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戦う意味

俺が幻人族の子供を助け、幻人族たちのことを男どもに黙らせることができたためか俺に対する対応もだいぶ柔らかくなった。

若干、恐れのようなものを感じるがこの際気にしない。

大人たちの対応もよくなったためか幻人族のガキどもまで自称勇者と同じように菓子をねだりに来た。

まぁ、子供の親からきちんと材料費をもらっているし、子供のために菓子を作っているのかと思えば多少はやる気は出るが。

テレサも俺のところによく遊びに来るようになった。

幻人族たちの対応が良くなった代わりに面倒になったのがピクシー共だ。


「なんであなたあの精霊たちにはおいしいお菓子あげて私たちにはくれないのよ」

「「「「そうよー」」」」

「みんな、私たちがもらっているお菓子も十分おいしいと思うけど」

「アビーは黙ってなさい」


ユキたちとの差をまるで理解していないヤツもいれば、きちんと理解しているヤツもいる。


「アビーと言ったか。後でお前には特別に作ってやる。他の奴は金も払わずタダで作ってやっていることを全く理解もせず、喚くハエと同じだ」

「なんですって」

「アビーめ」

「ヒィィ。お願いします、皆にも作って下さい。代わりにお礼をしますから」


アビーは俺に必死に頼む。

ため息が出る。


「分かったよ。後で作ってやる。それよりもお礼ってなんだ?」

「私たちの住処に招待しようかと思って」

「アビー何言っているの!こいつを連れて行ったら皆が危ないじゃない」

「だって他の皆も会ってみたいって言っていたし」

「「「「「確かに言ってた」」」」」


アビーというピクシーの言葉に他のピクシーも賛成すると


「だったら、好きにしなさい。あんた、私たちの住処に来れるからってはしゃがないでよ」

「だったら行かねえよ」

「お願いします。皆、クリハラさんやクリハラさんの仲間に会ってみたいと言っているんです」


アビーと言うピクシーが俺に頼む


「俺たちに会わせたい奴がいるならここに連れてくればいいだろ」

「すみません。他の子たちはまだ妖精魔法を自力で出来ないので外に出てはいけないんです」

「妖精魔法?精霊魔法とは違うのか?」

「はい。妖精魔法は妖精の力を媒介に森などの自然物に語りかけ、自然全体から力を借りるんです。精霊魔法はあくまで精霊の力のみなのでそこが違いです。それに妖精魔法が自在に使えるようになると森の方々と会話ができるんですよ」

