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戦闘②

「栗原さん、避けて!」


ベリルの声が聞こえた時には俺の体は吹き飛ばされていた。

こ、これは、さっきクソガキが唱えていた魔法『ドヴァー・トルネイド』

詠唱なしにいきなりだと。

しかも魔法陣の展開スピードもさっきとは各段に違う。


「ますたー!」


ユキは俺を呼ぶ。

俺は吹き飛ばされるとそのまま見えない壁に叩きつけられる。


「かはっ」


肺から全部空気を吐き出したかと思った。

背中は痛むがなんとか耐えられた。


「ふはははははは。見たか。これが僕の力だ。精霊とは本来魔法詠唱の省略や展開スピードを上げるのに使うものだ。さぁ、もっと僕を楽しませてくれ」


このままじゃ、ジリ貧だ。

あいつの懐に潜り込んでいくか精霊魔法を何が何でも唱えるしかない。

俺は剣を握りしめるとクソガキに向かって走り出す。

直後、俺の右肩を何かが打ち抜く。


「栗原さん!」


ベリルの心配する声が耳に届く。

最大限の『加速』状態で攻撃が見えないだと。

微精霊たちも何が起きたか理解していない。

俺は痛みで剣を落としてしまう。

肩を押さえて膝をついてしまう。


「これは『ドヴァー・アクアショット』。僕はね、火、水、土、雷、風の5属性の精霊を操れる。だから、魔法も5属魔法すべて使える」


直後、足に風がまとわりついたかと思うと足をすごい力で引っ張られる。

そのまま、俺は大きく持ち上げられたかと思うと勢いよく地面に叩きつけられる。

地面もあまりにも固くなっており、叩きつけられた瞬間血反吐を吐いてしまう。

体があまりにも痛い。


「さっきのは『ドヴァー・ウインドハンド』と『トリー・ハード』。風魔法と土魔法だ」


クソガキが高説を垂れるように話す。

精霊魔法しかない。


「『我、大地の精霊と契約する裁定者が願う。我を拒むあらゆるものを破壊―ぐっ」


詠唱をしている途中に火の蛇がクソガキの手のひらから現れると俺に向かってくる。

とっさに左腕で防いだが、詠唱が止まってしまう。


「君の詠唱の威力は知っているからね。ああ、さっきのは『トリー・フレイムスネイク』。そろそろ、僕も飽きてきたしおしまいにするか」


もうどうこう言っている場合じゃない。

このままじゃ、俺は殺されユキを助けるどころかクソガキに奴隷のように使役される人生になってしまいかねない。


断罪を使うしかない。


一瞬、リアたちの笑顔やクソ王子の顔が頭によぎったが仕方ない。

ユキを確実に救うためにはこれしかない。


できればクソ王子に断罪を打ちたかったな。


「『我はあらゆるものを罰する裁定者なり。われがだ―』」


言葉を続けようとしたときに今までに感じたこともない激痛が体を襲う。

膝を地面についてしまう。

詠唱が途中でできなかったうえ、俺は口から血を吐いてしまう。


血が黒いだと。


『断罪』は詠唱するだけで、ここまで体にダメージがくるのか。

今回は詠唱失敗で『断罪』は発動しなかったが、これでは詠唱事態に耐えられるかも分からない。

クソガキは俺のそんな姿を見て急に笑い出す。


「なにをするのかと思えば、固有スキルでも発動しようとして失敗し、自分が逆に傷を負うとは。とんだ使えないジョブだな『裁定者』とは」


クソガキはゆっくりと俺に手をかざすと


「最後に僕が使える最高の魔法で君を葬ってやろう」

「やめて。ますたーをいじめないで!」


ユキはクソガキに叫ぶ。


「ふん。最初から僕に加護を与えていればいいものを、無駄な悪あがきをするからこうなるんだ。どうだ、今からでも遅くはない。許しを請えば、死ぬ苦しみを減らしてもいいがどうする?」

「栗原さん、早く逃げてください。彼は私たちがかなう相手じゃありません」


ベリルが俺に向かって叫ぶ


「ベリル、俺はあの時あの子に誓ったんだ。逃げないし、恐れないと。こいつみたいなクズに頭を下げるつもりもないし、俺は最期まで戦い続けると約束したんだ!」


そうだ。

あの子に誓ったんだ。

ベリルは俺の言葉に大きな衝撃を受けている。


「そうか。でも、君に良いことを教えてやろう。勇気は強者の前では蛮勇にしかなりえないと。最後の技は僕自身が詠唱してやる。ありがたく思うがいい」


クソガキは俺に杖を向ける。


「『トリー・フレイムドラゴン』」


クソガキの杖から火の竜が現れ、俺に向かう。

火に焼かれながらでも最後の力を使ってなにがなんでも『断罪』を使う。

俺は大きく息を吸う。

一瞬、ブロウに見せられた魔法を思い出す。

あの時のと比べれば小さいものだな。


「だめえええええええええええ」


ユキが叫ぶ。

俺はそのまま竜に飲まれようとした。



「『水撃』」



俺に向かっていた火の竜は一瞬で消失した。

火の竜に氷柱がぶつかったように見えた。


氷柱が飛んできた方を見ると、そこにはベリルがいた。


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