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夕食②

「優斗君、少しくらい話を聞いてあげない?優斗君が来る前に少し聞いたんだけど、結構大変な問題みたいだよ」

「エミリア、そんな人の力なんか借りなくても十分だよ!王国だって力を貸してくれるんだし!」


リアと加山でそれぞれ反応が異なる。


「けど、魔王城の守りはとても堅かったです。それでしたら、ここでナタリアさんたちの力を借りた方が可能性があります」


エミリアは加山を説得する。

俺達を使って魔王城の攻略を進めようっていう腹か。


「お願いします。魔王を打破するにはどうしても力がいるんです」

「どうして俺たちだ?そこらへんにいる獣人族にでも頼めばいいだろう?」

「実は獣人族の王国が手を貸してくれるのですが、レベルも強さも言ってはなんですがとても弱いです。あれでは正直魔王城の守りを打ち破れないのです。それでしたら、私たちも身をもって知っているエミリアさんたちの力を借りられればと」


確かに、俺はともかくリアとリリは魔術師のジョブだし、魔獣を倒してから一気にレベルが上がったって言っていたから強いし、ユキとベリルは精霊魔法を使えるうえルルは妖精魔法でバックアップができるからかなり戦力になると思うが。


「皆はどう考えている?」

「私はできれば手伝いたいと思うんだ。ここで会ったのも何かの縁だし、それにね…」


小さな声で俺に続きを言う。

「ここで優斗君の勇姿を見せれば悪い勇者さんの言葉を跳ね返せるかもしれないから」


確かにその通りだ。

ここで俺が戦えば少しは俺の評価も上がるかもしれない。


「けど、リーダーは優斗君だから優斗君の指示に従うよ」


リアは手伝うに一票か。


「私は反対です。魔王は魔獣とは力が違います。安易な気持ちで手伝っていてはこちらが危険になるかもしれません。リアさんはそこが分かっているのですか?」

「分かっているよ。でも、ベリルさんも魔王の話聞いたでしょ。だったら、やっぱりみんなを助けるべきだと思うよ。それに…」


ベリルがリアに尋ねるがリアも即座に言う。

リアの言葉の続き、俺の評価を再び元に戻すということを知っているのかベリルも納得して引き下がる。


しかし、魔王の話?

魔王に何か事情があるような気がするぞ。

俺の意図に気づいたようにリリが説明してくれた。


「実は先ほど優斗さんが戻っているときに色々と獣人族の事情を聴いたんです。実は獣人族地域に勝手に住み着いた魔王は事あるごとに子供や大人、それに男女問わず人質を要求してくるそうです」

