パーティーに必要な物
それから1ヶ月ついに俺のレベルは58になった。
やはり予想通り、レベル50で固有スキルが出てきた。
名前は『断罪』。
『断罪』:HPをゼロにする代わりに放つ
いかなるものにも等しく罰を与え、殺す。
たぶんすごい強い技なんだろうけど、HPゼロって俺死ぬじゃん。
だから固有スキルを使うな、か。
理由も分かった。
あのクソ王子を殺してやれるかもしれないが、リスクが大きい。
リアたちに会う前の俺ならすぐにでも使っていただろうが、今の俺には大切なものが増え過ぎてしまった。
ユキとはこの1ヶ月の間に連携が取れるようにしていた。
ユキ自身が霊力を完全回復するには1年ぐらいかかるという。
そのため、ユキの精霊魔法は比較的弱いもの(これでも十分強い)や霊力をあまり使わないものを中心に攻撃を行い、俺が魔物がひるんだすきに剣でとどめをさすという戦い方にした。
万が一、あまりにも強い魔物が出た際は俺が精霊魔法の『雷光』で仕留めた。
精霊魔法でいえばレベルアップでMPが増えたため、『雷光』の次の『雷鳴』を放つことができるようになった。
しかし、やはり一回使うだけでMPが枯渇する。それだけでなく体に倦怠感みたいのが生じ、注意力が散漫になる。
何度も打ったが、使えば使うほどひどくなっていく。
あまり常用はできないが、威力は『雷光』をはるかに上回る。
また、『雷光』も『雷鳴』も破壊する規模や威力の調節は敵の力に応じて自動でしてくれることも分かった。
すごく補助が利くが、相変わらず詠唱が長いうえ集中が切れると発動しない。
後は微精霊魔法というのも使えるようになった。
微精霊魔法は微精霊たちが俺に危険を知らせてくれる程度のものだ。
知りたくもなかったが勇者たちについても今どこで何をしているか分かった
加山:たぶん一番まともに勇者をしている。魔獣退治を自分のパーティーで行う。
高橋:隣国で王女、貴族の娘、大商人の娘など多くの女性たちとハーレムを形成。時々、魔獣狩りを行う
姫川:逆ハー形成。以下高橋と同じ
クソ王子:各国を渡り歩きながら豪遊しつつ、各国に勇者の特権を拡大するよう要求。魔獣狩りは時々行う。
獣の勇者:俺達より数年早く召喚。ここ最近、所在不明
楽器の勇者:国によって楽器の勇者ではなく、針の勇者と呼ばれていたり小刀の勇者、糸の勇者と呼ばれていたりと本当の力がよく分からない。60年前に召喚され最古参。今はどこにいるか不明
勇者って言う割になにもしてねぇじゃん。
なお、魔王は現状目立った動きはしていない。
勇者の力が測れていないのか存在しないと言われる7人目の勇者を探しているのか分からん。
ギルドでの知り合いも増えた。
一人目はヴァルトハイムという爺さん
俺が少しの間ユキを一人ギルドで待たせて戻ってきたらユキが熱心に話す爺さんがいた。
なんでも冒険先で見つけた甘い木の実をもらったらしく、爺さんとは話すようになった。
爺さんもユキを孫のようにかわいがってくれるのでよくしてくれる。
実はこの爺さん元Aランク冒険者なので俺もよく昔の冒険話を聞かせてもらっている。
半分自慢だが、もう半分は本当に役立つ。
次は
Cランクパーティー『ティルヴィング』の面々
俺とユキがマウスイーターという見た目巨大なネズミの駆逐を行っていたところ、一回り大きなマウスイーターに襲われていた。
マウスイーターは基本Dランクで倒せるレベルなのだがこのCランクパーティーはあまりにも後先考えず駆逐していたらMP切れは起こすわスタミナ切れは起こすわでマウスイーターに追い詰められていた。
後は察してくれよう。
大ネズミの脳天にユキが精霊魔法を叩き込み、周りにいたネズミを俺が『雷光』を使って焼却。
害獣を潰した。
こういうことがあり、それなりに親しい間柄となった。
リアの卒業式の前々日
「ますたーはね、すっごいんだよ。おかしもすごくおいしいし、なによりねびせいれいたちにかんたんなしじならできるんだよ」
「ほう、それは凄いの」
ユキはいつも通りヴァルトハイムの爺さんにマスター自慢をする。
爺さんはそれを楽しいそうに聞きながら相づちを打ってくれる。
俺はユキの相手を爺さんに任せ、俺とユキが助けた『ティルヴィング』にパーティーをギルド1階に招き、リーダーのケインを含めてパーティーでの重要なこと、大切なことを学んでいた。
「なぁ、やっぱり俺たちのパーティーに入らないか」
ケインは俺に尋ねてくる。
「それは前にも断っただろ。すでに俺と組んでくれる子がいるから無理だと」
ケインのパーティーはケインを含む男2人が剣士、残りは女3人で魔法使い2人と回復を専門の巫女1人のバランスが取れたパーティーだ。
「だいたいお前らの目的はどうせユキだろ。あいつはそういうのをひどく嫌っているからやめとけ。組ん
だ時点でお前ら消されるぞ」
「確かにユキちゃんは凄いが、お前だって精霊魔法が使えるんだろ」
「一発だけだがな」
MPが増えても、『雷光』が2回以上打てるようになったわけではない。
今まで10割使っていたものが9割になったくらいなものだ。
「ていうか、クリハラ。お前の組んでくれる子って女か?」
ケインの仲間のカイル(男)が尋ねてくる。
