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ユキ

夜、俺の部屋に幼女が来た。


「どうした?」


幼女が枕を抱えたままこっちを見ている。

俺が近づき、幼女の目線に合うようにしゃがむと腕の裾を握って引っ張てくる。


「何かあったのか?」

「さみしい」


子供だしな。


「少し話でもするか?」

「うん」


幼女を部屋に入れてたわいもない話をする。

今日の夕飯何が一番おいしかったとか、お菓子が食べたいならどういうのが食べたいとか聞く。

案の定、ゼリーが一番おいしかったと答える。


「そろそろ寝るか」

「……」

幼女は黙ってうつむく。


「どうして」

幼女がつぶやく。


「どうしてそんなにわたしにやさしくするの?ちからもほしいわけじゃないのに」


幼女は声を上げる。

確かに力が欲しいわけでもないのに優しくするっていうのはこの子の中では考えられないんだろうな。


「俺が君に優しくしたいからだよ」


俺は自分がなぜ彼女に優しくしたいのか考えると答えは案外簡単だった。

それが分かったため、できる限り優しく俺は答える。

幼女はひどく狼狽しながら


「だって、そんなのおかしい。にんげんはみんなやさしくするかわりにわたしをむりやりはたらかせたり、できないといじめたりしてきた。なのに、あなたはわたしになにもおねがいしない。そんなのへん」


きっと今まで会ってきた奴らはこの子に無茶なことをさせてきたのだろう。

結果として、最後は人間に剣の中に封印された。

何とも言えないな。


「俺はね、この子に優しくしてあげたいって思うのが優しさだと思う。力が欲しくて優しくするというのは優しさとは言わないし、そんなのはもらったって全然嬉しくない」


この子を見ていると、まるでちょっと前の自分を見ているようだった。

それが俺がこの子に優しくしたい理由だ。

リアやリリに苦しみを理解してもらったおかげかどうかは分からないが、俺は少しだけ心に余裕ができた。

今のこの子はあの時の俺と同じ、いつ壊れるか分からなくなっているのだと思う。

だからこそ、この子に優しくしたいと思った。

俺は優しく幼女の髪を撫でるとその小さな体を抱き寄せ、抱擁した。


「君はきっと今までつらいことがあったんだろう。そのつらさがどれほどのものか俺には想像できない。けれど、俺は君がそんなつらいことを抱え込んでまで頼むつもりはない。つらいなら苦しいなら少しくらいは出したって良いと思うぞ。愚痴が言いたいならつきやってもやる。その時はお前の大好物なお菓子を作ってやる。だから――


俺は一呼吸置くと


もう頑張らなくていい」


一生懸命、この小さな体で奮闘してきたんだ。

だったらもう休んでもいいんじゃないか

俺の言葉に顔を上げて俺を見る。


「わたし、もうがんばらなくていいの?」

「ああ」

「がんばった?」

「頑張ったよ」

「うっ、ううっ、うわあああああああん」


幼女も今までため込んでいたものがあふれたのか泣き出してしまう。

そのまま俺の胸に顔を埋める。

案外、泣き虫なんだな。

卵粥食べた時も泣いていたし。


リアやリリが俺の部屋に来たが、事情を察したのか何も言わずに立ち去って行ってくれた。


俺は泣き止むまで幼女の綺麗な白銀の髪を撫で続けた。



泣き止むと、顔を上げて俺を見る。

まだ、目が赤いな。


「ねむい」

「そうか、なら自分の部屋で寝ろよ」


ふるふると首を振る。


「いっしょにねたい」

「駄目だ」

「わたし、がんばった」


思わずため息が出てしまった。

俺が言ったことだし今日くらいは甘やかしてやるか。


「明日はちゃんと自分のベッドで寝ろよ」

「わかった」


渋々という感じに頷く。

幼女がベッドに入ってから俺も入る。


「あったかい」

「そりゃ良かったな」


幼女の頭を撫でているとそのまますぐに寝てしまった。

俺も寝よう。

すると幼女が俺に抱きつく。

俺は抱き枕かよと思いながら俺の意識も落ちていった。


翌日の朝

この幼女、起きてから俺のことをマスターと呼ぶようになった。

朝食を作っていても離れない。


「おい、離れろ」

「やだ、ますたーといっしょにいるー」

「俺はマスターじゃない」

「なら、なんなのー」

「栗原優斗だ」

「ゆうとをわたしのますたーにするー」


呼び捨てかよ。


「だいたい、俺の名前よりお前の名前はなんなんだよ」

「わたしー?ないよー」

「ないってお前、じゃあなんて呼ばれていたんだ」

「せいれいさまだったり、ばけものってよばれてたー」


バケモノって何とも言えない。


「だから、ますたーがなまえつけてー」

「なんで俺がつけなきゃいけないんだよ」


近くの野良猫にだって名前なんて付けたことないのに。


「ますたーにつけてほしい」


そんな頼み込むように見てくんなよ。

はぁあ~、面倒だがつけるか。

ふと幼女の白銀の髪が目に付く。

そうだな。


「『ユキ』はどうだ?」


降り積もった雪の様子を白銀のようだとも言うしな。


「うん、すごく良い」


こうして幼女の名前はユキになった。

これが俺と精霊ユキとの出会いだ。


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