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SP.ある少女の想い

本編とは特に関係ありません。

幻人族地域に行く前の番外編です。

「マスター、これで今回のクエストは終わったよ」

「今日もありがとうなユキ」

「うん」


相変わらずマスターはすごい。

小さい頃からずっと憧れていたけれど、大きくなった今でも私の中の想いが変わることはなかった。

マスターを見ているとドキドキが大きく膨れ上がるのが分かる。


「そろそろギルドに戻ろう」

「分かった」


小さい頃は何度も手を繋いでくれたその手も流石にこの年になるとすんなりと握ってはもらえなくなってしまった。

私とマスターが出会ってからもう8年も経ち、私も幼児から少女と定義されるくらいまで成長した。

ギルドに着いてマスターは担当の雄から報酬を貰うと私のところに戻ってきた。


「ユキ、帰るぞ」

「うん」


帰りながらこの後のことをマスターに尋ねた。


「この後はシルヴィアとフェルミナの様子を見に行くつもりだ。そろそろ出産も近いみたいだしな」


マスターは嬉しそうに笑う。

マスターは冒険者として活躍した後、国から爵位を貰って貴族にまでなった。

リアはマスターの正室に、リリ、ベリル、シルヴィア、フェルミナはマスターの側室として結婚し、この度シルヴィアとフェルミナはマスターの子を身籠った。


「そっか…」

「ユキ、元気がないが大丈夫か?」

「い、いや、そんなことないよ。私は元気だよ」


私は力こぶを作ってマスターに見せる。

ほんの一瞬だけ私の表情が曇るのをマスターはいつも見逃さない。


「そっか。なら、良かった。ユキが元気ないとリアもリリも心配するからな。俺にとってはユキもユナとアスナと同じくらい大切だからな」


ユナとアスナはマスターとリア、リリの間に生まれた子供だ。

まだ、2歳くらいだからリアたちもマスターも子育てに追われている。

マスターは子育てに忙しくても私のことをないがしろにしたことは一度もない。

それは私のことを見てくれているのだと嬉しく思うと同時にマスターはいつまでも私のことを子供としてしか心配してくれないのが分かって心が痛い。




ある日私はヴァルトハイムおじいさまに相談した。


「マスターは私のことをいつまでも子供として見てくれないの。どうしたらマスターは私の想いに気づいてくれるかな?」

「ユキならあんな男よりももっと良い男を手に入れられるぞ」

「嫌。私はマスターが良いの!」


私にとって恋い焦がれた人はたった一人しかいない。

マスターと一緒なら私に関わってくる変な雄はいないけど、私一人の時はいつも馴れ馴れしく話しかけてくる雄がいて本当に邪魔。

マスターが殺すなっていうから殺さないけど本当だったらすぐにでも感電死させる。


「ねぇ、ヴァルおじいさま。どうしたらマスターに私の想いが届くかな?」

「ユキは相変わらず一途だな。ナタリアたちにだって手を出しておる男なのにそれでもいいのか?」

「それでも私はマスターが良い!リアたちもいるのはこの際我慢する。それでマスターに私の想いを受け入れてもらえるなら構わない」


マスターが魅力的なのはもうたくさん知っている。

多くの雌がマスターに言い寄ろうと近づいたのを何度もリアたちと一緒に防いだ。

だから、私がマスターに受け入れて貰っても側室になるくらいしかない。

けど、それでもいいって思えるくらい私はマスターを愛している。


「仕方ない。ワシが後で優斗にそれなりに理由をつけて呼び出す。ユキはどうにかして優斗をデートにでも誘え」

「デ、デデ、デート!?」


デートなんて生まれてきて一度もしたことがない。


「大丈夫かな?マスター嫌がったりしないかな?」

「大丈夫、ユキが誘って嫌がる男などいない。まして、優斗がユキからの誘いを断るはずなかろう」

マスター、一緒にデートしてくれるかな。


その後、ヴァルおじいさまにカップル冒険者がよく行く綺麗な場所とかを色々教えてもらった。


「ジジイからユキが俺に内緒で言いたいことがあるって言われて来たけど、何かあったのか?」


翌日、マスターが二人きりの時に話しかけてきた。

ちょっとおじいさま!

