帰還
転移石を使いギルド前へ転移をして久しぶりにギルドの中へ入る。
ずいぶんと久しぶりな気がした。
リアたちには適当に近くのテーブルで待っていてもらい、フェルミナの元へ向かった。
「フェルミナ、久方ぶりだな」
「ユウトさん!」
受付でフェルミナを呼ぶとすぐに来てくれた。
「全く何度も心配をかけないでください。連絡が取れない場所に向かったとは聞いていましたが、戻ってこれないとは聞いていなかったんですよ」
「本当にすまない。ちょっとゴミ掃除をしてきたんだ」
フェルミナは怒っているというよりは心配している度合いの方が大きそうだった。
心配されているというか心配してくれる人がいることがこんなにも嬉しいことだったとは考えもしなかった。
「ごめん。もう連絡がないようなことはしない」
フェルミナに心から謝った。
「分かってくれればいいです。シルヴィアにも声をかけますね」
「ああ頼む」
フェルミナはそう言うと奥に行ってしまった。
ん、シルヴィア?
フェルミナ、シルヴィアのことを呼び捨てにしていたっけ?
しばらくするとシルヴィアがやってきた。
「ユウト、本当にありがとう」
いつもみたいに急に抱きつくと思って身構えていたら頭を下げてきた。
「どうした?」
「親戚から竜人族の情報が流れ始めてきてね。おおよその事情というのが分かったんだ。お母さんの親戚もユウトに助けられたって聞いてぜひともお礼が言いたいんだ」
「別に気にしなくていいさ。俺もちょっと前の恨みを晴らすことができたしな」
姫川にはそこまで恨んではいないが、クソ王子に簡単に騙されて俺を糾弾したことを忘れているわけじゃないし。
「それでもお礼が言いたいんだ。特にお母さんは本当に感謝しているよ。後でうちに来いってさ」
「そうか、なら絶対に行かない」
「なんで!?」
「行けばどうせ結婚だのなんだの面倒なことが待っているのは目に見えるしな」
お母さん公認だよとか言って乗せられそうで怖い。
俺もそんなに悪い気はしないからなあなあで話が進められそうだ。
図星だったのかシルヴィアは口笛を吹く。
「それはともかくありがとう」
「俺一人で助けたわけじゃないことを忘れるなよ」
「もちろんさ。リアたちにもお礼を言うよ」
シルヴィアはそう言うとリアたちのところへ行って礼を言いに行った。
「ユウトさんいったい何があったんですか?」
フェルミナは事情を知らないし、教えてやるか。
フェルミナに小さく事のあらすじを伝える。
「そうだったんですか。ユウトさん、お疲れ様です」
「本当に疲れたよ」
ここに来て、ようやく帰ってきたのだということが実感できた。
「それで、これからユウトたちはどうするんだい?」
「どうとは?」
とりあえず話が一区切りついたところで俺たちはフェルミナが用意してくれた応接室に集まった。
「今後の活動さ。情報はあくまで噂程度でしか広まっていないけどポルヴォー王国の行動が世界大戦を引き起こしかねない状況を作ってしまったことは分かるかい?」
「それはなんとなく分かっている」
「だから何となくわかると思うんだけど、ギルド間でも人族のギルドと他の民族のギルドで対立見たいのが生まれてしまってね。これまで通り僕らが冒険者に対して仕事の斡旋ができなくなってしまったんだ」
そういうことか。
竜人族は俺個人とはそれなりに関係を作れたが、それ以外の人族は自分たちにとっては敵と思われても仕方ないしな。
それでどうするかということか。
俺はシルヴィアの質問に対して何となく考えていることを伝えた。
「今考えているのは準備が整いしだい、獣人族の方へ向かおうと思っている」
「獣人族ですか。いくらなんでも危険すぎませんか?」
フェルミナは心底心配そうにする。
「大丈夫だ。俺はギルドカードから竜人族からもらった証紙を取り出すとフェルミナやシルヴィアに見せる」
「これは竜人族が交付する証紙。しかも相当な高貴な身分でなければ受け取れない証紙ですよ」
「さすがは僕のフィアンセだね。ここまでいい証紙なら獣人族のところへ向かっても問題はないはずだよ」
「そういうわけだ。だが、その前に色々と準備がしたい。シルヴィア、魔獣討伐や竜人族関連でのクエスト報酬を寄越せ」
今回、立て続けに冒険していたためか金が底をつきそう。
