生かして殺す
「帰ったぞー」
その後6人を縛り上げて身ぐるみすべてを奪ってギルドカードの中へ投入。
風の準精霊の力を借りて6人を運ぶ。
「お父さん、お母さん」
「テレサ」
無事両親にテレサを引き渡すこともできて良かった。
「優斗君無事でよかった」
「本当です」
「さすが私のご主人様です」
リアたちに事の顛末とテレサが人族地域に向かった理由を話した。
テレサは俺の菓子と同じくらい美味しいものが人族地域にあるんじゃないかと思い、興味に負けて向かってしまったということだった。
「本当にごめんなさい」
テレサは両親だけでなく俺達にも謝る。
「優斗君のお菓子よりもおいしいものは人族の地域にもないよ」
「そうなんですか」
「うん。それに優斗君のお菓子は普通の人じゃマネできないと思うよ」
リアの言葉にテレサが俺に顔を向ける。
「優斗君、普段どうやって火加減を調節している?」
「火加減か?俺はいつも火鉱石をどれくらいの割合でかまどにぶち込むかを火鉱石の量と感覚、それにその日の気温で判断しながら作っているが」
「ね?」
リアはテレサに笑みを向ける。
「確かにそうですね」
テレサもリアに微笑む。
俺はテレサの両親の方に顔を向けると
「お前らも怒るのはほどほどにしてくれよ。子供の頃はこういうことをやってしまうんだ。かつての俺もなぜあんなことをしたのか未だに理解できないことがある」
そう言うと俺は天を仰ぐ。
「いったい、優斗君は何をしたらそんなふうに目が遠くなるの」
リア、仕方ないんだ。
ちょっとした出来心でやってしまっただけなんだ。
今では黒歴史で決して人には言えないが。
不意に服を引っ張られるので下を見るとテレサがうつむいて服を引っ張ってくる。
しゃがんでテレサに目線を合わせると顔を赤くしながら話す。
「助けてくれた時、嬉しくて涙が出そうになりました。お兄さん、とてもかっこよかったです」
「それはありがとな」
「あのお兄さんの名前を教えてくれませんか?」
「栗原優斗だ」
「クリハラユウト」
テレサは俺の名前を噛みしめるようにそう言うと顔を赤くしたまま何度も俺の名前を口にする。
「クリハラお兄さん、また会えますか?」
「まぁ、しばらくはここに監禁されているから会おうと思えば会えるだろうな」
「そうですか。なら、また会いに来ます」
顔を赤くして俺に笑顔を向けると両親の元へと向かった。
「なんか新たなライバルが出てきた気がする」
「いや、あれはライバルだよお姉ちゃん」
「ご主人様が素敵なのは分かりますが、こうもライバルが増えると大変です」
うん?ライバル?
どういうことだ………………………そうか、そういう意味か。
確かに後5年も経てばテレサはきっといい女の子になるだろうなぁ~、楽しみだな。
「急に思案したかと思えばニヤニヤしだしたけどこいつどうしたん?」
「ナギサ見てはいけません。変態を見たら変態が移りますよ」
「なに、いずれ増えるであろうハーレムメンバーのことを考えただけだ」
「男ってホントそう言うのを好きだな」
男ならだれでもハーレムを夢見るもんなんだよ。
「それよりもなぜお前は平然と歩いている?縛っていたはずだが」
自称勇者は縄で縛っていたはずなのだが、なぜか自由の身になっている。
「ナタリアたちが切ってくれたんだよ。代わりにお前を傷つけないって約束でな」
「そうか」
「仲間が勝手にやったのに良いのか?」
「リアたちは信頼しているからな。リアたちの判断でお前を解放したのなら何も言いはしない。ただ、お前もリアたちとの約束を破るなよ」
「へぇー、いいな。そういう絆みたいなのって」
「だろ」
俺と自称勇者は笑う。
「けど、本当にありがとな。助けてくれて」
「それに関しては非常に不服ですが、私からも感謝申し上げます」
和服女は不機嫌な顔をしながら俺に礼を言う。
そんなに嫌なら別にしなくても結構なのに。
「で、こいつらどうする?」
自称勇者は縛られた奴らに視線を送る。
まだ気絶したままなので反応がない。
「こいつらに関しては殺さないでくれ」
「なんでだよ。そしたらバレるじゃね―」
「何も殺すだけが秘密を隠す手段じゃない。これからお前に良いもの見せてやる。生かして殺す、これが俺の殺し方だ」
自称勇者たちに黙って見ているように伝える。
ユキを除いてリアたちは複雑な表情でそれを見る。
前は止めようとしていたが俺が繰り返すうちに止めなくなった。
なお、絡んできたのはリアたちに色目を向けてきた冒険者共を消してやった。
ユキは興奮して目をキラキラ輝かせている。
とりあえず、縛った奴ら蹴り飛ばして起こす。
「いってえええ。何すんだ!」
「よう、目覚めの気分はどうだ?」
「君、どうして同じ冒険者である私たちにこんなマネを」
「本当なら素直に開放して従ってくれれば俺もなんとか穏便済ませようと思ったが、ギルドへの報告に執着するなら仕方ない。お前たちにはここで死んでもらうのが真っ当だろう」
「ふ、ふざけんな!」
「そうだ。話し合おう」
ゴミは怒鳴り、リーダーっぽいヤツはどうにか現状を打破しようとしている。
そのほかの4人はリーダーっぽいヤツの言葉に頷いている。
「分かった。お前らがそんなに生き残りたいと思い、ここから出たいというなら出られるように俺も手伝ってやる」
「おい、お前」
