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弐・銃の勇者

「ここに来るのは2回目ね」

「そうだな」


私の言葉にラルドが同意する。

私達は竜人族との国境の村に来ていた。


「貴様ら、なぜここにいる。貴様達人族とはすでに国交断絶の通知をしたはず。すぐにここから立ち去るがよい」

「お前達の一方的な通知だけで、我らの守備隊が壊滅したのだ。お前達が龍神と崇めるモノにけしかけられ、我らを襲ったのはすでに調べがついている」


一人の竜人族の人が現れ、私達に帰るよう要求したが、ラルドは言い返す。

すると、奥から騒ぎを聞きつけ多くの竜人族の人々が現れた。


「すでに龍神様はお怒りだ。我らはあくまで貴様達にきちんと礼儀をわきまえよと伝えたはずだ。それなのに貴様らは龍神様をことごとく無礼な真似を」

「そうだ」

「ふざけるのもいい加減にしろ」


竜人族の人々の怒りはヒートアップしてゆく。


「マナカ、このままでは龍の元へ行けない」

ラルドは私に助けを求めるように視線を送る。

「アベル、ディラン麻痺の魔法を竜人族の人たちにかけて。でも、あくまで殺さないで無力化する程度で」

「分かった」

「いいのか、マナカ、兄貴。一旦退くのも…」

私はディランの対応にため息をつく。

「私達の目的は昨日話したでしょ」

「ディラン、俺達はあくまでマナカの仲間だ。そこをはき違えるな。それに俺達自身のためにもマナカは必要だ」

「分かったよ」

ディランは渋々納得して魔法を唱える。

アベルもそれに合わせて唱える。


「「『トリー・パラライズ』」」


その魔法で周りに集まっていた竜人族の人たちは次々と気絶していく。

私は少し申し訳ないなと思いながらもその先を進もうとする。


「待て…」


一人の竜人族の人が私の足首を掴む。

今にも気絶しそうで弱々しい力だったけど、その人の目にはしっかりと力が入っていた。


「なぜ、勇者が人族に肩入れする」

「それはあなた達が私の大切な人達を傷つけたから。大丈夫、私はあなた達には危害を加えるつもりはないわ。あなた達をけしかけ、私達の仲間を襲わせた龍を倒しに行くだけよ」

「や、やめろ!」


私の言葉を聞くとその竜人族の人の手の力が強くなる。


「頼む、やめてくれ。龍神様には手を出さないでくれ」

「人を襲う龍は決して信仰の対象なんかじゃないわ」


竜人族の男の人は私に必死に懇願してくる。

私も自らの考えを伝えるが、竜人族の男の人は食い下がらない。


「頼む。それでも、龍神様には手をあげないでくれ」

「もういいだろう」

「ぐっ」


ラルドがその人を起こすと腹に拳をいれる。

竜人族の人はうめき声をあげると倒れてしまい気絶してしまった。


「ラルド」

「大丈夫だ。この後、後ろから援軍が来る。こいつらの治療は頼んであるから大丈夫だ」

「そう、なら良いんだけど」


私の心配事はきちんと解決するならいい。

私は足を掴んでいる竜人族の男の人の手をそっと外すと歩きだす。

ジルやアベルは付いてきてくれるが、ディランはなかなか歩き出そうとしない。


「ディラン、早くしてちょうだい」

「なぁ、本当に龍を倒していいのか?」

「さっきも言ったでしょう。どんな理由があっても人を襲うのはいけないわ。竜人族の人たちには悪いけれど、私はあの龍が今後も人を殺し続けることに我慢ができないわ」

「分かったよ。ラルド、本当に竜人族の人には手を出さないんだよな?」

「もちろんだ」


ラルドのその言葉を聞くとディランが付いてくる。

いよいよ、龍退治だ。





その後も私達を止めに来た竜人族の人には気絶をしてもらった。

町を通っても何故か竜人族の男の人たちにはあったけれど一度も女性やこどもには会わなかった。

そしていよいよ龍の住む山にたどり着く。

どこに龍がいるのかと探すといきなり上からサイクロンが私達に降り注ぐ。


「固有スキル『砲撃』」


私の固有スキルで一瞬でサイクロンが消し去る。


「ここには来るなとかつて忠告したはずだが」


そこにいるのは蒼い龍だった。

しかも、普通に話しかけてきた。


「あなたが私の仲間に手をあげるように竜人族の方々をけしかけたのは知っています。だから、私はあなたを倒し、仲間の無念を晴らすためにここに来たわ」

「それは貴様らが勝手に我が聖域に足を踏み入れ続けるからだ。あげくに我の子達にまで手をあげるとは」

「手をあげたのはそちらでしょう」


私は龍と言い合いをしたが、向こうはまるでこちらなど眼中にないという感じである。


「マナカ、もうよせ。あの龍に何を言っても無駄だ」

「そうね」


ラルドの言葉に私は納得する。

言葉で話し合えれば良かったのだけれど。


「もうここから立ち去れ。今回の貴様らの愚行はあまりにも目に余るが、我といにしえの7番目の勇者との約束もある。すぐに軍を退け」


軍?

何のことを言っているか分からないけれど


「言ったはずよ。あなたを倒しに来たと。話し合いでどうにかなれば良かったのだけれど」


私は宝具の銃を龍に向ける。

龍は大きく目を見開くように見えた。


「貴様、まさかそれは宝具か?」

「だったらなんだと言うの?」

「何故、勇者が我を倒そうとする!かつて我らが互いに取り決めた約束を反故にする気か」

「そんな過去の勇者との約束なんて私は知らないわ」

「我がこの場所からいなくなれば災厄がさらに加速するのだぞ」

「そんな災厄は私が退けるわ」


今までの魔獣は正直弱すぎるわ。

こんなのを魔王が操っているならその魔王もきっと弱い。


「いいだろう。勇者が相手なら我には勝ち目がない。ならば、せめて我が子達が逃げ切れる時間を作るまで。来るがよい、銃の勇者よ」


その言葉を最後とし、私達は戦った。

蒼い龍は魔獣なんかと比較にならないぐらい強かった。

けど、最後は私の固有スキル『貫通』で龍の胸を撃つとそのままどこかへ逃げていってしまった。

私自身もMPやSPが完全に無くなってしまったので追撃出来なかった。

ディランは戦いが終わっても終止複雑な表情をし、龍討伐の祝賀会でもすぐに自分の部屋に戻って行ってしまった。




「ふう」

「お疲れ様ですお兄様」

ラルドは城に戻ると大きく息を吐いた。

「さすがは龍だ。マナカがいなかったら今頃は冗談抜きで死んでいた」

「そうですか。竜人族の方はどうですか」

「無事に事は進んでいる。ただ、どうも竜人族の男ばかりしか残っていなくてな。女子供や老人共には逃げられたようだ」

「では放っておくのですか?」

「俺が黙って逃がすとでもすでに幻人族地域との国境の方には守備隊を派遣してある。このまま行けば無事に殲滅できる」

「まぁ、怖いですわ」

2人の兄妹は怪しく笑いながら語り合った。



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