壱・銃の勇者
再投稿です。
特別編だと思ってください。
私の名前は姫川愛歌、銃の勇者として異世界転生した。
生前は病気で入退院を繰り返し、学校にもまともに通えなかったけれど、転生した私は体のどこもおかしくなく、むしろ銃の宝具に選定されてからは体に溢れるばかりの力がみなぎるようになった。
これで生前憧れていた恋愛や病院食ばかりで食べられなかったお菓子や味の濃いご飯も食べられるのかと思うと嬉しくて堪らない。
私の胸は期待で張り裂けそうだ。
ただ、私がやらないといけないことも多い。
1つ目は魔獣退治。魔獣はこの世界に現れる凄く強いモンスターだけど、私のこの銃の宝具があれば1発で倒せる。
正直、簡単過ぎてつまらない。
2つ目は魔王討伐。
魔王は魔族支配領域と呼ばれる地域にいると教えて貰えたけれど、凄く遠いし山を越えないといけないので行くのが萎えた。
そう言うわけで私は召喚されるとすぐに冒険者として旅に出ることになったけれど、初日に同じ勇者で先輩であるブロウさんにレベルを30程度まであげてもらったので安心して出発できた。
ブロウさんはとても優しく親切な人であるけれど、私の出発当日に同じく召喚された人にひどいことを言われていた。
確か、くり、栗山さん。
栗山さんという人がブロウさんを人殺しだと貶していた。
結局嘘だったけれど、栗山さんはブロウさんに謝りもせずに行ってしまった。
ブロウさんが言うには栗山さんのように勇者を騙して利用しようとする者もいるので気をつけた方がいいという。
最初は優しそうで良い人だと思ったのですが、人は見かけによらないことを知った。
色々と話が脱線したので戻すと、私が冒険に出るとすぐに多くの人が仲間になってくれた。
他にも私を勇者として召し抱えたい国や有力者の人がたくさん来たのでお金にも困りません。
今、私の仲間は私以外皆、男の人ですがブロウさんみたいにとても親切で優しくしてくれる。
前衛で聖騎士のラルドと黒騎士のジル。
後衛で魔法師のアベルとディラン。
聖騎士は剣士で最も強いジョブで黒騎士はその次に当たる。
けれど、黒騎士は白騎士と並ぶ双璧のジョブで剣士の中では強いジョブに入り、成れる人が少ない。
魔法師は魔術師の次に強いジョブでやはり成れる人が少ない。
実は私と彼らはただの仲間という関係ではない。
私とラルドは恋人同士である。
ジルとアベルは私に好意を持っているし、私自身彼らのことをラルドほどではないが好きである。
ディランは正直面倒な男だと思う。
私のことを好きだと告白もしてきたし、好意を寄せてくれてはいるけれど私としては正直微妙である。
因みにアベルとディランは兄弟だ。
私は今、ラルドの母国のポルヴォー王国を中心に活動している。
ポルヴォー王国は竜人族支配領域の近くにある人族の国。
実は、ラルドポルヴォー王国の王子で、ポルヴォー王国が私の後ろ盾になってくれている。
「今回の魔獣も余裕だったな」
「ええ、そうね。私達なら余裕かしら」
ラルドの答えに私も同意する。
「マナカさん、少し良いですか?」
女性の声に私は振り返る。
そこには白いドレスを着た綺麗な黒髪の少女がいた。
彼女はラルドの同腹の妹のクララ。
この世界に来た私の親友になった子だ。
「どうしたのクララ?」
「実は前から懸念していたことが悪化しまして」
「とうとう危害を加えてきたか」
クララの言葉にラルドが怒りを露にする。
「もしかして竜人族が襲ってきたの?」
「はい、その通りです。今までは死人はいなかったのですけど、大怪我をした者が多いだけですんでいました」
実は前から竜人族との間にこぜり合いがあった。
私が竜人族地域で魔物退治にしていたときに間違って竜人族の神聖視する山に踏み行って魔法攻撃を受けた。
別に偶々入ってしまっただけなのに。
まぁ、すぐに出ていけとも言われましたし、竜人族の方々から山には近づかないでと頼まれたけれど、魔物を逃げたのを追いかけたというこちらにもやむにやまれぬ理由があったから少しくらい大目に見てくれてもいいのに。
