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ギルド

ギルドに到着すると、勇者たちは裏門から入ることになった。

表から入って騒ぎになると困るからというのが理由だ。

俺も入ろうとするとブロウが俺の前に立つ。


「申し訳ありませんが、あなたは表から入って下さい」

「どうして?」

「これから行く場所は勇者だけが使う場所ですし、勇者ではないあなたが来る場所ではないのですよ。普通の冒険者はきちんと表から入って普通の魔物退治をしてください。それとこれが支度金です。ではまた後で」


そう言い終えると、金貨1枚を渡すと有無を言わせないように扉を閉めた。

本格的にあの王子が嫌いになってきた。

仕方なく、俺は一人表門から入る。

ギルドの中暑苦しいと表現した方がいい場所で筋骨隆々な方々が多くいた。

怖っ、あんなのに襲われたらひとたまりもないな。


ギルドの受付を見つけそこに向かう。

ビザンティン帝国内には多くのギルドがあるという。

その中でも今回来た城下町のギルドは最大規模で毎日大量のクエストと『魔物』退治の依頼が存在する。

特に最近は魔王が活発に動き始めた影響か魔王の眷属の『魔獣』が現れ世界中を荒らしまわっているという。

『魔獣』が現れる時には空が赤く染まり空に亀裂が生じ魔王の眷属が現れるという。

『魔物』はこの世界にもともといたモンスターで『魔獣』は亀裂からやってくるモンスターの違いがある。

俺の当分の目標は『魔獣』を倒せるだけの力を得ることが第一だ。


ジョイドは俺にどこか近くの村で『裁定者』として平凡に暮らすのも薦めてきたが、世界のいたるところで魔獣が現れるのなら魔獣に殺されない程度には強くなった方がいいという俺の言葉に納得してくれた。彼が言うには裁定者もレベル50ほどになれば魔獣を倒せるだけの力を持てるらしい。

そうすれば、この世界でも生きていける。


ギルドの受付にいた20代後半くらいの女性にクエストを受けたいと言うと少々お待ちをと言われ、奥に行ってしまった。

すると、後ろから16~20歳くらいの肩まで伸ばしたふわふわした茶髪の若い女の子が来た。

「遅れてすみません」

「少し尋ねたいことがあるんだけどいいかな。」

「はい、なんでしょうか。」

「俺の冒険者ランクで受けられるクエストはある?」

「分かりました。では、ギルドカードの提示をお願いします。」


ギルドカードを渡す。


「では、確認いたします。」


そう言うと、彼女は奥に行き、数分後戻ってきた。


「はい、確認できました。クリハラ・ユウトさん、ジョブ「裁定者」、LV.1、ランクFですね。」

「はい」

「クリハラさんはランクFなのでクエストレベルF~Gが受けられますよ。」

「どういうクエスト内容か教えてくれる?」

「はい、クエストレベルGは薬草採集です。指定の薬草を基準の量まで森に行って摘んでくればクエスト達成です。今は魔王の影響で、薬の需要が多いので小遣い稼ぎに多くの冒険者が受けていますよ。危険も少ないので駆け出し冒険者にはいいと思いますよ。また、途中でリタイヤしてもその分の薬草を買い取ります。」

薬草採集だとレベルは上がらないけれど、お金は確実に手に入れられるな。

「クエストレベルFはキングフロッグの退治です。キングフロッグを5匹倒してここにキングフロッグの舌にある核石を持ってくればクエスト達成です。キングフロッグは最弱の魔物ですが最近は強くなっていると聞きます。たぶんこれも魔王の影響だと思います。それと、キングフロッグは何も持っていませんが魔物によっては武器やドロップアイテムもあるのでその買取もギルドでします。」

「教えてくれてありがとう。じゃあ、クエストレベルFとGそれぞれ一つずつ受けたいのでお願いします。」

「えっ、でも、クリハラさんは武器や防具を持っていないと見受けますが…」

「大丈夫ですよ。これから行く前に武器屋で買うので。ただ…そのどこに武器屋があるのか分からないので教えてくれませんか」

「分かりました。このギルドを出てまっすぐ進むとクロウディア工房という店があります。そこで購入するのがいいと思います。それと、これが今回集める薬草です。これを30束持ってきてください」

「ありがとうございます。では、行ってきます。」

「はい、頑張ってきてくださいね。」


そう言うと、俺はさっそく武器屋に向かう。キングフロッグ退治のクエストも受けたのは今の自分の実力がどの程度のものなのか知る意味でもある。頑張らなければ。

武器屋に着くと、カウンターに座っている30後半くらいのオヤジがいた。


「すみません、武器を買いにきました」

「いらっしゃい、何を買うんだい?」

「そうですね…」


俺はこの世界に来る前、大学に入る前まで柔道、空手、剣道をやっていた。親父が武道好きで息子の俺に半ば無理やりやらせていた。おかげで有段者である。

しかも、妹が俺に弁当を届けたり応援しに来たりした日はなぜか追加で走り込みや基礎トレーニングをさせられた気がする。

やめよう。気にしたら負けだ。


「剣はありますか」

「剣か?兄ちゃん振り回せんのか。うちのは丈夫だが重いぞ」

「じゃあ、持ってみてもいいですか」

「ああ、そりゃかまわないが」


オヤジは店から適当な剣を持ってくると俺に渡した。


「案外、軽いですね」

「すごいな。だが、兄ちゃん金はあるのか」

「1金貨あるけど」

「笑わせるな。1金貨じゃ防具とダガー1本揃えるだけでなくなっちまうよ。剣なんか買えないだろ」


あの王子、最低限の金しか寄越さなかったのか。


「分かりました。なら、ダガーと防具を買いたいです。ただ、防具はできれば動きやすいの物をお願いします」

「おうよ、任せな」

そうして、俺オヤジからダガーと防具を受け取り、金を渡した。


「頑張りな。兄ちゃんならそれをうまく使いこなせると思うぜ」

そう言うと、おつりの銀貨5枚を渡す


防具は軽いわりにしっかりした作りであるうえ、ダガーがなぜか2本あった。

オヤジの心遣いに感動した。

この世界に来て初めて感謝したかもしれない。


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