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役目

リリとベリルには魔力が回復したらケガをしていたり病気になっていたりする竜人族の回復を頼んだ、

俺とリア、ユキはその間に龍神が張っていた結界の例外で転移石を使えるようにしてもらった。

今回の作戦は幻人族地域にいる渚が手伝ってくれなければ成功しない。

なんとしても手伝ってもらわないと。

俺らが転移しようとしたその時


「待ってくれ兄貴」

「はい?」


俺は振り返ってみると肩で息をするレインがそこにいた。


「レイン、今の兄貴って言うのは何だ?」

「待ってくれ兄貴。俺も、一緒に、はぁ、はぁ、行かせてくれ」


俺の質問は無視か。


「行くって幻人族地域についてきたいのか?」

「ああ」


レインは呼吸を整えると俺をしっかりと見据えそう答える。


「おじさんから聞いたんだ。兄貴が言っていた言葉を。そしたら俺、じっとしてはいられなくなったんだ。俺も皆のために何かしたい」

「気持ちは嬉しいが」

「頼む。連れて行ってくれ」


レインがいれば渚の説得も少しはうまくいくかな。

まぁ、うまくいかなかったら幻人族のことをばらす最後の手もあるし連れて行ってみるか。


「分かった。お前も連れて行く」

「ありがとう、兄貴」

「レイン一つ聞いていいか?」

「なんだ、兄貴」

「お前ちょっと前まで俺のことを呼び捨てだったろ」


レインにいったい何があったんだ。


「あの時は呼び捨てしてすまねぇ。あの時の俺は兄貴のこと全く理解していなかったんだ。だからこれからは兄貴について行こうと思うんだ」


えっと何がどうなったらこうなるんだ?


「兄貴は人族なのに竜人族である俺たちのことを本気で助けようとしてくれるし、龍神様だって実際助けてくれた。兄貴の言葉で俺は自分のしたいことが分かったんだ。俺はもうポルヴォーの奴らから逃げるんじゃなくて戦いたい。強くなって皆を守りたいんだ。だからそれを教えてくれた兄貴は俺にとって兄貴と同じなんだ。俺には兄貴がいないけど、いればきっと兄貴みたいな人間だ」


