和解?うん、きっと和解
「で、どうしてお前がこんなところにいるんだ?」
「お前なんかに言うことはないよ!それよりも早くこの縄を解け!」
加山邸に着いた後、加山を蹴り起こす。
さすが勇者の住まいなのか、俺が今住んでいる屋敷とほぼ拮抗するくらいの豪邸だった。
「クソッ、なんでほどけない。僕のレベルは100を超えているのに!」
縄をどうにか自力で解こうとするが、無駄だ!
「すみませんね。ご主人様の言うことは絶対なので」
ベリルが困り顔をしながらも加山たちに言う。
この縄、ベリルの精霊魔法でかなり強化をしたあげく準精霊たちの力も借りて強化に強化を重ねてある。
生半可な力では解けない。
「お前に聞いても答えないなら、お前の仲間に聞くだけだ。おい、エミリアって言ったか?どうして勇者のこいつがこんなところにいる?ここを縄張りにしているのか?」
「エミリア、言っちゃいけない。栗原さんは僕らを利用にしに来たんだ!」
「お前には聞いてない!黙ってろ!」
加山の口にタオルを巻いて話せないようにする。
他の仲間もうるさいので加山と同様の処置を行う。
「いいから教えろ。なんでここにこいつがいるんだ?」
「それはその……」
エミリアは困惑しながら言いよどむ。
まぁ、俺がどういう奴か加山からあることないこと言われているだろうし、加山たちをこんなふうに扱っている時点で警戒されるのも無理はないしな。
エミリアは勇者加山の仲間であり、精霊魔法士というその名通り精霊の力を使って魔法を使うヒーラーだった。
精霊魔法士は簡単言えば、裁定者よりも精霊に好かれやすいうえ精霊の力を引き出しやすい滅多にないジョブだ。
「別に言いたくないなら言わなくてもいい。ただ、俺達は被害者であることを一切信じず、未だに敵意を向けてくるこいつを殺してやりたいと思っている俺の気持ちも少しは考えろ」
「わ、分かりました。話します、話しますから殺すのだけはやめて下さい」
ダガーを取り出してちらつかせながら加山を指さしてそう言うとエミリアは慌てて懇願する。
「私たちは獣人族地域にいるという魔王を倒しに来たんです」
「魔王?」
「はい」
加山を見ると俺を殺さんとばかりに顔を赤くしながら睨みつけてくる。
なるほど。
勇者らしく仕事はしていたのか。
「だが、どうして人族嫌いの獣人族がお前たちには敵意を向けないんだ?」
「それはジュリエッタが獣人族であることで私たちの扱いが通常よりも良いのだと思います。それに……」
「それに?」
「えっと、シュウイチがこの前大量発生した魔獣から獣人族を守ったことが一番の理由だと思います」
助けてもらった相手だから信用しているってことか。
まぁ、俺も竜人族から同じような対応されたからな。
「お前たちがここにいる理由は分かった」
タオルを付けたままの加山に向かって話しかける。
「加山、俺達はお前がここにいることなんか知らなかった。ここに来た理由は単純に俺個人がある子の情報を求めて来ただけだ。お前の邪魔もする気はない」
タオルを外して加山が話せるようにする。
「嘘だ!そうやって騙そうとしているだけだ!」
はぁ~、疲れる。
少しは人のことを信用しろよ。
「それになんだよあの力は!どこでそんなチート手に入れたんだ!」
「チートじゃねえよ。地道にレベルを上げて、ユキたち精霊と契約できたから使っている力だ。むしろ、お前の方がチートみたいな力持っているだろ」
「また、そうやって嘘を言う!精霊がそんなに強いわけない!」
加山の言葉に周りにいた準精霊たちが怒りはじめる。
「ユキ、よわくない!」
「はぁ、どうしてこうも私たちのことを下に見るんですかね」
ユキも立腹してしまうし、ベリルはなんか呆れたように加山を見つめる。
「それに獣人族の皆に危害を加えるだけでは飽き足らず、僕たちにまで手を出すとはとんだ外道ですね!」
あ、やばっ、殺したくなってきた。
このままだと少しまずい、主に俺の精神が。
加山に思い切り蹴りを叩き込む。
突如、俺がそんな行動をとったので一瞬場が鎮まる。
その後思い出したように仲間の女たちやエルフ男が悲鳴や怒声を浴びせるので同様に蹴りを叩き込む。
「女性に対してなんてことをするんだ!」
うるせえな。
加山は起き上がると俺を睨む。
蹴りを叩き込んでも蹴った場所が赤く腫れているくらいで済んでいる。
これが勇者の特権の能力かと思うと腹が立ってくる。
俺なんかいつもケガをしながら何とか生きてきたっていうのにこいつはチートな武器を持っておきながら俺がチートだとふざけんな!
