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交渉

「それは本当ですか!?」

「はい。すでにラルド様は敵の手に捕まってしまいました」

「騎士たちは何をしているのですか!」


逃げ帰った騎士たちを前に私はいらだちと不安がどんどん大きくなっていく。


「死罪です」

「えっと、なんと?」

「死罪と言ったのです。お兄様を置いて逃げ帰るとはとんだ騎士たちです。いえ、騎士ですらありません。

罪人です。彼らの首を刎ねておきなさい!」

「は、はい!」


私は側近にそう伝えると頭を抱える。

マナカさんに助けを求めればいい。

最悪、勇者同士がぶつかり合ったとしても他の国々の世論をうまく操作して竜人族が悪として行動するようにすればいい。

せっかく竜人族の地下資源の開拓が始まろうとしていた矢先にこれとは。

資源があってもお兄様がいなくては問題です。

急いでお兄様の奪還部隊の編成をしなくては。

勇者だけでなく、竜人族に手を貸した冒険者は我が国の高レベルの騎士たちすらも破ったというのならそれよりも強いジョブやレベルを持つ冒険者を金を使って雇わなければ。


『よう、せっせとダメな兄貴を取り戻す算段でも考えているか?』


そんなふうに考えていると頭の中に男の声が聞こえた。

私の思考を止め、辺りを見渡すが誰もいない。

一体どこから声が?

声からして男であることは分かりました。


『まずは自己紹介でもするか?俺はお前の兄貴を捕まえた冒険者だ。お前に話があって鞭の勇者の力を借りてお前に思念電話を送っている』


なんですって!?


「あなたがお兄様を捕まえたというのは本当ですか?」

『なんか電話するのに結構力がいるみたいだから、お前の頭に垂らしている蜘蛛の糸を掴んでくれね?それで会話がスムーズに行くんだとよ』


私は天井を見上げると一匹の蜘蛛が私の頭の上に糸を垂らしていた。

私はその糸を無造作につかむとその冒険者に向かって怒鳴った。


『お兄様を返しなさい!さもなくば―』

『お前、どっちが状況的に上か分かっているのか?俺たちはいつでもお前の兄貴を殺すことができるんだぞ?』


くっ、この男何ということを!


『マナカさんに頼めばあなたなんてすぐに殺せるんですよ』

『残念だが、それは無理だな。こちらにも勇者がいることは分かっているんだろう。それに龍神は死んでいない。ここで争えば、お前らは兄貴ともども消えるぞ』


何ですって!?龍神が生きている!?

そんなはずは……しかし、龍神は傷を負って逃げ帰ったと報告で聞いています。

もし、その傷がいえて今回私たちがここまで被害を受けたとなれば納得がいく。

向こうに勇者だけでなく龍神がいるとなればこちらの戦力は圧倒的に足らない。

こうなったら今は下手に出てどうにかお兄様だけでもを解放する手段を考えなければ!


『お兄様を人質にして何が望みですか?もしお兄様を解放していただけるのなら―』

『お前には俺が今から言うことをすべて行え。もし、一度でも違えた場合はお前の兄の命はないと思え』

主導権は完全にあちらの側のようです。

『分かりました。望みは何ですか?』

『まず、10日以内に奪った竜人族の地域から兵を引け。そして奪った食料、鉱石、家屋の立て直し費用を5日以内に用意しろ。そうだな、金は白金貨500枚ほど寄越せ』

『白金貨、500枚ですって!』


思わず声に出てしまいました。

いくらなんでも金額が多すぎる。

王国の財の6分の1ほどの額だ。


『払えないのか?なら、お前の兄には虐殺の責任を取って死んでもらうだけだ。そうだな、俺の世界に伝わる処刑法で車裂きの刑っていうのがある。その光景でも映像水晶で録画して送ってやるよ』

『ま、待って。払います!払いますからお兄様を殺さないでください!』


この男どこまで卑劣なことを!


『よし。』

『なら、交渉成立だな。お前らがきちんと約束を守ったのならお前の兄は解放しよう。金については明後日にでもゴブリンに取りに行かせる。もし、ゴブリンが金を持って無事に帰ってこなかったら約束は反故にしたとする。くれぐれも変な真似をするなよ』

『分かりました』


今はここで要求に応えるしかありません。

しかし、お兄様が戻ってくれば竜人族など相手にはなりません。

今度こそ殺し尽くしてあげます!

私の心の中に復讐の炎が燃えているのが分かります。


『あ、そうそう忘れてた。この蜘蛛の魔物も殺すなよ。結構、レアな魔物らしいから』

『はい、大丈夫です』


この日、ポルヴォー王国は攻め滅ぼす一歩手前までであった竜人族相手に屈辱的な合意を結ぶことになった。

しかし、その後ポルヴォー王国が竜人族に攻め込むことはできなくなった。

なぜなら、その金を使って多くの傭兵を集め、消えたと言われた幻人族や人族に対して苛烈なまでに敵対心を抱く獣人族を招き入れていたためである。

結果として、世界大戦を引き起こしかねない状況になった以上、ポルヴォー王国は攻め込むことができなくなった。

帰ってきた王子や王女は戦おうとしたが、さすがに周りの側近たちが止めた。






俺が話したかったのはラルドの妹、つまりはポルヴォー王国の王女との交渉だった。

ラルドを連れてくる際に親族のことを答えるまで殴り続けて吐かせた。

身内が捕まっているとなればきっと助け出そうと躍起になる。

そこでまずこちらが先手を打ってこちらの要求をすべて飲ませることにした。


まぁ、もしラルドの命を何とも思っておらず、見捨てるつもりだったら竜人族と交流のある幻人族や獣人族に協力を仰げばいい。

こっちには勇者も龍神もいる。

それにレインのように龍神法を会得している兵士もいるならまず敗北はしない。

とりあえず、ポルヴォー王国の奴らはこちらの約束を守るようで金を受け取らせに行ったゴブリンはちゃんと白金貨500枚持ってきたし、渚が魔物を使って少し調べたところ徐々竜人族地域から撤退も開始しているということだった。


順調、順調!


「さて、返ってくる土地のことも考えないとな」

「土地が返ってくるのは良いのですが、すでに人口がここまで減ってしまった我らには今までのように広大な土地を守ることは出来なさそうです」


アルベルトたちとも土地の利用方法についても議論した。

結論として考え出したのが、他の地域から傭兵を雇うのと同時に交易のある獣人族や交流の持ちたがっている幻人族を住まわせて土地を守ることにした。

さすがにポルヴォー王国の奴らも世界の3大部族を相手にやらかしはしないだろう。

そうしてやることをやってからいよいよラルドの引き渡す期日が近づいて行った。

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