え。我が成すその力を示せ』『雷鳴』」

「「「「ぎゃああああああああああああ」」」」


上空から白い雷が降り注ぐ。

辺りは大騒ぎになっているが、そんなものはすべて無視して俺は転移石を使って屋敷へと飛んだ。




「え、えっと優斗君!?どうしたの?」


屋敷の玄関に戻ってくるとリアとばったり会った。


「その子たちは一体?」

「リア、リリを呼んできてくれ。この子たちの治療をして欲しい。俺はすぐにここからまた行かなければいけない場所があるから後は頼んだ」

「ちょ―」


リアに伝えると俺はすぐに加山邸へと飛んだ。

リアは何か言いかけていたが今の俺は機嫌が悪い。

何が救うだ、あの野郎!

加山、お前があの時言った言葉の真意よく聞かせてもらうぞ。

「お姉ちゃん、一体何?」

「優斗君がこの子たちの治療をしてだって」

「この子たちは?」

「分からない。言うだけ言ってどこかにまた行っちゃった」


私たちの疑問に気付いて獣人族の子が答えてくれる。


「えっと私たちはあの方に先ほど助けていただいたものです」


後ろ子たちも頷く。


「はぁ、なんとなく分かった気がするからもういいよ。治すから背中向けて」


リリは大きくため息をつく。

私もため息をついてしまう。

優斗君のことだ、どうせこの子たちを助けるためにまた暴れてきたのが目に見えて分かる。

優斗君が連れてきた子たちはひどく痩せていたし、ところどころ痣や怪我をしていた。


「お腹空いたでしょ?今からご飯作るからちょっと待っていて」

「でも―」

「いいの。どうせこういうことも含めてお願いされたんだし」

「あ、ありがとうございます」


断ろうとした子を抑えて、納得させる。

優斗君がこれ以上問題を起こさないことを願いながら私は厨房へ向かった

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