それに加えてユキの食費(菓子)に金がかかる。
今回は武器の損傷はないけど、ちょっと買いたいものがある。
「分かったよ。フェルミナ、持って来てもらえる?」
「分かりました。これが報酬です」
シルヴィアの指示で近くの金庫を開けると中から金を取り出して渡してくれる。
金貨30枚ちょっとか。
「そのお金で何をするんだい?」
「拠点作りをする」
「拠点?」
リアが話に乗ってくる。
「今まで宿に泊まっていたが正直金もかかるし、ここらで家でも買っておこうかと思ってな」
「家かぁ~」
リアはなんとなく嬉しそうになる。
「この年で自分の家が持てるなんて思いもしませんでした」
「ユキのいえー?やったぁー」
「確かに宿だとあんまり休んだ気がしないので私も良いと思います」
「花や木を植えても良いですか?」
「ああ、いいぞ。家は自由に使ってくれていい」
リリ、ユキ、ベリル、ルルも賛成してくれる。
「というわけで家を買いたい。この金で買えるか?」
「城下町に買うとなるとこのお金でもギリギリだよ。城下町近郊なら安く抑えられるけど」
「城下町じゃないとギルドから遠くなるだろ?あくまで今後も活動するうえで家が欲しい。そのうえでそれなりの大きさの家が欲しいんだ」
「なら、僕の家に―」
「却下。お前が来るならまだしも、どうして俺が行かなきゃいけない」
シルヴィアの提案を即座に切り捨てる。
お前の家じゃ、いずれくる皆とのイチャラブ生活を堪能できないだろうが!
ハーレム要員たちとの生活のためにも家は重要だ!
「そういうわけで家を探したい。いい物件を紹介してくれるか?」
「それならあそこなんてどうでしょうか?」
フェルミナは何かを思いつくとシルヴィアに耳打ちをする。
「確かにそれは良い案だね。きっとあそこならユウトたちも納得すると思うよ」
「いったいどこだ?」
「まぁ、ユウトたちともある意味、縁がある場所っていうところかな」
シルヴィアはそう言うとニヤニヤと笑い出す。
俺達はそろって首をかしげるのだった。
「まさか、またここに来ることがあるとはな」
「ユキはいやー!」
俺達が紹介されたのはユキを連れ去ったクソガキをシバイてやった別荘だった。
「でも、こんなところ大丈夫なの?すごく高そうだけど?」
「気にしなくていいさ。この屋敷はあの件の後払い下げられた場所なんだけどね、何か分からないけど色々と問題がある屋敷になってしまってね。なんでも幽霊が出るとか」
シルヴィアの幽霊という言葉を聞くとリアたちは顔が青くなっていく。
「優斗君今すぐ帰ろうよ!」
「そうです」
リアやリリなんか怯えてしまったじゃないか
「なんで幽霊なんかが出る場所を紹介した。嫌がらせか?」
「違う違う。なんていうか幽霊というよりこの屋敷だけ異常なまでに微精霊が集中してしまってね。なんでもその微精霊たちが越してきた人たちにいたずらをしているらしいんだ。そのせいで幽霊が出るなんていう変な噂が立ち始めて今ではここの地価が下がりに下がり続けてね。ユウトは何か事情を知っているかい?」
「………」
言われて俺は思い出した。
そう言えばユキを救い出すときに大量の微精霊たちをここに連れてきたことがあったな。
事件が解決した後も微精霊たちをけしかけて、クソガキの親族に嫌がらせをするように命じていたの忘れてた。
「優斗君、何かまずったみたいな顔しているけど、まさか……」
「さて、シルヴィアここは本当に金貨30枚で買えるんだろうな?」
「優斗君!!」
リア、忘れてたものはしょうがない。
人間諦めるのが大切だ。
結果として俺たちは相場よりもずっといい物件を購入できた。(半分はクソガキの、そしてもう半分は俺のせいだが)
なお、ユキは最後まで嫌がったが屋敷に大きな厨房があるし好きな菓子を食わせてやると約束したことでさっきまで嫌がっていたのが嘘のように大喜びした。
ユキ、お前のトラウマって菓子程度で吹っ飛ぶくらい軽いものなのかとは思ったが。
屋敷の中には高級なベッドに絨毯、食器類までそのまま残されており、すぐにでも生活できる環境だった。
因みに微精霊たちにはこの屋敷での嫌がらせはもうしなくていいと指示しておいた。
今後はここを拠点に活動だな。
この後、俺は一人久しぶりに少女の墓参りに行った。
そこで自分の決意を再確認することができた。