直球過ぎ。


「え、えっとね、その……」


顔が熱くなっていくのが自分でも分かる。


「マスター、い、行きたいところがあるんだ。だから一緒に……」

「ああ、良いよ。どこに行きたいんだ?」


マスターはすんなりと了承してくれた。


「ほ、本当に?嘘じゃないよね」

「俺がユキに嘘を言ったことがあるか?」

「無いよ」

「なら、行こうか」


マスターとのデートが決まった。

ここでマスターに告白するんだ。

マスターと二人で並んで歩く。


「手を繋ぎたいな」

「なら、繋ぐか」


しまった。

つい言葉に出してた。

うぅっ。恥ずかしい。


「どうした?手を繋がないのか?」

「う、ううん。繋ぐ!」


マスターの手を握る。

今も大きな手だなと思うけど、小さい頃はもっと大きい手だと思っていた。


「ユキとこうして手を繋いで歩くのは随分久しぶりな気がするな」

「私もそう思う」


雑談をしながら目的地まで向かう。

マスターの手を握っている間、口から心臓が飛び出すんじゃないかってくらいドキドキしていた。



おじいさまに教えてもらって来た場所はとても綺麗な花畑のある場所だった。


「きれい」

「そうだな」


今、そう今このタイミングなら言えるかもしれない。

マスターに告白する。

私の想いを知ってもらう。

あの時、私を精霊剣から出してくれて私を助けてくれた時からずっと心の中にあるこの想いを伝える。


「マ―」

「ユキ、今までごめんな」


マスターは急に私に謝ってきた。


「ど、どうしたの?」

「ユキには今までいろんな場所で助けてもらったのに俺は何一つ返すことができなかった。本当ならユキには俺なんかじゃなくてもっと良い人と巡り会うことができたかもしれないのに」

「そんなことない!」


思わず大きな声でマスターの言葉を否定した。

マスターは私を見て驚いている。


「私はマスターに会えて本当に幸せだった。マスターが私のマスターじゃなかったらきっと私はもっとひどい目に遭っていた」

「でも俺なんかより」

「マスターよりも良い人なんていない!だって、私は―」


マスターを私は抱き締めた。

いつも私を抱き締めてくれたその体をやっと私が抱き締めることができた。


「私はね、マスター。マスターのことが大好きなんだよ」

「ああ。知っているよ。俺もユキのことが―」

「マスターの好きは私の好きとは違うよ。私の好きはリアたちと同じ好きなんだよ」


私は顔が真っ赤になっているのが自分で分かる。


「ユキ、それは―」

「私はね、小さい頃から好きだよ。大好きなんだ。今日ここにマスターを連れてきたのはマスターに告白したかったんだ」


私は小さい頃からの想いの全てをマスターにぶつけた。


「ユキ、お前はすごい可愛い美少女なんだぞ。俺よりも格好いい男なんていっぱいいるだろ」

「私にとってマスターより格好いい人なんていない。私はマスターを愛しているの」


マスターはため息をつくと私を抱き締め返す。


「ユキ、お前も知っていると思うけど俺は基本的に女の子からの告白は受け入れるのがモットーの男なんだぞ。特にユキみたいな美少女からの告白なら快く受け入れるけど、俺と付き合っても愛人とかそう言う形しかできないんだぞ」

「分かってる。愛人でも側室でもいいから、マスターと一緒にいたいの。もう子供のように接するんじゃなくて一人の女として接して欲しいの」

「そうか」


マスターは私の頭を撫でるとキスをしてきてくれた。

今までリアたちにしていたことはあるけど私にはしてくれなかったキスをしてくれた。

そうしてマスターはもう一度強く抱き締めてくれた。


「マスター、大好き」

「ユキ、ありがとうな」









「全く幸せそうな顔して寝やがって」

「優斗君、寝転がってどうしたの?」


リアが宿に生活必需品を買って帰ってきた。


「リア、静かに」

「あ、ごめん」


リアは小さな声で謝ると俺の隣にやってきて俺と同様に横になる。

俺の片腕には俺の腕を枕にしてスヤスヤと寝息を立てて眠っているユキがいた。


「少し眠くてな。仮眠を取った後に起きたらこうなっていたんだよ」

「ユキちゃん、今日は魔物退治頑張っていたからね。疲れて寝ちゃったんだね」

「今日はユキに助けてもらってばっかだったしな」


リアとしばらくユキの様子を見る。

ユキは急に嬉しそうに笑顔になる。


「良い夢を見ているのかな」

「ユキの夢はどんなものなんだろうな」

「優斗君のお菓子をいっぱい食べている夢じゃないかな」

「まぁ、夢の中でなら俺は菓子を作らなくてすむから楽で良いな」

「ま、すたー」


そこでふいにユキの声がした。

うるさくし過ぎて起きてしまったかもしれない。

ユキを見れば、まだ夢の中にいるようだった。

なんだ寝言か。


「ますたー、だいすき」

「夢の中でもユキちゃんは優斗君が好きなんだね」


リアが俺に微笑む。

俺はユキを起こさないようにしながらユキの耳もとで小さくお礼を言った。


「ユキ、ありがとうな」

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