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同盟

「おや、栗原さんではないですか。どうしたんですまだ約束の期日ではないと思いますが?それに後ろにいるのは竜人族の子供ですか?」


俺達は転移石で幻人族地域に戻るとすぐに一人の幻人族の男に出会った。


「そうだ。すまないが、急を要する事案ができたんだ渚を呼んできてくれないか?」

「ええ、構いませんが」


渚を呼ぶように頼むとすぐに渚がやってきた。


「どうしたんだ?オレに何か用って」


俺は渚にどこか人がいないところで話がしたいと伝えると渚の家に案内された。


「後ろにいるのは竜人族の子供か?」

「ああ」

「兄貴、こいつが勇者?」

「そうだ。渚、単刀直入に言う。お前の力を貸してくれないか?」


ここが正念場だな。

どうにか渚を説得するしか俺達には残されていないしな。


「えっと、オレの力を貸してほしいってどういうことだ?」

「実はな」


俺は竜人族の方で起きていることをすべて渚に報告した。

そのうえで生き残りの竜人族を幻人族地域に逃がす作戦も伝え、その手伝いをして欲しいと言うことを伝えた。


「それはオレの独断では決められない」

「どうしてだ?」

「仮にそれがうまくいったとして竜人族たちはどこにいったい住むんだ。それに食料のことも心配だ。幻人族たちも今の土地でギリギリ自給自足が成り立っている状況だ。こんな状況で竜人族たちを受け入れても無理だと思うんだ」

「そんな。俺達には死ねって言うのかよ」


レインが渚に詰め寄ろうとするので手で制止する。


「レイン、少し落ち着け」

「でも」

「俺だって何も策がない状態でここに来たわけじゃない。俺に任せろ」


レインを落ち着かせ、渚をしっかりと見据える。


「渚、お前このまま竜人族たちが捕まるなり死ぬなりしたらどうなるのか分かっているのか?」

「どういうことだよ」

「今の幻人族たちは人間族から逃げるために竜人族の手を借りてここで暮らしてきた。だが、もし竜人族たちが消えたら遅かれ早かれお前たち幻人族たちの事はバレる」

「それは……」


幻人族たちもすべてが自給自足っていうわけじゃない。

生活に必要な最低限のものは竜人族たちから流してもらっていたからこそ何十年も暮らしてこれた。

だが、その最大の支援者が消えればいずれは生活が立ち行かなくなる。

それに竜人族たちの地域が現在奪われている時点で国境はすでに人族地域で囲まれている。


「だからこそ、これはお前たち幻人族にとっても問題になる事案だ。そこで俺が提案するのは幻人族と竜人族が同盟を組むことだ」

「同盟?」


渚は首をかしげる。


「ああ。幻人族たちは渚という勇者を所有している。かえって竜人族たちは総じて戦闘力は高いが勇者という後ろ盾がいない。だからこそ、ここで相互防衛的な同盟を結べば今竜人族地域でふざけたことをしているゴミを一掃できる。かつ、お前たち幻人族たちも竜人族たちから今後も生活支援をしてもらえ、奴隷狩りなどに襲われても竜人族たちに守ってもらえるというウィンウィンの関係が構築できる」

「でも俺の存在がバレたら、幻人族たちのこともバレるんじゃないのかよ」

「あくまで同盟を組んだと言うことだけ伝わればいい。実際に幻人族たちがいるかどうかなんて分からないし、気づかれたのなら俺がやったように心を壊してやればいいだけだ」


うわぁと言いながら渚は引いた。

たぶんあの時の思い出を思い出しているのだろう。


「頼む。このまま竜人族たちを見捨てないでくれ」

「私からもお願いします。どうか助けてあげてください」

「俺からもだ。俺たちを助けてくれ」


俺たちは頭を下げる。

渚はため息をつくと


「分かったよ。でも、とりあえず幻人族たちにも話してから決めるよ」

「早くしてくれ。時間がないんだ」

「大丈夫さ。すぐに終わる」


渚は黙って目を閉じるとしばらくの間その場に立っている。


「分かった。優斗、幻人族の長老たちも承諾してくれたよ。ただ、渋々承諾っていう感じだけどな。さすがに竜人族たちがいなくなったら自分たちもヤバいて思ったみたいだし」

「そうか、現金な奴らだな。だが、どうやって会話をしたんだ?」

「俺は鞭の勇者だぜ。蜘蛛の魔物を使って電話というか思念電話をしたんだ」

「へぇー」


蜘蛛の魔物でどうして思念電話ができるのかは知らないが気にしてもしょうがないしな。

とりあえず、渚の協力は取り付けた。


「けど、銃の勇者がやったていうのは本当なのか?」

「事実だ」

「ひでぇ事する勇者がいるもんだ。オレがやっちまいたいんだが」

「やめてくれ。あの女の相手をする奴は決まっている」

「そうか。なら、そいつに頑張れって伝えてくれ」

「分かった」


渚は怒りをあらわにする。

やっぱり渚はまともな勇者だな。

俺の思っていた勇者っていうのはこういう奴だと思う。

姫川はダメだったが、もしかしたら高橋と加山はまともなのかもしれない。

あいつらはあくまでクソ王子騙されただけだし、きちんと話をすれば俺のことも理解してくれるかもしれないと俺はこの時考えていた。

後は細かい作戦概要を伝え、襲撃時間の調整を行うとその場を後にした。


「どうにか手伝ってもらえそうで良かったね」

「本当にそう思う」


リアの言葉に頷く。


「兄貴、ありがとう。やっぱり兄貴はすげえや。でも、俺は何もできなかった。」


レインは悔しそうにする。


「そうだな」

「優斗君少しは優しくしてあげて」


リアは俺に突っ込みを入れる。


「だから、今度の作戦では誰よりも頑張れよ。俺ができるのは所詮お膳立てくらいだ。結局、生き残ろうと努力するのはお前たちだ。お前の活躍期待しているからな」


俺の言葉にレインは顔を上げる。


「ああ、やってやる。見ててくれよ兄貴!」


これで少しはやる気を出したな。


「わたしだって、がんばるよ」

「分かっている。ユキはさっさとあげたクッキーを食べろよ」

「うん」


だいたいレインよりもユキの方が何もしていないのだから、レインもそんなこと気にしなくていいのに


「ちゃんと励ましてあげたんだ」

「当たり前だ。あそこでお前も役に立ったとありきたりな言葉を言うよりは次の機会で挽回するように努力させるのが一番いい」


下げて上げるのがコツだな。

下げっぱなしで収集着かない時もあるけど、そういう時は見なかったことにしてその場を後のものに託してとんずらする。

その後、俺たちは竜人族の住処に戻った。

若干、ベリルと龍神の間に不穏な空気が流れているような気がしたが気のせいだろう。



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