「それは凄いな。その妖精魔法が自在にできるようになるまでは外にというか人間のいるところに出るなということか」

「そうです」


かつてピクシー狩りが人間族が行ったという記録があるともリリが話していたな。

全く珍しいのは分かるが、それを捕まえるのはやめろよ。

こいつら結構かわいいんだから絶滅したらどうするんだよ。

リアたちに話し、皆でピクシーたちの住処を見に行った。


「すごいきれい」

「美しいです」

「すごーい」

「綺麗です」


ピクシーたちの住処はとても美しいものだった。

木々の隙間から日が差しているだけなのだが、なぜか周りの木々がガラスのように光を反射し、幻想的な情景を映し出している。


「ふふん。すごいでしょ」

「どうですか?」

「あまりにも美しい情景でなんと言ったらいいか分からないな」


本当にいい場所だ。

ここには多くの微精霊たちもいることが分かる。

ふと、木々のうろからアビーたちより小さいピクシーやアビーと同じくらいのピクシーたちが顔だけ出してこちらを伺っている。


「皆、この人たちがおいしいお菓子を作ってくれた人達だよ」

「実際は優斗君がほとんど一人で作っていたけどね」

「そうだね」


リアとリリはそう言うが、リアたちも結構頑張って生地を混ぜたりしてくれていた。


「このひとがー」

「あのお菓子おいしかったよー」

「ナギサちゃん以外の人初めて見た」

「あ、あなたがお菓子を作ってくれた人ですか?」


気の弱そうなピクシーが近づいてくる。


「そうだが」

「そ、その、お菓子とっても美味しかったです」

「それは良かった。今は少ししか持ち合わせていないが食べるか?」

「あ、ありがとうございます」

「ルルずるーい」

「ずるーい」


ルルと呼ばれた気の弱そうなピクシーは俺の服に隠れながらあげたクッキーを食べて幸せそうにしていた。

そうやって他のピクシーたちともそれなりに親しくできた。

ルルはその後追加であげたクッキーを食べながらいろいろなことを話してくれた。

ユキが対抗心を燃やしていたが、パンケーキを渡して静かにさせる。

なぜか俺の肩に座り離れようとしなかったが、一番俺に懐いたピクシーだと思う。




3日ほど経った頃だろう。

俺らが幻人族側の指示で泊まっていた家に自称勇者と和服女が一緒にやってきた。


「なぁ、お前。ここで俺らと暮らさないか?」

「断る」

「なんでだよ。幻人族の奴らもだいぶお前のことを信用してきたんだよ。でも、やっぱりお前がここを出た後俺らのことを言いふらすんじゃないかと心配する奴がいるんだ。だったらここで暮らさないか?」

「なんども言われても俺はここを出て行く。俺にはやることがある」

「なんだよそれ」


俺はこの3日間、どうして早く出て行きたいのかと考えていた。

リアに会う前の俺は死ぬまで戦い続けること誓って戦ってきた。

今もその決意は変わらない。

けど、戦い続けることの目的は?

俺はそこである結論に行きついた。


俺は誰かを守れる存在になりたいのだと。


もう二度とユキやベリルがクソガキみたいな奴のせいで苦しむことがないように、リアやリリに守られるのではなく守る存在になりたいのだと。

それと同時にクソ王子のせいでまたあの時の少女のように苦しむ誰かを見ているだけなことがないように強くなりたい。

それが俺の願望だと考え着いた。

だから、戦うことでレベルアップをし、力を得ることで俺自身の力のみであのクソ王子みたいな奴から守りたい。

そういうことなんだと気づいた。


本心を言えば、クソ王子を俺の手で八つ裂きにしてやりたいとも思っているが今の俺の力でもクソ王子には到底及ばないことも分かっている。

だから、俺は自称勇者にクソ王子のことは軽く伏せて話した。


「ふふっ」


リアが急に笑い出した。

リリも笑っていた。


「どうしたんだ?」

「実はね、お父さんも優斗君と同じことを言っていたんだよ」

「はい。言っていました」


フレデリックと同じことを言っていただと!?

なんて不名誉な。


「お父さんね、戦うっていうのは誰かを守るためのものなんだって言っていたんだ」

「はい。だから優斗さんが同じことを言ったのでつい思い出し笑いをしてしまいました」


そういうことか。

確かにあの時の俺は自分のことをひどく嫌って、自分を全否定していたからな。

今でも嫌っていることに変わらないが、リアたちのおかげで多少はこんな嫌な自分でも少しは受け入れるかと思っている。


「いったい何があったかは聞くつもりはねえが、少し見直したぜ。お前、意外といい奴だな」

「私も意外でした。ただの変態だと思っていましたが、真の通った変態だったのですね」

「俺は変態じゃないがな。それと以外は余計だ。お前は自称ではあるが、俺が会った勇者共の中では最もマシだな」

「自称じゃねぇ。本当に勇者なんだよ」

「そうです。ナギサは立派な勇者です」

「分かった分かった」


自称勇者と和服女を軽くあしらう。


「皆にはオレから何とか説得しておく。お前は俺らのことを言いふらすような奴じゃねえって」

「頼むぞ」

「おう」

「あの、少し聞いてもいいでしょうか」


俺と自称勇者の話し合いが終わったところで和服女が尋ねてくる。


「私はあなたの名前がユウトであることは知っていますが、本名は何なのですか?それにナギサはさっきから彼と話していますが知っているのですか」

「そういや聞いていなかったな」

「そうだな」

「自己紹介していなかったの!?」

「二人ともよく相手の名前を知らずに話せますね」


リアは驚き、和服女が呆れる。


「俺は栗原優斗だ」

「オレは大野渚だ」

「私はテレーゼです。苗字はありません」


だいぶ遅くなったが自己紹介が終わった。

なお、リアたちはずいぶん前に渚とテレーゼと自己紹介を終えていたらしい。

その後、ナギサは幻人族の連中を説得しに行ってくれた。

だいぶ難航したらしいが条件付きで俺たちのことをここから出してくれると。

その条件が月1で菓子を作れと言われたときはナギサをもう一度ひんむいて縛り上げてやった。

その後、犯されたとか騒いでリアたちに言い訳するハメになったが。


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