竜人族離脱戦②
「大丈夫かな、優斗君」
「お姉ちゃん心配し過ぎ。優斗さんなら大丈夫だよ」
「そうですよ。ご主人様が負けるはずがありません。本当なら私が残りたかったですが」
私の言葉にリリとベリルさんが答える。
「ベリルさん仕方ないよ。けが人も多いし」
「そうですね。ご主人様からも頼まれましたし」
私たちが守るのは右側の比較的攻める相手が少なく、病人やけが人が多い場所だ。
「私も優斗君のことは心配していないよ」
「なら、何を心配しているの?」
「優斗君がやり過ぎないか心配しているんだよ」
リリの質問に答える。
そう、私が心配しているのは優斗君が相手を完膚なきまでに叩きのめさないかが心配だ。
ユキちゃんは優斗君のやることに興奮しちゃって止めないし、レイン君じゃ復讐心に任せてむしろ優斗君のやることに手伝いそうだし、ルルちゃんじゃ止められる気がしない。
「それは……」
「今回はいいじゃないですか。ご主人様の怒りを買ったのなら仕方がないことですよ」
リリはなんとも言えない表情をしてしまう一方でベリルさんはすました顔で言ってのける。
「ベリルさん?」
「どうしました?」
「いや、普段ならベリルさんも止めるかなって思ったんですけど……」
リリの言葉に私も頷く。
「今回はさすがの私も少し怒っていましてね。ちょっとくらいはあの国の人たちも痛い目を見てもいいかなと思っています」
ベリルさんの言葉からは何となく怒りのようなものが感じ取れた。
確かに言われてみれば私も今回のことはひどいと思う。
こんなことをやっているのかと思うと私の心の底からも憤りが感じられた。
リリも同じような表情をする。
「敵襲、敵襲」
竜人族の軍人さんの声で私たちは辺りを見渡す。
すると馬で走ってくる騎士の人たちがいた。
他にも馬で引かれている馬車に魔法使いの衣装を着た人たちがいた。
「「「「『トリー・フレイムショット』」」」」
その声と共に大きな火の矢がいくつも飛んできた。
「『水玉』」
ベリルさんの声ととともに矢の直線状に巨大な水の玉が浮かぶとすべての矢をそのまま飲み込んで防いでしまう。
「「「「!!!」」」」
走ってくる人たちは防がれると思っていなかったのか驚いてこちらを凝視する。
「この程度の精霊魔法ですら突き破れないなんて子供の遊びのようです」
ベリルさんはつまらなそうする。
「相変わらずベリルさんの魔法は凄いね」
「そうですか?ご主人様だったらこの程度の攻撃も突き破ってくれますよ。ついでに私のことも抱いて突き破ってくれればいいのに」
何をとは聞くつもりはない。
敵は思った以上に多い。
右翼はもともと敵があまり配置されていないということで手薄になっているからちょっと危ないかもしれない。
「リリ、敵も多いし魔法使いがいる以上手は抜かないであれを使うよ」
「分かっているよお姉ちゃん。足手まといにならないでよ」
「リリはもう少し姉に対して敬意を持った方が良いと思う」
出来れば優斗君に最初に見て褒めてもらいたかったけど仕方ない。
ここは私たちが任されたんだから。
「「『チェティーリ・クレイマン』」」
私たちが魔法を唱えるとあたりの土が大きくうねる。
すると土から人型の土人形がいくつもできる。
「こ、これは!?」
竜人族の女性兵士さんが驚く。
これを実際に戦闘で使うのは私たちも初めてだ。
この『チェティーリ・クレイマン』は本来お母さんでもやっとのことで使うことができる土魔法の最高クラスの魔法の1つだ。
魔法で作った土人形を何体も作り出し、敵と戦わせることができる。
また、発動すれば土人形はどんな攻撃を受けても即座に再生する機能付き。
そのうえ、発動さえすれば使用者が好きな時に解くこともできる。
それゆえ、この魔法があれば無限の兵士を生み出せ、戦わせることができるということで禁忌の魔法となった時期もあった。
ただ、この魔法はあまりにも高性能すぎるかわりに魔力消費が大きい。
実際この世界で使える人はお母さんくらいしか私は知らない。
普通、魔法にはその人の固有の波長のようなものがあるため一つの魔法を唱えるのに別々の人が力を合わせても発動しない。
私一人では決して使えない。
けど、私とリリなら話が変わる。
私とリリは土魔法に対してだけは波長が偶然合っている。
そのため、もしかしたら土魔法ならお母さんが使っていた魔法も使えるんじゃないかというリリの考えから二人で暇を見つけては練習をしていた。
そしてつい最近ようやく完成させた。
土人形は向かってくる騎士の人たちと戦う。
「リアさんたちも相変わらず凄いですね」
ベリルさんが私たちを褒めてくれる。
「とりあえずこっちは大丈夫そうだね」
「そうだね」
「後は適当に向かってくる人たちの相手を竜人族の方たちに対処してもらって私たちは治療を続けましょう」
さっきの魔法でだいぶMPが減ったけれど、ベリルさんの言葉に頷くと私たちは竜人族の方々の治療に戻った。
私ができる回復魔法はあまり強いものではないけれど、ここで何もしないよりはずっといい。
優斗君だってきっと頑張ってくれているんだし
「魔法が凄すぎる」
竜人族の女性兵士がつぶやいたその言葉はその場にいた多く竜人族たちが思った思いであった。




