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剣の勇者

「どうしてお前がこんなところに……」

「それはこっちのセリフだよ」


俺たちは暫くお互いの顔をまじまじと見てしまった。


「まさか、生きていたとは。てっきりどこかで死んでいると思ってたよ」


何が死んでいるだ、ふざけんな。


「それはどうも。お前こそてっきり今頃魔王を倒しているのかと思っていたが、こんなところで油を売っていたとはな。勇者様は暇があって羨ましいよ」


皮肉を返してやると加山は怒りを露にする。


「ただの冒険者のあなたに言われたくないね。勇者は時間があるからこそこうやって少しずつ人々のために働いているんだ。勇者と違って責任も義務もないあなたにとやかく言われる筋合いはない」

「そうか、ならお互い関わるだけ時間の無駄だな。俺は調べなくちゃいけないことがあるからこれで」


帰ろうと踵を返そうとしたところで加山の後ろからパーティーメンバーと思われる集団が俺に向かって非難する。


「お前、加山様に向かってなんて口をきく!」

「シュウ、あいつみたい。ここで騒ぎを起こしたの」

「やっぱり、そうなのか。栗原さんなら納得だね。皆さんにも前に話しましたよね?勇者に成れなかったからと言って八つ当りした人の話」

「あいつがそうなの?」

「ええ」


自分のパーティーメンバーと勝手に話を進めていく。

チラッと見た感じエルフの男に獣人族の少女と人族の女がパーティーメンバーのようだった。

悪口を言われているが気にしても時間の無駄だからな。

放置するか。


「待つんだ!栗原さんにはどうやら色々と反省して貰わないといけないみたいだね」


無視してギルドの中に入ろうとすると加山が引き留める。


「なんだよ」

「あなたはまずこの人たちに謝るべきだ!」


そう言って俺にケンカを売ってきた奴らを指差す。

後ろには先ほどのギルドの老人や受付の女の子の獣人族がいた。

全員俺に向かって敵意を向ける。

最低限の扱いすらできないのかあいつらは!


「あのさ、お前俺に言われたくないって言っただろ。なら、俺もお前に言われたくないからお互い不干渉でいないか?」

「僕は勇者だ。なら、目の前で行われた不正を正すのも僕の役目だ!」


俺はため息をつきながら目頭を押さえて加山に伝える。


「そいつらは俺が持ってきた証文も信用しないで俺にケンカを売った。その結果としてそういう目にあった。それにギルドの奴らも俺の証文を一切信用しなかった。俺たちの方が被害者なんだよ!」

「またそうやって嘘を言う!ブロウさんにも謝罪もせず、出ていったと思ったら今度は僕ですか?どうせその証文も偽物でしょう。本当に嘘が上手ですね」


プッツンと頭の中の何かが切れる音がした。

百歩譲って俺が嘘をついていると言われるのは構わない。

だが、どうして竜人族が作ってくれた証文を偽物扱いされなきゃいけない!

そして何よりどうして俺がクソ王子に謝ることが前提になってやがる!?


「ゆ、優斗君、落ち着いて、お願い!」


リアは俺の怒りを感じ取ったのか宥めようとするが、もう限界だ。

散々、獣人族から無視され罵倒され今度は勇者から俺の鬼門に触れるようなムカつくことを言われ、これで我慢しろっていうのが無理な話だ。


「ふ、ふふ、ふふふふふっ」

「何、笑っているのですか」

「良いだろう。龍神からもらった加護もあってどの程度精霊魔法が強くなったのか調べたかったところだ。ここのギルドには先ほど忠告はしたはずだからな。これ以上暴れて欲しくないならまともに対応しろと。それがこの答えなら了解した。お望み通り暴れてる」


俺は暗く笑う。


「ますたー、ユキもてつだったほうがいい?」

「ああ、ってくれ」

「ご主人様、私もお手伝いします」

「ベリルもか?」


珍しいな、ベリルが一緒にるなんて


「ちょっといくらなんでもあの方がたふざけ過ぎています」


ベリルは微笑んでいるが眉間に怒りマークが出ている。


「ベリルさんが参加するなら優斗さんたちは私達が止めるしかないよ」

「なんでいつもこうなっちゃうのかな?」


リリもリアも仕方がないように諦める。

こうなってしまうのは全部俺に対するぶざけた態度を改めないからだ。

誠実に対応すれば俺だって誠実に対応する。


「お前の力、どの程度かみせてくれよ」

「あなたがそういう態度なら僕が直々に叩き直してあげます!」


クソ王子、渚と2回も勇者と戦う羽目になったからさすがにもうないだろうと思っていたが、まさかまた戦う羽目になるとはな。

いざ、祝詞の構築をしようとしたとき


「ま、待ってください」


加山の後ろから一人の女の子がやって来て加山を引き留めようと抱きつく。


「エミリア、放してくれないか?あの人はここで僕が止めないといけないんだ!」

「でも、被害者だって言っていますし少しくらいは信じてみませんか?」

「エミリアさんは獣人族の方のことを疑うんですか!?」

「いえ、そうではなくてあの方たぶんすごい強いです。このまま戦ったら……」

「僕が負けるとでも?それに栗原さんは裁定者ですよ、負けるはずがありません」

「えっ…裁定者?でも…あれは精霊なはず…」


いきなり現れたエミリアと呼ばれる少女は加山の仲間のようだった。

加山を止めて俺達と話をしようとしてくれるよう説得してみたいだが、裁定者と聞いて俺を見て驚いていた。

ユキやベリルが精霊って分かるってことはスキルかジョブが精霊に関するものなのかもしれない。

加山の言葉を聞いて加山の他の仲間や周りの獣人族たちは俺に対して嘲笑をする。

なんで、裁定者っていう弱職だからってここまでバカにされなきゃならない。


「エミリア、放してくれ。僕は世界の平和と正義のために悪を倒さないといけないんだ」


加山のその言葉にエルフの男は尊敬の眼差しを加山に向け、女2人はうっとりした様子で加山を見つめる。


「でも―」

「エミリア、分かってほしいんだ」


エミリアという少女は加山にそう言われるとゆっくりと手を放す。

獣人族から勇者コールが起こって俺に向かって石を投げつけてくる。

なんだこれ?

なんで被害者である俺が石を投げつけられなきゃいけない?

それにどうして俺が敵サイドで加山が正義のヒーローサイドなんだよ!

加山のバカはまるで気分が良くなったのか手を挙げて応じている。

クソッたれ!


「どうしよう、優斗君のイライラがこれまでにないくらい高まっているような気がする」

「リアさん、よく分かりましたね?」

「いや、ベリルさん。優斗さんの性格を知っていれば何となく予想は付きます」


リアたちは後ろでそんな会話をする。


「優斗君、あんまり怒らないでね?優斗君には私たちが付いているから」


どうしてかリアに言われると俺の怒りは収まっていくので不思議になる。

まぁ、収まるといってもゼロになるわけじゃないが。

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