「いいから、黙って見ていろ。お前たちの困るようなことにはならないから」
自称勇者をなだめつつ再びゴミたちの方を向く。
「お前らが生きて出たいんだよな?」
「当たり前だ!」
「そうだ」
他の4人も頷く。
「そうか。なら、ここから出る代わりにお前ら5人でそこのゴミを掘れ」
「「「「「は?」」」」」
リアたちや自称勇者、周りにいる幻人族の奴らも理解できない様子だ。
「分からないのか?お前ら5人でそこで喚き散らしているゴミを輪姦しろって言っているんだよ」
「な、何言ってやがる」
「そ、そうだ」
他の奴らも全力で頷いている。
「お前らは生きたいんだろ。だったら、5人でゴミを掘れば俺が協力してここから出してやるって言っているんだよ」
「お前、そういう趣味なのか?」
「自称勇者黙ってろ」
これは必要な過程の一つに過ぎない。
「そんなに嫌ならほら」
俺はリーダーっぽい奴の縄を切って自由の身にしてやる。
そしてそいつにダガーを渡す。
「な、なんだこれは?」
「それができないなら俺たちはお前を殺さなくちゃいけない。どうせ、殺すのなら自害させた方が手も汚れないから楽だ。ほれ、さっさと自殺しな」
リーダーっぽい奴は迷ってしまっている。
「どうする?ここで死ぬかそれとも要求を呑んで生き残るか選択はお前らがしろ」
「少し仲間と話し合わせてくれ」
「別に構わないがここから逃げられると思うなよ」
リーダーっぽい奴はゴミを除いて5人で話し合う。
ゴミがうるさいので殴って気絶させる。
話が終わったようなのでリーダーっぽいヤツに尋ねる。
「結論は出たか?」
「君の、提案に、くっ、乗る、ぐっ」
リーダーっぽい奴は男泣きをしながら俺の案を受け入れた。
その後は幻人族と人族の境界線に行き、ゴミを掘った後縛り上げて再び連れてきた。
ゴミは泣き叫んでいたが、終わったころには死んだ目をしていた。
正直、途中から俺も気持ち悪くなったが仕方ない。
確実に幻人族を守るにはなくてはならないからな。
「これで満足だろう。私たちをここから出せ」
「ああ。良いだろう。自称勇者これをやる。ずっと持っていろよ」
「おい、なんだよこれ」
土の準精霊に頼んで映像水晶を作ってもらうとさっきから俺をずっと引いている自称勇者に渡す。
「そいつらのプレイ中の映像だよ」
「うおっ」
自称勇者が映像水晶を落とすのでギリギリのところでキャッチする。
「落とすなよ。これ作ってもらうのだって結構大変なんだぞ」
「そんなもんいらねえよ!」
「おい、待て!なぜそんなものがある!」
リーダーっぽ奴は縛り上げられた状態で俺に尋ねる。
「これは幻人族が握るお前らが最も知られたくない情報として進呈するだけだ」
「そ、そんなの―」
「お前らがもし幻人族のことをギルドで報告するのなら俺はギルドでお前らパーティーは嫌がる男を無理やり犯すような趣味のある変態パーティーだと報告するだけだ」
「「「「「!?!?」」」」」
5人は目を白黒させる。
「そんなのどうやって撮った!」
「俺は土の準精霊の契約者でもある。土の準精霊が見たものは映像水晶として作り出すことができるだけだ」
「ふ、ふざけるな。こんなの約束と違う」
「俺は生かしてやるとは言ったが、別にお前に映像を取らないとは一言も言っていない。全部土の準精霊に記録させるためには仕方なく見学していたがもう二度とごめんだな」
「ゆ、許さない!絶対に―」
「お前は俺に言ったよな、冒険者が見たものはギルドに報告しなければならないと。なら、俺だってお前らのことを報告してもいいだろ。まぁ、男を襲うような変態の言葉と俺のようにギルドの理事の娘と恋仲である冒険者の言葉、どちらをギルドは信じるかはわざわざ考えなくても予想は付くがな」
シルヴィアをいいように使っているようで彼女に申し訳なく思うが、幻人族を守るためには我慢してもらおう。
「あ、ああ、あああ」
リーダーっぽい奴も壊れ始める。
他の奴も同じような感じだな。
「自称勇者、今度は落とすなよ。俺も同じ映像の奴を持っておくがもしもの時がある。こいつらがふざけたことをするようならギルドで放送してやればいい」
「お前、どんな鬼畜だよ!」
自称勇者は俺にひきつった顔を向け、捕まえた男たちに同情の視線を送る。
周りの幻人族の大人たち(子供たちは途中で家に帰した。教育上良くないからな)も自称勇者と同じような対応を取る。
リアたちは見慣れているからかそこまで露骨に顔に出しはしないが、ひきつっているのは分かる。
ユキは当然興奮している。
「ますたーすごーい」
「だろう」
抱きついてくるユキを抱え上げる。
「なんでもすぐに殺せばいいっていうものじゃない。こうやって、生かして殺すのが最も効率的に心を折れる。もし、まだやるようならさらに心を完膚なきまでに折ってやればいいだけだ。こういうふうに対応していればここの存在を知っても近づく奴はいなくなる」
「人族を恐ろしいものだと思っていましたが、この世にはもっと恐ろしい存在がいたのですね」
和服女のその言葉はこの場にいた優斗とユキ以外が思った共通の感想だった。
その後、6人を近くの村に捨ててきた。
何人かは後に冒険者をやめ、また何人かは幻人族はいると騒いでいたが俺が後に流した映像でそいつらは変態と扱われ、まともに話を聞く奴はいなくなった。
というか、そいつらは自然と避けられるようになった。