「お前らが俺達に向けて剣を向けてきたことを忘れたとは言わせないぞ。自分思い通りにならないからってふざけたことをいつまでも言いやがって」
「ぼ、僕に何をする!」
「お前、もうガキじゃねぇんだからいつまでも甘ったれたことを言うな!それにお前、自分の状況分かってないだろ?どうして俺がお前に手を出さないか分かっているのか?エミリアがお前を殺さないでと頼むから仕方なく我慢してやっているんだ。それを分からずなめたことを……」
「優斗君、だ、大丈夫?その、少し落ち着いた方が良いと思うけど」
リアが俺を止めようと手を取るが、俺は丁寧にそれをほどく。
「リア、別に大丈夫だ。殺しはしない。ただ、ちょっとこいつには物理的な教育をしてやらなければならない。それに精霊が弱いと思っているならその考えを改めさせてやるためにも必要なことだ。それに俺が外道?そんなことも知らなかったのか?そうだよ、俺は外道だ!」
一発加山を殴る。
「何をするんだ!?両親に殴られたことないんだぞ!」
その言葉はクソガキと同じ感じだったので思わずかぶってしまった。
「そうか、殴られたこともないのならここで殴られる痛みを知って少しは他人のことを考えるようにしろ」
その後、しばらく俺は殴り続けてやった。
準精霊たちのバックアップもあって、さすがの勇者であろうと何度も全力で殴り続けていると徐々にダメージを負うようだった。
エミリアが何度も俺を止めようと縋りついたが、無視を決め込んだ。
「わ、分かった。分かったからもうやめてくれ!」
「何が分かったんだ?」
「エミリアが悪いんじゃないって分かったから!」
加山は両頬を赤く腫れさせながらエミリアに謝る。
「それに栗原さんたちが僕たちの邪魔をしに来たんじゃないことも分かったから!頼むからもうやめてくれ!」
「分かればいいんだよ、分かれば」
俺はまたがっていた加山から離れる。
「男の人のこんな姿を見るのはこれで何回目なんでしょうか?」
リリがふと加山を見ながら感慨深そうに言う。
「今度からカウント取って見るか?」
「お願いだからそんなのとらないで!」
リアは相変わらずいい具合にツッコミを入れてくれるな。
「本当は他の人たちにも優斗君の良さを知ってほしいのに……どうしていつもこうなっちゃうのかな?」
リアは困ったように呟く。
仕方ないんだ。
俺が悪いんじゃない。
俺にいつまでもぶざけたことをするやつらが悪いんだ。
エミリアは加山に近づくと回復魔法で治している。
加山もエミリアに謝罪しているし、
エミリアも加山もどことなく俺に向ける視線が厳しい気もするが知ったことではない。
「お前たちがどこで何をしていようと俺には関係ない。俺の目的はあくまで人探しだ。いい加減理解しろ」
「分かったって言っているだろ!」
俺と加山は互いに怒りを向けながらもなんとか和解?をした。
リアたちとエミリアはどことなく疲れたように深いため息をついていた。
ふと、腹が鳴る音がした。
「ますたー、おかしちょうだい」
「はぁ、なんか急に怒りが萎んでいくんだが?」
「こういうことがあるからユキちゃんにはいて欲しいんだよね」
リアはそう言うと困ったような複雑な表情をした。
その後、お互いにこれ以上関わらないということで約束し、加山とその仲間たちの縄を解いた。
俺と加山及びその仲間とは完全に決裂したが、リアたちがどうにかしてくれると思って後のことは任せた。