「人質?」

「はい。なんでも殺してやらない代わりに寄越せと言ってくるそうです」

「殺さない代わりに人質を寄越せか。なんとも魔王らしいが、魔王に渡した人質はどうなっている?」

「それが分からないそうです。死んでいるかもしれないという噂がありますが事実の確認ができないそうです」


確かにそんな魔王なら倒すべきなんだろうが、ベリルの言うことにも一理ある。

相手の実力が分からない状態で戦えば、間違いなくケガをする。

最悪、魔王が加山よりも強ければ殺されることさえ想定しないといけない。


「他のみんなはどう考えている?」

「私は正直どっちとも言えません。リスクを考えるなら止めた方が良いかもしれませんし、人道的なことを考えるなら助けるべきだと思います。優斗さんの意見に合わせます」

「ユキはますたーといっしょにいるー」

「わ、私も優斗様に合わせます」


あくまで意見は分かれるか。

俺もよく考えて決めないといけない。

俺の判断で皆の命が変わるのなら余計に考えなければならない。


「少し時間をくれないか?今この場では即決するのは難しい」

「分かりました。でもできる限り早めにお願いします。魔王討伐軍の編成はすでに済んでいるということなので明日中にはお願いします」

「分かった」


一旦夕食会はお開きとなった。





リアたちが食器を洗うということで席を外している間に加山が俺のところに来た。

いつもは近くにいるユキとルルもリアたちの手伝いに行ってしまっている。


「少し話がしたいんだ。ついてきてくれるかい?」

「別に構わないが」


俺達は2人でテラスにやってきた。

夜風が穏やかに吹き、満点の星空が見えていた。

元の世界では都市の光で見えないけれど異世界のここは人工の光もないので、ある意味ここでしか見れない風景かもしれない。


「正直に言うよ。栗原さんの力なんかなくても僕は勝てる」

「それは良かったな」


まぁ、夕食時から俺に対しては終始キレていたからな。

ここに来るまでもずいぶんと機嫌が悪そうだった。


「だいたい、栗原さんみたいな弱い人がいても戦闘の邪魔です」

「自分が弱いことくらい知っている。だけどな、どうしてエミリアが俺に頭を下げてまで俺に頼んだのか分かっているのか?」

「そんなの栗原さんが僕の魔王退治の功績を横取りしたいだけに決まっているよ!」

「違うだろ!いい加減、少しは俺のことを信用しろ!エミリアが俺に頭を下げたのはお前のためだ!」

どうして仲間に狼藉を働いた人間に頭を下げてまで願ったのか、そんなの少し考えればすぐわかる。

「僕のため?栗原さんみたいに弱い人がいても僕の手助けにもならないけど」


バカにしたように俺を見てくる。


「好きな人が死ぬかもしれない場所に向かうんだ。たとえその人が強かったとしても心配するのは当然だろう。その人が少しでも生き残る可能性を上げるためなら少しでも戦力になる人たちをついて行かせたいってことだ。少しは察してやれ」

「エミリアはそこまで僕のことを…」


軽くトリップしてんじゃねえよ。


「確かに栗原さんはともかくナタリアさんたちは実力があるかもしれない」

「そこは認める」


俺がいても正直そこまで戦力になるかもわからない。

あの時加山を捕縛できたのはうまく誘導できたからに過ぎない。

さしで戦えばきっと負けていた。

あのときもそうだ。

俺が左腕に大けがを負ってまで魔獣を倒したのに渚は簡単に魔獣たちを蹂躙していた。

加山も渚ほど強いのならば当然俺なんか手も足も出ないだろう。


それに比べてリアやリリは感知魔法や回復魔法が得意だ。

きっといい働きができるだろう。

それにユキやベリルも龍神と契約してから異様なまでにさらに力を持った気がする。

戦場では加山の手助けだって出来るはずだ。

本人たちは隠しているつもりだろうが、俺には感知もあるからか何となくわかる。

どうせ本当の実力を出すとただでさえ俺がユキたちの契約者であることに負い目を感じていることにさらに拍車がかかるとでも思っているのだろう。

俺が契約者でなければきっとユキたちはもっと力を出せるはずなのに。


「どうしてそこまで勇者としての活動にこだわる?」


前から少し気になった。

どうして加山はここまで熱心に勇者活動をするのか不思議だった。

だからそれを尋ねてみた。


「僕が勇者として召喚されたのは必然だと思うんだ。僕は昔から弱いものいじめが嫌いなんだ。だからこそ、力を持っている僕が弱い立ち場の多くの人を救うことが義務だと思っているんだ。高橋さんや姫川さんはあんまり勇者として活動していないみたいだけど僕はいつかこの世界のすべての人を救える人間になるんだ。それが今の僕の夢さ。栗原さんは平然と嘘を言うし、人を貶すことしかしないから分からないかもしれないけど」


最後に余分なことを言いやがって。

俺は嘘なんか…言わないこともないが少なくともお前に対しては嘘なんか言ってねえよ!

貶すことだって貶されたから貶し返しているだけだ。

まぁ、俺に対する評価はどうあれ弱い人たちを助けたいと思っているのならいい奴なのかもしれないな。

するとリアが俺を呼ぶ声が聞こえた。


「ともかく今は少し考えたい。返事は後でする」

「別に栗原さんの力は必要ないから。それだけは分かっていれば良いよ」


本当にこいつは最後までむかつくことを言うな。

半ば事実だから言い返せない自分が悔しい。

だいたい、俺はお前よりも年上だぞ。

年上にはもう少し敬意を払え。


俺達はその後屋敷に戻った。

俺は一人で墓参りをしたのちに再び屋敷に戻ってきた。

少し考えなければいけなかったのでリアたちとイチャイチャするのはやめて早く寝た。

本当はあの子の素性を探すことが目的だったのに、どうして魔王退治の片棒を担がないかと言われるんだ。

もともと俺は魔獣さえ倒せる力を持てればそれで良かったのに。

「ご主人様、本当に倒すべきなのは魔王ではないのですよ。確かに魔王も倒すべきではありますが、獣人族の闇こそがこの世で一番消してやらないといけないのですよ」

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