本気の殺意
俺たちはそれぞれどういう経緯でレインたちに会ったのかを個別に話を聞いた。
その後、レインの働き掛けもあってかすぐに身柄の拘束は解かれた。
リアたちと合流した後先ほどレインにおじさんと言われた男が俺たちに謝ってきた。
「私はアルベルト・オーファン。先ほどの非礼を扱いを詫びたい。甥のレインだけでなく、同胞まで助けてくれたことに感謝する。しかし、理解していただきたい。我らは今窮地に置かれていて人族はすべて敵だと思わなければ生き残れなかったのだ」
「俺は栗原優斗だ。俺たちが来たのは説明したとおり、竜人族の親族を持つ子から竜人族の動向が最近入ってこないことを不審に思い、俺たちに動向を調べられるなら調べてきてくれと頼まれてここに来た。いったい何があったのか教えてくれないか?」
アルベルトは悔しそうな表情を浮かべながら話し始めた。
周りの竜人族も同様な表情をしながら拳を握りしめ聞いていた。
「あのクソ勇者があああああああ」
「優斗君落ち着いて!」
「落ち着いてください!」
「ご主人様、どうか気を静めて!」
「放せ!今すぐあの女を殺しに行かなきゃ余計に被害が出る!」
俺はリアたちに抱きつかれながら押し留められる。
「お願い落ち着いて!」
リアの必死な姿を見て俺も怒りが収まりはしないが、激しい怒りから静かな怒りに落ち着いていく。
「すまなかった。ちょっとどうかしていたと思う」
「ううん。優斗君がそう思っちゃうのも仕方ないと思う」
俺が聞いた話を整理すると銃の勇者姫川愛歌の後ろ盾であるポルヴォー王国は竜人族地域と前々から問題を抱えていた。
ポルヴォー王国は昔から竜人族地域にある肥沃な土地や地下資源を狙って執拗に嫌がらせを行っていたという。
かつては戦争まで行ったがすべて竜人族の勝利で終わっていた。
しかし、ある時ポルヴォー王国の王子が銃の勇者を国に連れてきてから王国はさらに圧力を加えてきた。
その後、竜人族の学び舎が盗賊団と称したポルヴォー王国の騎士団の攻撃を受け多数の子供たちが死んでしまった。
それに激怒した竜人族は国内に自国の冒険者の保護を目的に駐留していた王国の騎士団を壊滅させ、国交断絶の通知をした。
ポルヴォー王国はそれに腹を立て、竜人族の神である龍神を勇者に攻撃させたという。
ここまでなら俺も何も言うことはなかった。
だが、ポルヴォー王国は龍神が倒され、逃げ出した竜人族を執拗に攻撃し始めた。
龍神は竜人族にかねてから交易があった幻人族の地域に逃げるように伝えたが、ポルヴォー王国は騎士団を先回りさせて避難民を攻撃。
竜人族も応戦したが龍神の力もなく、戦線は瓦解。
その後、ポルヴォー王国は女子供老人若者を問わず虐殺を始め現在では100万人いた竜人族も10万人にまで減少してしまった。
挙句、銃の勇者に秘密裏に接触してポルヴォー王国の蛮行を止めるように頼んでも全く信じようとせず、王子などのポルヴォー王国側の人間に接触してきた情報を漏らすだけでなく、竜人族達の張った結界を破壊する行為の手伝いをするなどしてさらに攻撃がひどくなったという。
銃の勇者は龍神を自分たちの都合だけで攻撃しておいて知らぬ存ぜぬで貫いている態度が俺を激しく怒らせた。
渚のように弱い者たちを助けるのではなく、むしろその逆を行っていることがどうにもクソ王子と被って苛立たせる。
そして今ここは竜人族にとって最後の砦である。
戦える男たちはほとんどがポルヴォー王国の騎士団や雇われた民兵と戦い死んでしまい今は残った男達や老人、子供たちまで戦線に送って何とか持ちこたえているという。
俺がリアたちに説得され、戻るとアルベルトが続きを話してきた。
「私たちの後ろにいるのは女子供老人しか残っていない。数はこの山だけで10万人がここで籠城をしている。私はその中で竜人族を指揮するいわば司令官の一人でもある」
「よく10万もの人間がこの山にいるな」
「この山には多くの地下遺跡があるので見かけよりも大きな場所なんだ」
なるほどな。
「しかし、最近は地下遺跡の中にも冒険者や騎士たちの手が入ってくるのでだいぶ狭い範囲でしか生活できなくなったが」
「本格的にあの勇者とポルヴォー王国の奴らを殺したくなってきたんだが」
「君は人族なのに我らの味方をするのだな」
「別にお前らの味方をするわけじゃない。客観的に考えてその国を滅ぼしてやりたいと思っているだけだ」
「レインの話で君が騎士団に放った言葉を聞いたとき嘘だと最初は思っていた。しかし、先ほどの君の怒りようで君たちのことなら信用しようと思っている。だから、どうか我らを裏切らないでくれ」
「分かった」
俺達の話し合いが終わったところでレインが俺のところに来た。
「ユウトたちのおかげでマリラが意識を取り戻したよ。マリラ、兄ちゃんたちにお礼を言いたいらしいけど、まだ立ち上がっても足元がおぼつかないんだ」
「そうか。その子が元気になってから言ってくれればいい。それに俺よりもそこにいるお姉さんに礼を言うように言っておけ」
リリを指してレインに伝える。
「私は別にお礼なんて大丈夫です。それに意識を取り戻していただけて本当に良かったです」
「ありがとう姉ちゃん」
リリはその言葉に衝撃を受け「お姉ちゃん、私がお姉ちゃん。なんて良い響きなんだろう」と言って気分が良さそうだ。
「クリハラ殿だったかな?」
「そうだ」
「実はクリハラ殿たちに頼みがある」
アルベルトは神妙な面持ちで俺に向かって頼み込んできた。
「我らの龍神様の治療もしていただけないだろうか?」
「龍神は生きているのか?」
てっきり死んだものだと思っていたが。
「龍神様は時間を稼いだ後、命からがらここにお逃げになりました。しかし、その際に銃の勇者の攻撃を受け瀕死の重傷になってしまいました。今は我らが魔力を流し込んで何とか繋いではいますが、もう限界なのです。クリハラ殿のパーティーメンバーには凄腕の回復魔法の使い手がいるとレインから聞きました。どうか、龍神様をお救い下さい」
アルベルトは頭を下げる。
周りの竜人族の大人たちも頭を下げる。
「リリ」
「分かりました」
最後まで言わなくてもリリは理解してくれる
「魔力は大丈夫のか?」
「あれから随分と時間は立ちましたし、魔力も時間で回復したので大丈夫です」
「なら、こいつらの願いを叶えてやってくれ」
「はい」
リリがやってくれることになったので竜人族の連中に龍神がいる場所まで連れて行ってもらった。




