犯人
とりあえずクソガキの身ぐるみを剥いで縛り上げてゲイバーの店主に一時的に預かってもらった。
起きだしてあんまりにもうるさいなら掘っていいと伝えておいた。
今はバークレーに戻りながらベリルの加護による精霊魔法を見ていた。
『聖海』:俺の今のMPのほぼすべてで打つ。効果は割愛する
『氷水壁』:俺のMPすべてを使う。防御魔法っぽい
『氷河』:俺の今のMPでは全然足りない。多分攻撃魔法
『水神』:俺のMPでは全く足りない。多分攻撃魔法
防御や回復が主体の魔法だな。
けど、いつも通りに一発のみ。
それよりも問題がある。
「ますたー、もっとー」
「なぁ、もういい加減降りてくれないか」
「いやー」
ユキは助け出してからというものずっと俺の胸に顔をこすりつけたり、俺の頬にキスしてきたりと甘えっぱなしで困る。
俺の左腕、やけどがまだ残っていて右手だけでユキを抱えている状態だから腕が結構きつい。
「けど、本当に助かった。ベリルがいなかったらたぶん死んでいた」
「いえ、そんなことありません。ご主人様のお役に立てて良かったです」
「ベリルもう一度俺を呼んでくれないか?」
「えっと、はい。ご主人様」
うん、いい。
ベリルは俺と契約を結んだあと、ご主人様と言うようになった。
なんでもユキがマスターと呼んでいるなら自分はご主人様と呼びますということだそうだ。
最初は意味が分からなかったので普通に名前で呼んでくれと言っていたが、ベリルが一歩も引かずにご主人様と呼び続けているうちに俺は理解した。
理屈で理解するんじゃない、感情で本能で理解するのだと。
『ご主人様』なんという破壊力なんだろう。
支配欲をここまでかき立てる言葉もない。
ご主人様と呼ばれ続けるうちに自分でもむしろそう呼ばれた方がいいんじゃなかと思い始めた。
「私はご主人様を愛していますからご主人様が望むのならどんなことでもしてください」
ベリルは照れながら大胆なことを言う。
ベリルは戦いの中で記憶を一部思い出した後、俺を好きであることを悪びれずに言うようになった。
ベリルはとても綺麗だから俺も好意を持たれるのは嫌じゃない。
やったね!
ハーレム要員3人目だぜ
とは思うがリアとリリに知られた後が面倒くさいことになるだろうなぁ。
すると目の前に準精霊たちが行ったり来たりと自己主張する。
「分かっている。お前たちの力もなければクソガキを殺れなかった」
準精霊たちも納得するかのように俺の周りに浮かんでついてくる。
「というか、お前らもあのクソガキから離れられたんだから自分の好きなところに行けよ」
「どうやら準精霊たちもご主人様と契約を結んで、ご主人様と一緒にいたいらしいです」
ベリルが訳してくれる。
「契約して力を貸してくれるというなら俺としてはありがたい話だが、お前らいいのか?俺と契約したらたぶん今までよりも弱くなるぞ」
「それでも契約したいそうです。ここを離れても捕まってまた使役させられるくらいなら自分の認めた者と契約したいと言っています」
「そうか。なら、契約させてもらうか」
すると精霊たちは俺の左腕に集まると俺の左腕に特殊な文様が浮かび上がる。
ついでにやけどをした腕を治してくれた。
火、水、風、土、雷の準精霊と契約しました
準精霊の加護を取得しました。
準精霊魔法を使用可能
頭の中でそんな音が流れる。
「すまないな」
「準精霊たちもどういたしましてと言っています。代わりにユキちゃんが言っていたお菓子を食べたいと言っています」
「現金な奴らだな」
「ますたー、かえったらおかしがたべたい」
「私もご主人様のお菓子を食べたいです」
「ユキが攫われたのは俺の不注意だし、ベリルには命を救われたしな。今日は好きなものをいくらでも作ってやる」
そうして話しながら歩いているうちにバークレーに着いた。
扉を開けると母親とリアとリリ、爺さんがいた。
「無事、ユキを取り戻したのじゃな」
「ああ」
「無事でよかった」
「はい。無事で良かったです」
「すまないな。こっちも無事ではなかったが、とりあえずこっちで起きた事を話す」
カイザーのクソガキと戦い、はじめは十分渡り合えていたが途中から準精霊の力を使って追い込まれたと。殺される寸前にベリルが助けてもらい、ベリルと契約してユキと準精霊たちを救い、最後は準精霊たちと感電させて気絶させた。クソガキはゲイバーに一旦預かってもらっていると伝えたところで
「リアさん、リリさん。私もご主人様が好きなんです。負けませんよ」
「ご主人様!?」
「それよりもやっぱりベリルさんはライバルでした」
リアとリリにベリルはそう宣戦布告をすると、俺に近づきキスをする。
「「「あーっ」」」
リア、リリ、ユキが声を上げて抗議する。
「小僧、いちゃつくなら外でやっていろ」
「俺もさっさと話を進めたい。話をしてくれ」
「うむ、分かった。結論から言えば探しておったが見当たらなかった」
「そうか。でも、一人はここに釘付けにしてくれて助かった」
「何を言っておるんじゃ」
俺は爺さんの言葉を無視し、剣を抜くと母親の首元に近づける。
「あら~、栗原ちゃんなんのつもり~」
「優斗君!何しているの」
「そ、そうです。お母さんはあの人たちの仲間じゃないです」
「そうじゃ。もし、仲間ならどうしてここにおる?」
俺は怒りで我を忘れるのを抑えながら低い声で母親に詰め寄った。
「俺が何も知らないとでも思ったか?お前が今回、奴を手引きしなければここまでうまくいくことはなかった。お前にとって予想外なのは俺がユキとだけじゃなく、ベリルと準精霊たちとも正式に契約したことだ。いかにお前とて精霊2人と準精霊5人、それにここに来る前に周りにいた微精霊たちに頼み込んで連れてこられるだけ連れてきた」
息を整えて続きを言おうとしたところで
「俺の女に何をしてやがる」
変態が扉蹴り破って出てきた。
「それはこっちのセリフだな。よく俺の精霊に手を出したな。それによく俺の前に出てこれ
たもんだ。ここにリアとリリがいなかったら真っ先にお前を殺していたよ」
今回のユキを攫ってクソガキに渡したのはこのフレデリック・バインズだ。




