殺し合い
エミリアと言われた少女の説得むなしく加山は剣を抜いて俺に向ける。
剣は刀身に一筋の金色の線が走り、輝きを放っていた。
集中が少女の乱入で削がれたが、すでに祝詞は完成している。
「『我、大地の精霊と契約する裁定者が願う。我を拒むあらゆるものを打ち砕き、我を導き給え。我が成すその力を示せ』」
俺は加山に向けて放つ。
「『雷鳴』死ねぇぇぇぇぇ」
「ちょっと!優斗君!殺しちゃダメええええ!」
リアの突っ込みが入るが俺はありったけの力を込めて撃つ。
「な、なんだ!?これは!?」
加山の頭上から白い雷が空から降り注ぐ。
剣で受けとめようとするが、予想以上の重さだったのかが両手で剣を支えてどうにか受け止める。
加山の立っていた足元は大きく窪む。
あれっ?雷鳴ってあんなに威力大きかったっけ?
龍神の加護をもらって変わったのか?
「くっ!このままじゃ押し負ける!」
加山は苦悶の表情をすると
「『僕、剣の勇者が古の力を紐解き、その力を顕現させよ』『風雷剣』」
スキルを使ったのか俺の雷鳴は消し飛ぶ。
加山は額に汗を浮かべながら俺に勝気の顔を向ける。
「ふ、その程度です―」
「『我、水の準精霊と契約する裁定者が願う。エレメント・アクアショット』」
「ちょ、遠距離攻撃とかずるいよ」
加山はとっさに避ける。
加山に向かって放たれた精霊魔法はそのままギルドへ突き刺さって壁を破壊する。
ギルドで『エレメント・チャージ』を打った時はかなり威力を抑えていたから分からなかったが、やっぱりこれまでよりもかなり強くなっている。
俺はそのままアクアショットを打ち続けながらギルドを破壊する。
「加山様、援護します」
「させると思いますか?」
エルフ男が俺に向かって魔法を唱えようとするが、途中で魔法陣が消える。
「な、なぜ!?」
エルフの男は狼狽する。
ベリルの周りには多くの微精霊たちが集まっている。
「エルフの魔法は精霊の力を無断で使用する魔法。私がここにいる時点で魔法が使えると思わないでください」
「き、貴様、精霊か!?」
「だとしたらどうします?」
「クソッ!」
エルフ男は腰につけていたダガーを握るとベリルに向かっていく。
「愚かですね。『水飴』」
「な、なんだ!?これは!?」
ベリルの手から放たれた水がまるで生き物のようにエルフ男にまとわりつくとそのまま絡めとってしまって動けなくなった。
「ご主人様、こちらは終わりました。危ない時はお手伝いしますね」
「ああ、頼む」
「ひ、卑怯だよ!二対一とか」
加山は俺が放つアクアショットや火の準精霊や雷の準精霊の魔法を避け続けながら、俺に向かって叫ぶがそもそも筋違いだ。
「人の話も信じず、ケンカを売ってきたのはお前だろう?二対一そもそもこれは果し合いじゃない。殺し合いだ!」
「いやいやいや、殺し合いじゃないから!」
リアは良いツッコミを入れてくれる。
「卑怯な!」
「シュウ、私たちが援護する!」
加山の女の仲間たちが俺に向かって魔法を打とうとする。
「ますたーはわたしがまもるー!『らくらい』」
「「きゃああああああああああああ」」
ユキの精霊魔法が二人を襲って気絶する。
「レレイ!ジュリエッタ!」
加山は悲痛な声を上げる。
「あ、あの人たち大丈夫ですか?」
ルルが服の隙間から顔を見せてレレイ、ジュリエッタと呼ばれた二人に顔を向ける。
「そうだな、これが終わったら治してやってくれ」
「わ、分かりました」
「リリも頼む」
「はぁ~、分かりました」
ため息をつきながらリリが二人に近づく。
「油断したね!」
加山はそう言うと一気に俺に近づく。
「バカが!よく周りを見てから次の一手を撃て」
俺はアクアショットをギルドの柱に撃つ。
俺はただ打っていただけじゃない。
撃ちながら、加山をギルドの中へと誘導していた。
ギルドを壊しながらアクアショットを打っていたのはそのためだ。
すでにボロボロになった柱にアクアショットを打ち込んだため、一本の柱が完全に壊れる。
その結果、一階部分を支えていた柱が壊れ、2階部分が加山に向かって落ちていく。
「なっ―」
加山のその言葉の続きを聞く前にギルドが音を立てて崩れ去っていく。
ギルドの中にいた奴らは俺がギルドを破壊していたこともあって逃げ出したものが多かったから中にはそんなにいないと思う。
仮にいたとしても知らん。
俺が悪いんじゃない、ギルド…というより俺にふざけた態度を取ったあいつらが悪いんだ。
そうして剣の勇者との戦闘は終わった。
死んでいればいいなぁ~と思ってがれきから加山を引きずり出したが生きていてしまっていた。
たぶんレベルとかで耐性が強かったためだろうが、さすがに目を回して気絶していた。
周りで見ていた獣人族も呆気にとられている。
ベリルの魔法で捕まっているエルフ男に雷の精霊魔法を撃ち込んで気絶させる。
「で、お前も歯向かうのか?」
加山を止めようとしていた少女、確かエミリアか?
エミリアに顔を向けて尋ねる。
「い、いえ、けど、その、シュウイチを殺さないでください!」
膝をついて頭を地面につけて謝る。
「私のできる事はなんでもしますからどうか皆を殺さないでください!」
「はぁ~、分かったから頭を上げろ。こいつが俺を殺そうとしない限り殺す気はない」
ため息をつきながら加山を指さす。
「ほ、本当ですか!?」
「ああ」
エミリアは止めようとしてくれていたみたいだし、少しはまともに話ができるかも知れないな。
だが、話をする前にいつものをやるか。
俺はエミリアを除く加山たちの身ぐるみをすべて剥いだ。
「ダメ、あの顔の時の優斗君に何を言っても止まらないし、下手に近づくと危ないよ!」
エミリアは驚いて俺を止めようとしたが、リアがすかさずエミリアを止めに入る。
別に危なくないって。
全員の服を剥ぎ取って縄で縛り上げる。
加山の持つ宝具は危険だからな、真っ先に取り上げてベリルに預けた。
リリには回復魔法で加山たちを治してもらい、ルルには妖精魔法で俺のMPの回復を手伝ってもらう。
ギルドも完全に破壊してしまったし、別の場所で話をするか。
近くにいた獣人族の男に話ができる場所を尋ねると怯えながら逃げてしまった。
「あの、私たちの家でならゆっくり話ができると思います」
エミリアが気を利かせて俺にそう伝える。
「そうか、なら案内してくれ」
「えっと、結構遠いので歩いて行くと……」
裸にされた加山たちを見る。
フッ、そんなことで解放すると思っているのか?
風の準精霊に頼んで加山たちを浮かしながら歩きはじめる。
「早く案内しろ。言ってはおくが下手な真似をしたらこいつらの命はないと思え」
「わ、分かりました」
「大丈夫!こんなこと言っているけど今の優斗君はきっとアレだから殺さないと思う。安心して」
「そうですよ。本気で殺そうとするときはもっとアレですから」
リアとリリがフォローになっているのかいないのか微妙な言葉で説得する。
エミリアもなんて返したらいいか困っているだろ。
それになんだ、アレって。
そうして俺たちは加山たちが住んでいる家に向かった。




