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墓と姉妹

ギルドを出ると、俺は少女の元へ向かった。


「今日も来たよ」


墓に向かってそう言う。

やっぱりここにいると気持ちが落ち着く


「ますたー、これはなにー」

ユキが尋ねてくる。


「俺が殺してしまった子のお墓だよ」


俺は墓に花束を置くとユキのことや今日あったギルドでのことを話し続けた。

ユキがどうしてひとりでしゃべっているの?と聞いてきたので、これが俺がやらなければいけないことなんだと答えておいた。

一通り話すと、墓を掃除して帰る。


「ますたー、ないている?」

「泣いてないが」

「ううん、ないている」

「泣いてないって言っているだろ」

「こころがないているとおもう」

「……」

「せいれいはね、にんげんのこころがわかるんだ。とくにわたしはますたーのこといっぱいしりたいっておもうからよけいにわかるんだ」


プライバシーの侵害だな。


「ますたーなかないで」

「泣いていないから大丈夫だ」

「……」


ユキは俺がそう返すと黙ってしまった。

いつもはうるさいくらいお菓子くれと騒ぐのに。

村に戻るためにユキと城下町を歩いていると、だいぶ日も傾いてきた。

今日の夕飯、ユキは楽しそうに今日あったことを話した。

ギルドでの他の冒険者との話題ではリアとリリがこっちを見てきたが無視した。





「やっぱり難しいな」

「でも、だいぶ読めてきていますよ」


今俺は俺の部屋でリリからこの世界の標準文字を教わっている。

今後、冒険のためにこの国を出れば、文字を読むことある。

そうなったときにいつも近くにリアやリリがいて、文字を読んでくれるとは限らないからな。

因みに今はリアに頼んでユキを風呂に入れさせてもらっている。

ユキが俺と入ると騒いだためだ。


「ごめんな。本当はリリも連れて行きたいんだが」


正直、リリもパーティーに加えたかった。

リアは感知魔法や援護が得意なのだがあまり回復魔法は得意じゃない。

リリはその点、感知魔法や援護は人並みだが回復魔法がとても得意だと母親が言っていた。


「そう思うなら、ご褒美を下さい」


リリはそう言うと目を閉じる。

俺もそれに合わせてキスをする。

関係として一番進んでいるのはリリとだと思う。

リアはなんだかんだ言って奥手だが、リリは積極的だ。

とは言ってもまだキスまでだがな。


「でも意外でした。優斗さん、今まで彼女がいなかったと聞いたときは嘘だと思いました」


キスを終え、見つめあっているとリリがそう聞いてくる。


「まぁ、恋愛なんて今まで忙し過ぎてあまりできなくてな」


俺の進学した高校は進学校だから毎日課題を終えるだけで精いっぱいだった。

中学は一度校舎裏にラブレターで呼び出され、そこで期待して待っていたらダチの仕掛けたドッキリだった。

その後、シバイてはやったがな。


「そ、そうですか」

リリは額に汗を浮かべながらあいまいに答えた。


「でも、私もあと少しなんですよ」

「何が」

「優斗さんを喜ばせることができるのが。それにキスもしてもらいましたから頑張ります」

「?まぁ、分からんが頑張れよ。俺ももうひと頑張りするか」


よく分からなかったが、本人が余計に気合が入っているようだった。

俺もリアとユキが出るまで勉強をもうひと頑張りした。



リリとの勉強が終わったので明日の朝食兼ギルドへのお菓子兼リアたちとユキのためのお菓子作りの仕込みをした。

あれ、おかしくね。

朝食よりもお菓子作っている方にだいぶ作る時間かかるんだけど。


「本当に手際がいいね」


リアが風呂から上がり、明日のためにチョコレートケーキ、レアチーズケーキ、ロールケーキを作っている俺に声をかける。


「まぁな。これを極めさせられたと言っても過言じゃないからな」


我が家は父が若いころ死んでしまい、母子家庭のためケーキなどの贅沢な物を買ってもらえることが少なかった。そのため、家計的にもケーキを作れば、買ってくるよりもずっと安くなるのではと幼い俺は考え、お菓子作りに勤しんだ。

結果、店で売っているものとそん色ない物を作れるようになった。

これらの過程をリアに説明してやる。


「お店の物とそん色ないって。私は食べ比べができないから何も言えないけど、たぶんお店の物よりもおいしいと思うよ」

「そうかぁ、あんまり見た目が良くないのもできてしまうのだが」


リアに言われて少し昔を思い出す。

母から「もう、ゆうちゃんのケーキを食べたらお店の物食べられないわ」と言っていたがきっと子供のやる気を上げる方便だったのだろう。


「女の子的には自分よりも料理がうまい男の子のご飯ってなんか複雑だな」

「そうは言うがお菓子なら負けるかもしれないがリアの手料理、俺は好きだぞ」

リアの料理は見た目があまり良くないが、俺は結構気に入っている。

「そう?」

「ああ」


そろそろ本題に入るか。


「リア、本当に俺と組んでいいのか?リアのジョブなら他の高ランクパーティーにも入れるんだぞ」


リアのジョブは『魔術師』。母親の『宮廷魔術師』の下のジョブだ。


「いいの。それに今でも優斗君を支えたいし、助けたいって思っているんだよ」


少女の墓の前にいると未だにあの時の後悔が強くなると同時に今自分がリアやリリ、それにユキに支えてもらっている状況に強い罪悪感を抱く。

それだけではなく、自分がこうして恵まれていることに対して後ろめたさと自身への嫌悪感も日に日に増していくのが分かる。

リアはそんな俺の気持ちを感じ取ったのか


「私はあなたが好きです」


あの時言ってくれたことをまた言ってくれる。


「本当に物好きだな。こんな妹にも手を出すような奴なのに」

「そ、それは、ちょっと、やめてほしいな。優斗君には私だけをできれば見ていてほしいというかなんというか」


なんとなく愛おしくなって軽く水で洗って手をふくとリアを抱き寄せる。


「キスしていいか」

「えっと、そう、だよね。恋人だしね」


リアが目を閉じるのでキスをする。

そういえばリアとキスをするのは初めてだな。


「私のファーストキスどう?」


キスを終えるとそう尋ねてくる。


「ファーストキスだったのか?」

「そうだよ。優斗君は?」

「サーティキスだな」

「誰!?誰にファーストキスあげたの!?」

「リリ」

「リリ―!」


リアが叫ぶ。

リリとは告白を受けた初日にキスをされた。

それからほぼ毎日キスをねだるし、俺も悪い気分にはならないので受け入れている。


「だが、ようやくリアとキスできて少しうれしく思っている」

「う、うん。私も優斗君とようやくキスできて嬉しいよ」


やっぱり俺はこの姉妹にはかなわないなと思ってしまう。

その後ユキがやってきて、良いムードを壊したが色々と騒がしく過ごしながら今日もまた終わっていった。


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