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菓子作り

「なぜ俺がこんなことをしていないといけないんだ」

「まぁ、そんなこと言わないで頑張ろうよ」


リアが励ましてくれるが、俺のやる気は最低記録を絶賛更新中だ。

リリが提案した秘策。

それはお菓子を作って幻人族の方と仲直りをしましょうということだった。

そんなガキのケンカじゃないんだぞ。

こんなので事態が打開するとはとても思えん。


今、俺は幻人族の町にある一番大きな厨房で幻人族から買った食材を手に菓子を作っている。

もちろん、普通に厨房を貸したり、材料を売ってくれるとは思わなかったので自称勇者にお菓子を作ってやるから厨房を俺に貸すように頼めとか材料を寄越さないなら自称勇者を殺すぞとか脅して手に入れたが。

リアは俺の菓子作りの手伝い。

他のメンツは自称勇者の見張り。

すでに多くの菓子が作り終えている。

換気口からは甘ったるい匂いがもれ、幻人族のガキどもが親に止められながらこっちに来ようと奮闘している。

自称勇者は裸で縛られているというのにさっきから気分が良い。

ドMか、こいつ。


「ますたーたべていい?」

「ユキのは別に作ってあるから待っていろ」

「わかったー」


とりあえず厨房から出て、厨房のある店先に大量の菓子を並べる。


「皆さん。皆さんが私たちを警戒し、恐れているのは分かります。しかし、私たちは皆さんと争う気はありませんし、皆さんのことを誰かに言いふらすつもりもありません。これは私たちが皆さんの信頼を得るための第一歩として皆さんに作ったものです。これを食べて少しでも私たちと仲良くしていただけませんか」


リリが集まっている幻人族に向かって言う。

中にはそんなのだとハッタリだとか嘘つけなどとヤジを飛ばす者もいた。


「ほれ、お前も食いたかったんだろ」


自称勇者に適当につかんだドーナツを渡す。


「ありがとな。ドーナツなんて3年ぶりだよ」

「ナギサ、そんな者が作った物を食べてはいけません」


和服女は止めるが自称勇者は食べる。


「うめえええええ」


すごい勢いでドーナツを食っていく。


「なんだよこれ。俺が転生する前にいた世界のドーナツよりも圧倒的にうめぇ」

「そうか、それは良かったな」

「これ、本当にお前が作ったのか?」

「ああ。お前らに作っているのかと思うとやる気が失せてだいぶ手抜きで作ったけどな」


ここまで料理していてやる気なく作ったのも珍しいが。


「手抜きでここまでだと!?」


自称勇者は驚愕する。

幻人族の子供たちは羨ましそうに眺める。


「文句がある大人は食うな。子供は好きなだけ食え。どうせ手抜きだしな」


俺がそう言うと幻人族のガキどもは親を振り払って食いに来た。

親や一部の大人は止めたが、ガキどもが菓子に群がる群がる。

自称勇者にも餌付けをしていたが、一回一回俺の手から渡すのですごく面倒である。

もう疲れてきたので足の縄を切った。


「ご主人様いいのですか?」

「大丈夫だろ。手の縄はほどいていないし、武器は未だにこっちが取り上げているからな。それに俺は疲れた」


解き放たれた自称勇者はお菓子に群がる。


「うめぇ、これもうめぇ」

「ナギサ服を着てください」


自称勇者は幻人族のガキに交じって一心不乱に食べている。

和服女は一生懸命自称勇者に服を着せようと奮闘しているが着させられない。

ピクシーたちもいつの間にか混じって食っている。


「なんで、人間族はこんなおいしいもの食べているのよ」

「はちみつよりおいしいなんて許せない」

「おいしい」


そりゃ、はちみつの加工品だからな


「ますたーわたしもたべたい」

「ほら、これをやる」


ユキがねだるのでギルドカードから出してやる


「わーい。なにこれ?」

「イチゴ風味のムースだ。リアたちにもある」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます。ご主人様」


リアたちもおいしそうに食べる。

それを羨ましそうに自称勇者とガキども、そしてピクシーたち。


「人間族の地域にはこんなおいしいお菓子があるんですか?」


幻人族の少女が聞いてくる。

茶色の髪で頭にカチューシャっぽいものを付けた今いる幻人族の子供の中では一番かわいい子であった。


「分からんな。俺の住んでいた場所には飴細工程度しかなかったが、他の地域に行けば何かしらあるかもな」

「そうですか」


その子は俺の作った菓子をしばらく見つめるとまた食べ始めた。

その日から俺は数日間菓子を作らされ続けた。

リリが幻人族から信頼を得るためだと言っているがお菓子を作っていてここまでやる気が出ないのも珍しい。


だがリリのもくろみとは違い、幻人族の連中はなかなか物腰が柔らかくならない。

正確には俺にだけ柔らかくならないだけだ。

まぁ、勇者を縛り上げて未だにここで幽閉しているからそういう目を向けられる理由も分かるけど。

リアたちと幻人族の奴らが話しているところはよく見る、

リアやリリは幻人族の奴らに気さくに話しかけたり得意の魔法を教えたりしている。

ユキやベリルはなぜか幻人族のガキどもから好かれている。

ユキはともかくベリルはなぜなんだろう。

ガキどもの中には俺見て逃げる奴もいるからさすがに俺でもちょっと心が痛い。


けど、幻人族の奴らは手を出しては来ない。

それはたぶん人質である自称勇者のこともそうだが、自称勇者自身が毎日毎日今日もお菓子をくれと騒いでは致し方なく作り余った物を幻人族のガキどもにも配布しているからだと思う。

なんやかんやガキどもは俺が菓子をばらまき来るときだけはいる。

ただ、子供にいつ俺が手をあげるか心配なのか幻人族の連中の俺に対する警戒心が薄れる気配はまるでない。

その中でも和服女は特に俺に対して敵意むき出しだ。





そんなある日


「うちの子がどこに行ったか知りませんか?」


俺たちが休んでいる宿もとい幽閉されている家の中にまで大声で行く人行く人に尋ねて回る男女がいた。


「どうしたのかな」

「私、ちょっと聞いてきますね」

「私も行く」


リアとリリはそう言うと外に出て幻人族の人たちに話を聞きに行った。


「優斗君今すぐこっちに来て」

「めんどいから後で良い?」

「お願いします」

「私からもお願いします」

「ますたー、おねがい」


リアたちが戻ってくるとなぜかユキやベリルまでいて、俺を引っ張って無理やり家から出した。


「なんだ?何があったんだ?」


自称勇者も縛られた状態でついてくる。


「実はね」


リアが話す内容によるとさっき大声で道行く人に尋ねて回った男女は夫婦で娘が目を離したすきにどこかにいなくなってしまったらしい。

ずいぶんと探し回ったらしいがどこにもいないので、道行く人に尋ねて回っていたと。


「もう帰ったんじゃないか?」

「だとしても、優斗君に探して欲しいの」

「なんで俺がそんなことをしなくちゃいけないんだ」

「優斗君なら微精霊に頼めば探せると思って」

「そこの自称勇者にでも頼んで魔物に探してもらえばいいだろうが」

「オレや魔物は戦うことはできるが、人を探したりはできねえ」

「使えねえな」

「なんだと」

「優斗君お願い。この人たちも困っているの」


幻人族の夫婦も「お願いします、娘を探してください」と頼んでくるけど…


「優斗さん、わたしからもお願いします」

「ますたー、おねがい。てれさちゃんをみつけて」

「私からもお願いします。テレサちゃんはユキちゃんとも仲良くしていた子なんです」


リリやユキ、ベリルから頼まれたのなら仕方ない。

探してやるか。



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