ちょっとこいつの目がヤバい。

ガチで俺を崇拝しているような目をしてやがる。

竜人族って宗教にはまりやすい連中なのかもしれない。

気を付けないと幻人族たちとは別の意味で監禁されるかもしれない。


「優斗君、なんて言えばいいのか分からないけど良かった?ね?」

「リア、首をかしげながら苦笑いはしないでくれ」

「ますたーすごーい!」

「ナタリアねえ、ユキ様もよろしく頼む!」

「レイン、リアたちには手を出すなよ」

「当たり前だ。兄貴ほどの優れた人間の女なんかに手を出せるほど俺は優れた人間じゃないからな」


すっごい良い笑顔で返された。

なんか今までとは全く別ベクトルで面倒なのに絡まれた気がする。


「はぁ。とりあえず行くか。レインは一時的にパーティーに入れるから承認しろよ」


俺は取り出したギルドカードにレインの名前を入れるとレインの前に承認、非承認のアイコンが浮かび上がる。

レインは承認のアイコンを押してパーティーメンバーに加わったことがギルドカードに印字される。


「兄貴、一時的じゃないぜ。俺はこの後も兄貴についていくぜ」


もう何か言うのはやめよう。

これ以上何か言ってもレインが変わることはないと思うし。

俺は転移石を使うとそのまま幻人族達の元へ向かった。





「私をわざわざ呼んでなんですか?」


龍神である我はベリルと呼ばれる精霊に話をするために連れてきた。


「あなたと違って私にはご主人様から頼まれたことが多いので手身近にお願いします。まだ、ケガをしている竜人族の方たちはたくさんいますしね」


我にこんな態度を取ったのは炎精霊と初めて会った時以来だろう


「お前はどこまで知っている?」

「どこまでってどういう意味ですか?」

「言わなくても分かるであろう。我ら4大精霊の役目についてだ」

「なんの話かと思えば、そんな下らないことですか」


我のその言葉を聞くとベリルは心底つまらなそうな表情をする。


「下らないとはどういう意味だ。我らの役目はこの世界の―」

「あなたはいつまでもそんなものにこだわるから自分の一族の衰退を辿ったのですよ。途中で思い出してしまったので、忘れようとしていたのに嫌なことを思い出させますね」


このベリルという精霊は我らの役目について知ったうえで役目を放棄しているのか。


「それに私だけを呼ぶのもどうなんですか?ユキちゃんだってこの件には絡んでいるのに私だけ呼んで話をするっていうのが姑息ですよね」

「おそらくあの精霊は我らの役目を教えられてもいないだろう」

「確認は取ったのですか?」

「いや、してはいないが」

「本当にあなたは矮小な存在ですね。勝手に自分で思いあがって」


ベリルは我に蔑みの視線を送ると鼻で笑う。


「まぁ、実際ユキちゃんは何も知りませんがね」

「お前はどういうつもりなのだ。精霊としての役目も放棄し何をしている。このままでは世界の滅びも近づくのだぞ」

「別にこの世界が滅んでしまっても別に構いませんよ」


なんだと。

何を考えているのだこいつは。


「ふふっ。その顔、私が何を考えているのかまるで分からないって表情ですね」


ベリルは薄い微笑みを浮かべると我に冷たい視線を送る。


「私にとって助けたい人はこの世でたった一人だけ。その人さえ幸せで、もう嘆くようなことがなければいいんです」

「ふざけるな!お前は古の7番目の勇者との約束をなんだと思っている!」

「本当につまらない人。私にとって大切なのはあの人が生きていること。世界がどうなろうと勇者との約束がどうなろうと私には関係ない。それにあの人が生きている間くらいはこの世界も持つでしょう」


確かに今のスピードなら世界の破滅が来る前にあの男は死んでいるが……。


「お前がそういう態度なら我にも考えが―」

「あの人を殺すのならあなたを散らしてあげてもいいんですよ」


我の言葉を遮りベリルが言う。

背筋が凍るような笑顔でそう言い切った。


「お前では私を殺すことはできない」

「あら、いつ私が殺すって言いました?本当は私があなたを殺してあげてもいいんですが、私の本来の力ではあなたを殺せませんしね。あなたを殺す役目はユキちゃんにお願いするだけですよ」

「……」

「ユキちゃんは4大精霊の中で唯一の攻撃特化型の精霊ですからね。あなた程度では逃げ回るのが精一杯でしょう」


ベリルという少女は本気で私を殺そうとするだろう。

その結果世界がどうなろうとも考えもせず。


「なぜ先代の精霊たちはお前たちなんかに継承したのだ」

「それが分からないからあなたはいつまでも弱いのですよ。それに先代様はきちんと私の思いを理解して継承してくださいました。ユキちゃんはご主人様からの話ではユキちゃんのお母様が先代と言うことでしたからおそらくユキちゃんを助けたくてすべてを話す前に継承してしまったのでしょう。それにあなたにだけは言われたくはありません」

「どういう意味だ?」

「あら、しらばっくれる気ですか?」


まさか、この女は我の秘密を知っているのか。


「先代様は4大精霊様の中では最古参の存在でした。あの方があなたの秘密を知らないとでも」


ベリルは面白そうに我の顔を見て笑うと話を続ける


「初代、天空の精霊は人との間に子をもうけ、それ以来その子の子孫をずっと見守っている。しかし、長寿の精霊といえど永遠に生きられるわけではない。そこで取った方法が自分の子孫の一人に自らの記憶と知識を強制的に植え付けたあげく精霊の力の継承を行う。なんて非人道なことでしょうね」

「………」


ベリルの言った言葉すべて事実だ。

我は初代天空の精霊であり、一度も完全な別人格の人間に力の継承をさせたことはない。


「安心してください。別にそれに関してどうこう言うつもりはありませんから。ただ、あの人に手を出さなければの話ですが」

「あの人間に世界の存続を捨ててまでかける価値があるのか?」

「ありますよ」


ベリルは即座に返答した。

一瞬の迷いもなく清々しいほどあっさりと。


「ユキちゃんと私が心から愛したあの人はすべてを捨てても守る価値があります」

「何がお前をそうさせる?」

「私のことを考えてくれたのはあの人だけ。なら、私もあの人のことだけを考えればいいだけですよ。この言葉の意味が分からないようならあなたにはもう何を言っても意味はありませんから」


ここまでの思いがあるなら我にはもう止める術がない。

ベリルはけが人や病人がいる部屋へと戻ろうとした。


「あ、そうだ言い忘れていました」


振り返って我に冷たい笑顔を向けると


「くれぐれもあの人には何も言わないでくださいね。あの人は勇者でもなんでもない普通の人なんですから。あなたがあの人に私たちのことを伝えることであの人にこの世界を守ってもらおうと考えるのは筋違いですからやめてください。本来、世界を守るために働かなくちゃいけないのは勇者と魔王なんですから」

「分かっている」

「そうですか。しかし、本当にこの世界に転生してきた者たちはチートでハーレムだのなんだの作ると言って自分の責任を無視していますから困ります。ハーレムを作るのは構いませんがきちんと自分の責任を果たしてからにしてもらいたいです。勇者も魔王も全員死ねば、まだ世界の役に立つというのに」


感情のない声でベリルはそう言うと我に再び顔を戻し


「では、私は戻りますね」


そう言うとそのまま部屋に戻っていった。


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