「ということはやはり竜退治が必要になるな」
「そうですね」
ラルドの言葉にクララが同意する。
「龍退治?」
「ああ、この前魔法を撃たれたあの山には巨大な龍がいるんだ」
「かねてより、あの山に入った冒険者を襲っていたという噂があるので調査したところ事実なのです。竜人族に冒険者の保護を頼んでも山に入ったのが悪いの一点ばりで」
「それはいくらなんでもあんまりじゃないかしら?」
私の疑問にラルドやクララが答える。
竜人族は龍を神聖視しているけど、そんなものは神聖なものじゃない。
人を殺すようなものは危険なものだ。
「そこに今回我らが冒険者の保護を目的に派遣した兵士達が竜人族の襲撃によって壊滅しました。竜人族に抗議しましたが、国交断絶の通知が届きました。裏では全て龍が関わっているということです」
「とうとう本性を現したということだな」
「ひどいわ」
その龍のせいでこんなことになっているなら、私がどうにかしないといけない。
「マナカさん、どうか私のお願いを聞いて聞いていけないでしょうか?龍の討伐をしてほしいのです」
「マナカ、俺からも頼む。龍のせいで俺の軍から同期生も死んだんだ。仇を打ちたい」
もちろん私の言葉は決まっている。
「クララやラルドの頼みを私が断るわけないわ。任せて、悪い龍を倒しましょう」
「ありがとうございます」
「恩に着る」
「なら、ジルやアベル、ディランにも伝えてくるわね」
私は扉を開けて三人を呼びに行く。
ジルとアベルに龍討伐のことを伝えると快く快諾してくれた。
やっぱり、ジルとアベルは優しい。
顔も良いし、私のことをいつも助けてくれる。
最後にディランの部屋に着く。
ノックをするとディランの部屋に入る
「ディラン、ちょっといいかしら」
「ま、まま、まなか。い、いいぞ。大丈夫だ」
ため息が出る。
ディランは顔も良いし、優しくはあるのだが私の前ではいつもテンパって動けなくなることがある。
龍退治のことを伝えると
「まなか、竜人族の信仰対象を傷つけるのはちょっと……」
ディランはよく私たちの活動に物を申すことがよくある。
兄のアベルが提案したこともよく反対意見を述べることがあるから先にすすまない。
そのくせ、自分で決めることができない。
「でも、アベルの国の人たちは龍によって被害を受けているわ。このままでは、さらに被害が大きくなるわ」
「でも……」
もうイライラしてきたわ。
「分かったわ。なら、今回ディランはここで待っていてちょうだい。私たちだけでも行くわ」
「わ、分かった。俺も行くから」
こうして龍退治に行くことになった。
その日、龍討伐の決定の祝杯をあげた。
マナカが出ていったの見送ると
「これでようやくあの憎き龍を討ち取れますね」
「ああ、あれのおかげでわが国は竜人族の地域での権益が思うように拡大出来なかったからな。あの龍が山に隠している聖剣や山に眠る鉱石もわが国が手に入れられる」
「竜人族の方は?」
「すでに軍が裏で殲滅を始める手順になっている。あいつらの龍の加護とか言う魔法のせいで何度わが国が煮え湯を飲まされてきたか」
ラルドは苦虫を潰すように顔をしかめる。
「マナカさんがわが国に来てくれて本当に良かった。これもお兄様がマナカさんにアタックをしてわが国に連れてきてくれたおかげです」
「ジルやアベルが未だにマナカを自国に引き込もうとしているのが困るがな。まぁ、ディランは本気でマナカがすきみたいだが。けど、俺がマナカに惚れているとマナカ自身は思っているし、マナカ自身も俺に惚れているからな。今のところ問題ないな」
「あら。お兄様はマナカさんのことが好きではないのですか?」
「俺があんな女を好きになると思っているのか?料理はできない、不満があると小言を言う。なんど嫌な気分にさせられたものか」
「あら、ひどい人」
アベルは心底嫌そうにし、クララは面白そうに笑う。
「では、今夜は龍討伐の決定を祝って祝杯でもあげますか?」
「いいな。ぜひ頼む」
「分かりました」




