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議論

「よく集まってくれた。俺は別の国のギルドから竜人族ののために実はこれからお前たちにあることを決めてもらうためにここに来てもらった」

「えっとその前に一つ確認してもよろしいですか?」


会議室に集まった竜人族の司令官たちや老人たちなどに向かって俺が言ったところである老人が挙手をして言った。


「なんだ?」

「まずは龍神様が危篤状態から持ち直したという話は本当でしょうか?」

「ああ、持ち直した」


おおっ!などと騒ぎ出すのでアルベルトに目線を送って静かにさせる。


「確かに龍神は持ち直したが、元の力と比べてずっと弱い。龍神様が我らに力をくれるなどともてはやしてポルヴォー王国の騎士たちや冒険者たちに特攻するようなことはするなよ」


俺の言葉を聞き、何人かの司令官たちは図星を突かれたように驚いた表情をした。

だいたいこういう奴らってそうなんだよな。

信仰していた神が復活したと騒いで我らには神がついているとか言って特攻して無駄死にしていくからここで先に止めておかないと少なくなった竜人族がさらに少なくなる。


「本題に戻るがいいか?」

「構いません」


尋ねてきた老人に聞き、俺は話し始める。


「まず、お前たちの今後について俺が決めたことから選んで欲しい」

「「「「「「はあ?」」」」」


俺の言葉に理解できない奴らが一斉に首をかしげる。

アルベルトもその一人だ。


「クリハラ殿どういうことか説明していただけないでしょうか?」

「もちろんそのつもりだ」


俺は呼吸を整え発する。


「まずお前たちはいつまでもここにいる気か?」

「我らは決してポルヴォーの連中に負けはしない。龍神様も持ち直した今時を稼げばきっと―」

「勝てるってか?」


俺の質問にいかにも好戦的な竜人族の司令官が答える。


「そうだ!」

「笑わせるな。すでにここは戦線が瓦解しかけているだろ。このまま行けば後数カ月持てばいい方だ」

「数カ月もあれば―」

「龍神が回復すると思っているなら止めとけ。あいつが仮に元の力を回復したって次は確実に殺されるのが良いオチだ」

「りゅ、龍神様を愚弄するな!龍神様さえいれば我らは勝利できる!」


集まっている竜人族の者たちが俺に敵意を向ける。

アルベルトすら少し嫌な顔をしている。


「愚弄?愚弄もするさ。お前、あの龍神を仕留めたのが誰なのか知らない訳ではないだろう」

「そ、それは…」


俺に歯向かっていた竜人の声のトーンが落ちていく。

俺が危惧しているのはあれだけ強い精霊がいながらも勇者に負けたという事実だった。


「お前らは龍神がいれば自分たちは無敵。騎士団や冒険者たちに後れを取ることはないと思っているんだろう。確かに龍神がいれば負けはしないだろう、王国の連中には!」

「「「「……」」」」


俺の言っている意味が少し理解できはじめているようだな。


「今、龍神の力でお前たちがあの土地を取り戻したところでまた必ず勇者がやって来るのが目に見える。そうしたら今度こそ龍神は確実に殺され、竜人族は全滅だ」

「では、どうしろというのですか。我々にはもうここしか残っていないのです。ここから出てもすでに四方が敵に囲まれています。ここで抗うしか我らには残されていないのです」


一人の女性司令官が悲痛な声でそう告白する。


「だから選んで欲しいんだ。ここで死ぬか俺たちに賭けてここから脱出するか選んで欲しい」

「賭ける?」

「そうだ。俺はここで死ぬよりもお前たちと交易のあった幻人族地域へ逃げることをお前らに勧めたい」


俺の言葉に周りが失笑する。


「何を言うのかと思えば幻人族地域に逃げる?そんなことができるならとっくに試しています。それができなかったから、このありさまなんですよ」

「そんなことは分かっている。だが、お前たちは何も理解していないようだな。誰が正攻法でこの包囲網を破るって言った。外を囲まれているならそれよりも外側からぶち壊してやればいいだけだ」

「クリハラ殿は何を言っているのですか?」


今まで沈黙を貫いていたアルベルトが俺に尋ねる。


「幻人族地域のことをお前らはどこまで知っている?」

「我らと幻人族たちは友好関係にありますが、幻人族に関してはほとんど知りません」

「幻人族地域には鞭の勇者がいる。そいつに外側から奇襲をしてもらって包囲網が崩れたところでここから脱出する」


勇者という言葉に顔をしかめる奴もいた。

その気持ち分かる。


「しかし、我らの中には老人や子供もいるのですよ。幻人族地域に逃げるのにもそれなりに時間がかかります」

「そうだ。だから、俺たちが殿しんがりを務めお前たちが逃げている間後ろは俺達が、片方の側面は鞭の勇者が。もう片方の側面は竜人族が対応しつつ逃げる時間を稼ぐ。兵力の少ないお前たちでも片方の側面だけなら持ちこたえられるだろ?」

「確かにそれなら可能ですが、鞭の勇者が対応してくれるでしょうか?」

「問題ない。もし、無視するようなら幻人族の秘密を世界中にばら撒いてやるだけだ」

「優斗君、それはさすがにやめてあげようよ」


それまで黙って聞いていたリアが止めるが、俺はやめる気はない。

使えるものは何だって使う、それが俺だ。


「逃げのびた後はどうするつもりなのですか?」

「乗ってくれるのならそこのところも後で詳しく話すつもりだが、幻人族の地域で立て直しをして土地を奪い返せばいいさ。とにかく今はどうするのか決めて欲しい。俺の作戦に乗るか乗らないかを」


俺の作戦を聞いて竜人族の連中もお互いに話し合ったり考えたりするが、次第に俺の考えに賛同するような雰囲気になっていく。

実現できる可能性が一番高いからな。

突然、机を思い切り叩き好戦的な竜人族の者が立ち上がった。


「たとえ、殺されても―」

「だったら、お前一人死ね!」


俺の言葉に反論しようとする前にその竜人に向けて言う。

逃げるなんてのは誇りを汚すなんて考えているのはバカの考えだ。

そんな下らないもののために命を懸けたいのなら自分一人でやっていろ。


「なら、我も死ぬとしよう」


急に渋い声が聞こえ会議室の扉を開けられた。

そこにはさっきまでベッドで苦しんでいた龍神がいた。


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