獣人族
検問所に着くと一人一人検査された。
獣人族が一番多かったが、人族でも見るからに商人ならば入れている。
でも、冒険者はやはりいないようだった。
獣人族も人族でも商人の場合は基本的に保護するそうだった。
俺達の番が来る。
「お前たちは何者だ?」
「冒険者だ」
俺はそう言うと竜人族たちがくれた証文を見せる。
冒険者と聞いた検問所の獣人族の男が嫌そうな顔をしたが、証文を見ると驚いた様子で証文とにらめっこをする。
「ここへは何をしに?」
「人探しだ」
あの子につながる何かがあれば、それだけが目的だ。
「本来は入れないことを良く理解しろ」
そう言うと俺たちを通してくれた。
竜人族の証文ってすごいな。
門をくぐると目の前に剣を掲げた人物の銅像があった。
なんだあれ?
「なんか変なものがあるね」
「前まであんなものなかったはずなのに」
リアも俺と同じことを思ってかそう言ってしまう。
ベリルは不思議そうに首をかしげる。
なんかあの銅像見たことあるような奴な気がする。
まぁ、気にしても仕方ないか。
俺の目的はあの子の名前や素性を見つけることが目的だしな。
「とりあえず、ギルドを探そう。ギルドでならここでしか受けられないクエストとかもあるかもしれないし、せっかく来た獣人族の領域だ。おいしいものとかあるかもしれない」
「そうだね」
俺はそう言うとひとまずギルドを探しに町の中を歩いて行った。
ギルドは大抵町の中心にある。
張り出してある地図を読みながらどうにか見つけてたどり着いた。
向かっている際、すれ違う獣人族からにらまれるような目で見られたが、基本的にどこ行っても同じような対応されるので慣れた。
ギルドの中に入ると、一斉に獣人族の冒険者から視線を受ける。
「なんか怖い」
「うん」
リアやリリは怯えてしまっている。
「気にしなくていいですよ。もしもの時は私が始末しますから」
ベリルは二人に微笑む。
いや、始末しちゃ……時と場合を考えて始末しちゃいけない。
俺も良く始末することがあるのでベリルのこと言えないな。
カウンターに行くとウサギの耳を持った少女に尋ねる。
「俺達は人族の方から来たんだが、獣人族の方にしかないクエストとか食べ物とかあるのなら教えて欲しい」
「……」
少女は俺達を無視して俺たちの後ろにいる獣人族の冒険者に声をかける。
なかなかいい度胸しているな。
「もう一度言う。ここでしか受けられないクエストやここでしか食べられないものや商品があるなら教えろ」
俺は証文を少女に見えるように突き出してもう一度尋ねる。
「こ、これは!」
驚いてその証文を何度も読み返している。
その証文を持って一回奥に行くとすぐに戻ってくる。
奥から少し老けている老人が一緒にやってくる。
「申し訳ありませんが、ここは獣人族のギルドです。人族はここから出て行ってください」
証文を俺に返しながらそんなことを言った。
「それは俺が竜人族からもらった証文を見たうえでそう言っているのか?」
「その証文が本物であると断言できませんし、そもそも屈強な竜人族が低俗な人族などにそのような証文作るとは思えません」
老人の言葉に周りの獣人族たちが一斉に笑い出す。
「さっさと帰りな」
「人族風情が俺達の縄張りに来るんじゃねえよ」
「あいつ、女と子供しか連れてないぜ。保母かよww」
「俺達に殺されたくなければ金を置いて出て行きな」
「いや、女だけは置いて行け。娼館に売ってやる」
「「「「「ギャハハハハハハハ!」」」」」
口々に俺たちを罵りはじめる。
こいつら、俺だけじゃなくてリアたちまで貶しやがって。
ふつふつと怒りが湧いていく。
アルベルトすまないな、せっかく作ってくれたのにゴミみたいな奴らの前には意味をなさなかったかもしれない。
「ふぅ~、殺るか」
「優斗君、落ち着いて!」
リアは止めようとするが俺もスイッチが入った俺は誰にも止められん。