「それはあたしも気になっていた」
盗賊のデイジーも聞いてくる。
「そうだが」
「やっぱりそうなんだ」
「栗原さんはケインと少し似ているから」
「あ、納得」
魔法使いのルミナ、マインに言葉にデイジーが頷く。
「なんでこんな小僧がモテて俺がモテないんだよ」
カイルが叫ぶ。
このパーティー実はカイルが作ったのだが、友人のケインが加入した後ケインに惚れた面々が加入して形成されたものである。
「それはお前、いつでもどこでもナンパはする、覗きはする。理由は明快だろ」
ケインが呆れた表情で見る。
因みに、ケインは女性メンバーが自分に惚れていることに気づいていない。
「そこの面倒なのは放っておいて続きを頼む」
「ああ、分かった」
ケインもカイルを無視して話を始める。
「パーティーを作った後は転移石を購入して転移する場所を記憶させる。高価な転移石ほど記憶できる場所が多くなるが、基本の転移石は3つまでしか記憶できない。だから、大抵はギルドと魔物を狩りながら進んだその日の地点、そしてどこかの宿屋を記録する」
「転移石はどこで買える?」
「ギルドで購入できる。ドロップアイテムをギルドで今まで売っていただろ。ギルドではそのドロップアイテム組み合わせて転移石を合成するのに使うんだ」
「なるほどな」
「他にも薬草やヒール薬もドロップアイテムや魔物の核石で作っているからそれらの購入もしておいた方がいい」
「MPを温存するためだよな」
「ああ、魔法はMPを消費するからな。戦闘時に使えないと困る」
「了解。助かる」
とりあえず現状揃えるものは分かったな。
「だが、栗原。お前、金はあるのか?まだEランクだよな。そしたら、あんまり金がないいじゃないか?」
「いや、そんなことはない。金貨87枚ほどあるしな」
お茶を飲みながらケインたちが尋ねてくるのでそう答えるとむせる。
「お、お前、どうやってそれだけの金を貯めた」
「俺が『バークレー』にいることは知っているだろ。あそこで朝、昼、夕の飯とお菓子を作る代わりに宿代をタダにしてもらっているんだよ。あとはユキが討伐や魔物狩りを手伝ってくれるから収入が一気に増えたんだよ」
俺が一人でキングフロッグを相手にしていたころは昼間なら3~5匹、夜なら12時間コースで10~20匹がいいところだったが、ユキが手伝ってくれるおかげキングフロッグだけなら夜に同じ数を仕留めるのに2時間はかからなくなった。
それがまして、ドロップアイテムを出す魔物だったら余計に収入は増える。
武器の買い替えも身ぐるみを剥いでやった分があるから出費はない。
「お前、なにかこう遊びに使ったりしないのか?」
「遊びって?」
「例えば、賭け事とか」
「俺は博打が嫌いなんだよ。もともと金もあんまりなかったし。しいて、楽しいことは菓子を作っているときだな」
カイルが俺に尋ねてくるので俺は自分が一番していて楽しいことを言う
次はこう作ろうとかこうすればもっとうまくいくはずとか考えていると面白い。
「なるほどな。お菓子の化身とはよく言ったものだ」
ケインが俺を見ながら納得している。
「なにそれ」
「このギルドでの栗原の呼び名だよ」
「なんて不名誉な」
「そんなこと言うなよ。一度俺達も食べてみたいものだな」
ケインが頷くと周りの女性メンバーも頷く。
「菓子は作ってきていないが、ケインには後で礼として渡すつもりだったものがある。お前、あんまり甘いものが好きじゃないと言っていたからな。お菓子かどうかは分からんが、饅頭は持ってきた。あんまり甘くないから食えると思うぞ」
「本当か」
「うそ」
「ありがとう」
「楽しみ」
ケインたちに饅頭を渡す。
メンバー全員で饅頭を眺めるが口にする
「これなら俺も食べられる。パンみたいだけど、食感はもっと柔らかいな」
「おいしい」
「これ、すごい」
「うまい」
「うっめーーーー」
好評で良かった。
「この中身の黒いのはなんだ?」
「あずきを練ったものだ」
「野菜としてしか使ったことがなかったな」
ケインは饅頭のあんこに興味深そうに眺めた。
「そろそろ俺は行く」
「ああ、また何かあったら気軽に相談してくれ」
「ケイン、お前は俺が今まで会った男の中で武器屋のオヤジと並んでまともな男だ。お前と知り合えて本当に良かったと俺は今感動している」
「そ、そうか」
ケインお前は俺のアニキだぜ。
もともと兄貴分っぽいしな。
「ユキー、そろそろ帰るぞ」
「わかったー。じゃあね、ばるじいちゃん」
おお、ユキが人間って呼ぶんじゃなくて名前でしかも爺ちゃんなんて読んでいるぞ。
爺さんも嬉しそうに、にやけている。
「爺さん、面倒見てくれて助かる」
「何、ユキちゃんはとってもかわいいからの」
「これは礼だと思ってくれ」
「これは?」
「羊羹だ。爺さんの口にも合うと思う。甘さも抑えているから」
「そうか。ではありがたくもらうとするかの」
「もしまたユキの面倒を見てくれると助かる」
「むしろもっと見させろ」
最後にそう言葉を交わすと帰った。
ユキにどうして爺さんと呼んだんだ?と聞くとそう呼んでくれと頼まれたからと言った。
爺さん、ユキがそんなに気に入ったか。
後日、爺さんが羊羹の作り方を聞いてきたのはまた別の話。




