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移動

「おかしいな。馬車に乗っているときが一番ゆっくりできていると思うのはなぜだろう?」

「ま、まぁ、引っ越し作業もあったし……」

「引っ越し作業よりも引っ越した後が面倒だったのはなぜだろう」

「そ、それは……」


俺の言葉にリアは言葉詰まってしまう。

無事引っ越しできたのは良かったんだが、引っ越ししてからなぜか来客がおかしいくらい来た。

フェルミナが引っ越してきたのは良いとしよう。

フェルミナはなんやかんや掃除とかが得意で基本的に家を空けることが多い俺たちの代わりに家を保ってくれている。


おかしいのはシルヴィアが勝手に住み着いた辺りからだった。

シルヴィアの奴は実家が金持ちなんだから引っ越さなくてもいいのに、わざわざ自分からやって来た。

あげく、シルヴィア関連の来客が来るわ来るわで自分の家だったのに休めた気がしなかった。

それがひと段落してようやく休めるかと思ったら今度はフェルミナの同僚やリアやリリの同級生や友達が遊びに来た。


まぁ、リアたちの友人だから悪い気にはならないけど、なぜか俺がおもてなしの菓子を作らされた。

おかしいな、俺は家の主なのに休むどころか働いて気がした。

おかげで今こうして馬車の中で揺られているのが一番心が安らぐ。


「もう、気にするのはやめよう。心が病む。リリ、獣人族のこと教えてくれないか?」

「分かりました」


俺は俺達の会話を聞いていたリリに尋ねた。

ベリルも獣人族と聞いてリリの方を向く。

因みにユキとルルはさっきまで外を眺めてはしゃいで疲れたのか今は俺の膝を枕にして寝ている。

俺が買った屋敷には貧相ではあるが自前の馬車まであり、それで移動をすることにしたためルルは今までみたいに俺の胸に隠れていなくても済んだ。


「獣人族はつい数年前まで人族と熾烈な戦争をしていた民族です。そのため、両民族とも互いに敵対心を持っています」

「それは私も聞いたことあるよ。お父さんやお母さんも戦争に参加していたこともあったって言っていた」

「そんなに最近まで殺し合いをしていたのか」


だからクソ王子があの少女に対してあそこまで卑劣なことができたのか。

お互いに敵だと思っているからって子供にまでしていいってわけじゃない。

それがたとえ獣人族も子供だとしても


「……」


ふとベリルと目が合うとが優しそうな目で見つめられた。


「そういうわけで獣人族は人族と聞くとまずまともに対応してくれません。ですが、今回は竜人族の証文もありますしそこまでひどいことにはならないと思います」

「そうだといいな」

「それと獣人族は同胞を大切にする風習があるのでできる限りその……」


リリは困ったように言葉を濁す。

ああ、そういうことか。


「まぁ、相当ふざけたことをしない限り手を出しはしないさ」


俺も今回は獣人族の場所で探したいことがある。

俺が見捨ててしまった少女のことが少しでも分かるように調べなければいけない。

それが俺があの子にできることだと思うから。


「同胞を大切にするっていうのは所詮は建前ですよ。あの民族はそこまで高尚な存在ではありませんよ」


今まで沈黙を保っていたベリルが急にそんなことを言い出した。


「ベリル、獣人族のことを知っているのか?」

「まぁ、少しだけ知っています。あの民族は言うほど連帯感はありませんよ。人族のことをけなすことが良くありますが、根底は人族と大差ありません」

「まぁ、人間の根底はそんなに変わりはしないと思うが」

「言ってしまえば、金や名誉で同胞も売ることはいとわないので扱い自体は人族の方に接するような感じで良いです。手を出せば騒ぎはしますが、結局騒ぐだけ騒いで何もできない臆病者たちですから」


ベリルは心底忌々しそうに言ってのける。

もしかしたら、少し記憶が戻ってのかもしれない。

記憶を失う前にユキみたいにひどい目にあったのかもしれないな。

聞いてみたいけど、聞いて嫌な思いをさせたくはない。

俺はベリルの綺麗な髪を撫でる。


「分かった。教えてくれてありがとう。過去は過去だ。今のベリルには俺たちがいるから大丈夫」

「そうですね。あんな過去でも、今が良ければいいと思います」


そう言うとベリルは俺に微笑む。

過去は所詮過去。

でも、その過去を忘れてはいけない。

そしてとらわれ過ぎてもいけない。

俺はいつか自分の罪からとらわれ過ぎない日が来るのだろうか?


そうして馬車に揺られて人族と獣人族の国境近くまで着いた。

ユキとルルを起こし、ルルには胸の中に隠れてもらった。

ユキは目をこすりながら眠そうにするので仕方なく抱き上げて俺の背中で夢の世界へと旅立ってもらった。

ユキはまだ小さいし、そもそも俺の冒険に連れ出してしまっていることに悪い気がする。

まぁ、連れて行かないって言ったら色々と騒いで屋敷を木端微塵に破壊されそうだけど。


日はもうだいぶ傾いている。

御者ぎょしゃに頼んで屋敷まで馬車を戻してもらうように依頼して俺たちは徒歩で獣人族地域へ向かった。

獣人族と人族とは交易おろか国交すら結べている国はない。

そのため、こうやって歩いて獣人族の検問所まで行かないといけない。

冒険者の場合、下手に馬車で乗ったまま向かうと検問に時間がかかり、その間に襲われて馬車をそのまま盗まれることもある。

しかも、被害にあっても獣人族は対応してくれないので泣き寝入りするしかないそうだ。

そのため、できる限り何も持たないのが良いということだ。

ある程度進んだところで、検問所が見えた。

ここから先はまた明日向かえばいいだろう。

今日は一旦屋敷に戻ろう。

俺はリアたちに声をかけると転移石で屋敷へと戻った。






「おかえりなさい」

「ただいま」


屋敷に戻るとフェルミナが出迎えてくれる。

すでに料理も作ってくれている。

フェルミナは俺達が冒険に行っている間にギルドで仕事を済ませ、ここで料理を作ってくれている。

フェルミナは今でも俺の担当であるから本来俺が行ったことを書類にまとめたりするので大変なのにここまでしてくれて助かる。


「うまいな」

「ありがとうございます」


俺はフェルミナが作ってくれた食事をつまみながらフェルミナに今日の冒険の報告を行う。

フェルミナの料理はリアやリリたちの料理よりも少し田舎臭い味付けだがとてもおいしい。

リアたちもおいしそうに食べている。

因みにこの家では俺、リア、リリ、ベリル、フェルミナが料理ができる。

主に俺以外が朝、昼、夕食を作り、俺はなぜかデザート専門というわけが分からないローテーションになっている。

なお、ユキ、ルル、シルヴィアは食事が作れないもしくは小さいので刃物を持たせられない。


食事の後は風呂に入ってそれぞれの部屋で寝るのが日常だ。

風呂もさすがは金持ちの屋敷だけあってとても大きい。

まあ、寝る前にハーレム要員をかわいがるのも日常だが。

そうして明日、いよいよ獣人族領域へと向かうために早く寝た。

必ず、あの子の足跡を見つけて見せる!

PV43000、ユニーク5500を超えました。

読んでくださった皆さんに感謝します。

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