「ますたー、やるの?」
ユキがキラキラした目で俺を見つめる。
「ああ。調子こいたゴミ掃除はきちんとしないと後が面倒だからな。お前さっき俺たちを低俗と言ったな?」
「はい、言いましたが」
「なら、その言葉を訂正させてやる」
俺はもう一度先ほど俺たちに向かって言った老人にそう言うと老人は呆れたように肩をすくめる。
「おい、ゴミ共!弱い犬ほど良く吠えるとは言いえて妙だ。それ以上、文句があるなら他所で吠えてろ」
俺たちをバカにしてきたゴミ共を挑発する。
「ああん!?ふざけてんじゃねぞ」
「俺達に歯向かったことを後悔させてやる!」
「それともあれか?きちんと吠えられましたねって頭を撫でて欲しいのか?獣ならそうだよな?」
俺の言葉にさらに獣人族の冒険者たちが怒りをあらわにする。
剣を抜いたり魔法を唱えようとして俺に向かってくる。
「どうしてだろう?どこかで見たことあるような光景な気がする。こういうのなんていうんだっけ?」
「デジャヴだよ。お姉ちゃん」
「『我、雷の準精霊と契約する裁定者が願う。エレメント・ディスチャージ』」
「「「「「ぎゃああああああああああ」」」」」
俺の精霊魔法がさく裂して、歯向かってきた獣人族の冒険者たちを感電させる。
「まだ、やっても良いが証文を本物と認めてきちんと対応するなら竜人族の奴らに免じて許してやる。別にこっちも優遇しろって言っているわけじゃない。最低限の対応さえすれば文句は言わないしこれ以上暴れるつもりない」
「も、申し訳ありません。どうかお怒りを鎮めてください」
俺は再度獣人族の老人に向き合うと謝罪してこちらの要望通りクエスト斡旋した。
最初からしていればこんな面倒なことしなくて済んだのに。
斡旋されたクエストは作物を食い荒らす芋虫の魔物を狩るだけで、魔獣相手や騎士たち相手に戦った俺たちにとっては一瞬で終わる内容だった。
腹が空いたので食事をするために近くでやっていた食堂に入ったがそこでもギルドのように絡まれたので潰してやった。
「全く、どいつもこいつもなめたことをしやがって!本当だったら持ち物全部奪うところなんだぞ」
「優斗君、落ち着いて、ね」
リアが俺の愚痴を聞いてくれるから何とか怒りを抑えているが、ふざけんなよ!
少女と同じイヌ耳の獣人族を見つけては下手にでて話をしようとするが、お前ら人族などと話すことはない!とか言って逃げちまう。
仮に話を聞いてもらえてもそんな特徴だけでは分からないとか言われるし、手の施しようがない。
イヌ耳の少女が行方不明になっていないかギルドで聞いてもそんなのないって言われた。
どうしたらいいんだよ。
それですれ違う奴や会う奴からケンカ売られるし(きちんとシバイてやっている)、なんかむかついてきた。
「飯もまずいし。これなんか料理じゃねえだろ」
「まぁ、それは思うけど」
「私たちは舌が肥えちゃったのかもしれませんね」
「ご主人様たちの料理は美味しいですから」
「ユキもそうおもうー!」
獣人族の料理は本当に大雑把なものが多い。
下味もつけず肉をそのまま焼いたり、デザートとかはゼリーとかある程度はマシなものが多いがそれでもあんまりうまくない。
食事をしてギルドに戻ろうと向かっているとギルドの前に人だかりができている。
「そうですか。そんな冒険者が……大丈夫です。僕に任……ください。ちゃんと謝……せますから」
人だかりの中心で誰かが話しているようだった。
気にせず人だかりの迂回してギルドの中に入ろうとすると
「あ、あいつです!あいつがさっき言った冒険者です」
先ほど俺になめたことをほざいた獣人族の冒険者が俺を指さす。
なんだ?
俺に対して助っ人でも呼んだのか?
人だかりが割れるとそこから一人の男が俺の前に立つ。
「よくも皆に迷惑をかけ……たね?栗原さん?」
「お前、加山か?」
数カ月ぶりに再び会ってしまった剣の勇者こと加山修一がそこにいた。




