魔獣再来
「それでは俺たちは竜人族の地域へ行く」
「お菓子を作りくるのを待っているぜ」
最後に自称勇者こと大野渚たちとピクシー共、そして幻人族の者たちと別れを告げる。
とはいっても、来月にはここに菓子を持ってくるというふざけた条件があるがな。
まぁ、俺たちに自分たちのことをバラすなという忠告をするためなんだろうけど。
「一時はどうなることかと思ったよ」
「そうですね」
リアとリリはホッとする。
「あんたみたいな準精霊に負けないわよ」
「―――」
「なんですってー」
準精霊とピクシーたちは言い合いみたいなことをしている。
準精霊からは声のような音はしていないが、ピクシーたちの会話からなんとなく何を言っているか察することができる。
「ユウトお兄さん、また来てくれますか?」
「ああ、また来る。その時はよろしくな」
「はい」
テレサとも別れの挨拶を済ませる。
リアとリリ、ベリルは頭を抱え、またライバルがぁーと言っているが気にしない。
リアたちには申し訳ないがハーレム要員が増えることはやっぱり嬉しい。
空中分解するかもしれないことが不安だが。
「そういえば、アビーがいないね」
「あの子何やっているのよ」
「先に行っていてって言われてからずいぶん経つよ」
ピクシーたちは何やら騒いでいる。
「では、そろそろ発つ。転移石の件すまないな」
「まぁ、気にすんな。と言っても俺がやったわけじゃないがな」
転移石の機能障害はピクシーたちの妖精魔法のせいだった。
そのため、ピクシー共に頼むと俺の転移石だけ妖精魔法の範囲外にしてくれた。
「ちょっとの間だったけど楽しかったよ」
「お世話になりました」
「じゃあねー」
「失礼します」
踵を返して竜人族地域に向かって歩き出そうとしたところで
「待ってください」
振り返るとあるピクシーがぼろぼろの様子で浮かんでいた。
「なにがあったんだ!」
渚が近寄ってケガをしたピクシーに問う。
「魔獣が私たちの住処に現れました」
「そんな、魔獣は月一回に出ればいい方なのに。それにこの前現れた魔獣を倒してから数日しか経ってないじゃないか」
「魔獣はその程度の頻度しか現れないのか?」
「はい。ギルドでもある一定の地域に月に一度くらいのペースでしか現れないと言っていました」
リリに尋ねるとそういう答えが返ってきた。
「ナギサ様」
するとある村人がナギサの元へ大急ぎでやってきた。
「どうしたんだ?」
「急に空が赤くなったかと思ったら魔獣が町のあちこちに出現しました」
「なんだって!?クソッ、どうすればいい」
渚は頭を抱えている。
「私がピクシーの方に行きます」
「ダメだ。テレーゼのレベルじゃ魔獣相手には戦えない」
「しかし」
テレーゼが渚に言うが、渚に止められる。
「こいつはお前の仲間じゃないのか?仲間だったら勇者補助で仲間が成長しやすくなるんじゃないのか?」
確か、前に僧侶っぽい奴が説明していたな。
名前は忘れたけど。
「確かにテレーゼは俺の仲間だけど、ここには魔獣もそうそう入ってこないし魔物は皆俺の友達だから……」
なるほど、魔物を狩ってレベルを上げられないのか。
仕方ない、面倒だがやるか。
「俺らが手伝ってやる」
「本当か?」
「ああ」
「恩に着るぜ」
「それでお前の魔物どもは今どこにいる?」
「魔物たちは今は町の外側で巡回してくれている。呼べばすぐに来るけど、あいつらはオレが近くにいないと勇者の力で強化できない。だから、町かピクシーたちの住処のどっちかしか行けない」
渚の魔物は数が多い。
ならばナギサ一人でできれば多くの数を相手にしてほしいな。
「なら、俺らが数の少ない方へ出向く。ナギサの魔物は数が多いから町の方を頼む。アビー、住処に現れた魔獣は何体だ?」
「2体です」
「町の方は?」
「少なくとも10体以上はいるかと」
「なら、俺たちは住処の方へ行く。リアたちはいいか?」
「そういうことなら任せて」
「大丈夫です」
「がんばる」
「ご主人様の望むことが私の望みです」
リアたちも手伝ってくれて助かる
出発前に知り合った者が死ぬなんてのは最悪な気分になるからな
「すぐに行くぞ」
走りながら何人かのピクシーの遺体を見た。
「待って、優斗君」
「どうした」
リアが立ち止まったので振り返るとリアがリリを呼んでいる。
リアが何かを見つけ駆け寄る。
何かをすくい上げるとそれがアビーであることに気が付いた。
「アビー大丈夫か」
リリが懸命に回復魔法をかけているがすでに風前の灯火にように弱っている
「く、りはらさん、ですか」
「話すな。傷が広がるぞ」
「お、ねが…い、皆を……助けて」
「おい!」
「そんな!」
リアも小さな悲鳴を上げる。
アビーは最期の言葉を残し、リアの手の中で息絶えてしまった。
俺の頭の中で地下室での少女の言葉が何度も聞こえる気がした。
「どうして俺はいつもこうなんだろう」
俺は小さくそう呟いた。
助けたいと願った相手に死なれ、自分はただ見ていることしかできない。
強くなったと思っていたけれど、まだ全然弱かったんだな。
「必ず、助けるからな」
これ以上自分の大切な人たちや守りたい人が死ぬ姿を見るつもりはない。
「リア、リリ立て。悲しんでいる暇はない。アビーの願いを叶えに行くぞ」
「うん」
「はい」
リアとリリは悲しそうに顔をゆがめるが指示を出す。
リアは近くの木の根元までアビーを運ぶと自分のハンカチをかけて寝かした。
「行ってくるね」
リアはそう最後にアビーに言うと駆け寄ってくる。
これ以上犠牲を増やしてなるものか。




