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感知

俺はバークレーを拠点にギルドへ通うようになった。

冒険者ランクがEになったため、フェルミナからコボルト討伐を薦められた。

コボルトは普通のゴブリンより少し強い程度でキングゴブリンが倒せるならと十分大丈夫じゃないかということで受けることにした。

確かに、コボルトは城下町近郊の廃鉱山に住み、若干動きが速いが、レベルアップにより技能スキルの『加速』『ミュート』が上がった俺なら何とか倒せた。


リアたちとも少し進展があった。

リアは高等魔法学院を卒業したら俺とパーティーが組みたいと言ってきた。

最初は断ったが、あんまりにもしつこいので折れてしまった。

ただ、これで魔物を探す課題はなんとかなった。

今まで魔物を探すだけで一苦労していたからな。

リアは現状中位魔法までならすべて使える。

本当は上位魔法も使えるのだが、レベルが低いため発動するためのMPが足りないため使えない。

ゆえにリアとパーティーを組むならリアのレベルを上げることも必要になる。


リリはずるい、抜け駆けだと言っていたが高等魔法学院への進学も決まっているのだから仕方ないと言って聞かせた。

だったらこっちにも考えがあると言って母親を連れてここ最近どこかへ行くのであまり見かけなくなった。


母親は魔法使いの最高峰のジョブ『宮廷魔術師』を持っているので金を払うから魔法を教えてくれと頼んだが


「ごめんねぇ~、教えてあげたいけれど、栗原ちゃんは魔法の素質がないのよ~」


と言われ心が折れそうになった。

結局、自分で剣の腕を上げるしかないのかよ。

というか『裁定者』の唯一の取柄である魔法が使えないとか終わっただろ。


変態はリアとリリが俺のことを好いているのが分かったのか最近はずっと目の敵にしているが、俺に手を出すと母親が制裁を与えるので殺したくても殺せないという。

ヤツも俺と同様にギルドへ行って『魔獣』討伐をしている。


ギルドでもある日、フェルミナにクッキーを持っていくと


「あなたがクリハラ君?」


知らない女性から声をかけられるた。


「そうだが」

「私はキャシー・モーガンよろしくね」

「ああ、よろしく」

「クリハラさん、こんなこと頼むのも申し訳ないのですがクッキーをもう少し多くもらってもいいでしょうか。もちろん、お金は払いますから」


フェルミナはそう言うと申し訳なさそうにする。


「実はクリハラさんから頂いたクッキーが同僚の受付嬢に好評でして、もしよろしいのならもっといただけないでしょうか」

「あなたのお菓子とっても美味しくて近くの店のお菓子よりも良いものだったわ」


キャシー何某はそう言うと周りの受付嬢たちも何度も頷いている。


「別に材料費を払ってくれるなら構わない。ここ最近毎日作らされているからな」


リアとリリ、それに母親は俺の料理もおいしいが、デザートは格別においしいということで毎日ねだってくる。

作るのが面倒というと、宿泊費も食費も持つし、ケガをしたら母親がタダで治療するからという条件で了承した。


「本当ですか?」

「ああ」


後ろの受付嬢やキャシー何某が色めき立つ。


「だが、クッキーは日持ちするがたくさん作ると面倒になるから次からはケーキを作ってくる」

「ケーキなんて作れるんですか?」


異世界ではあるが、材料は基本的に俺の世界の物と同じなので、作ることは可能だ。

それにリアとデートした時に分かったのだが、この世界には簡単なケーキと飴くらいしかお菓子らしいお菓子はない。

ヨーグルトはあるが、あれはお菓子か?

まぁ、あとはそのまま果実を直で食べるくらいだ。

挙句、ケーキは蒸しパンみたいなものですごく高い。

正直あれはケーキじゃない。

火加減が難しいからうまく作れないのだろうけど。


「ああ。だが、君たちが知っているケーキとは違うケーキを作ってくる。俺の地元に伝わるケーキだ。たぶん、こっちのよりはおいしいと思う」


そうして新たな日課としてギルドにケーキを渡すことも増えた。

リアやリリに好評だったチーズケーキ、母親に好評なフルーツタルトなどを届けるとそれはもう好評だった。


毎日最後に少女の墓に行くことは忘れない。


時々リアやリリが付いてくることがあったが、基本的にいつも一人で行った。

その日の出来事や俺自身の家族のことなどを話し、墓をきれいにし、花をたむけると帰る。

どんなに他の誰かと話していてもここに来ているときの方が落ち着いていられるような気がした。


それから1ヶ月近く狩り続けたところでレベルが40となり、技能スキル『感知』が出た。

『感知』は感知魔法と違い個人によって感知できるものが違うという。

俺の『感知』は精霊を感知することができるというが精霊は滅多にいないうえ、感知できてもあまり意味がなかった。


「おかえりなさ~い」


俺が『感知』を習得して昼にバークレーに食事のため戻ってくると母親がいた。

因みに姉妹は魔法学校にいる。

最近は昼食も自分で作ることにしている。

安上がりなうえ、リアが俺とパーティーを組んでくれるというのだからその費用も貯めるためにも自炊する。

ついでに母親の飯(後で金は取るが)も作りながらコボルトの弱点や性質などを尋ねながらこの先の魔物の弱点を聞いていく。

魔法も使えず剣のスキルもない俺が勝つには情報で勝っていくしかない。

そのために食事を取りながら話をしていく。


「栗原ちゃんは今どんなスキルを持っているの~?」

「技能スキルは『加速』『ミュート』『感知』、固有スキルは『解放』を持っている」

「なら~、試しにそれを全部発動してみて~。あまり使い道のないスキルでも発動するしないではステータスが大きく変わるのよ~。全部発動した状態がステータスの上昇の最高値だからそれを覚えて、それで相手の力量を判断すると良いわ~」

「分かった」


俺は技能スキルをすべて発動させ、固有スキルも発動させる。


「『我、裁定者がすべからく判断すべき誠の事柄よ。その偽りなき姿を見せよ『解放』」


固有スキルは発動するのに長い祝詞を必要とし、祝詞は意識を集中すると頭の中に浮かんでくる。

だから、そのフレーズをただ口に出せばいいが意識を集中するので戦闘では必ず前衛を必要とする。

あのクソ王子が俺に見せたあれもおそらくは祝詞だ。

俺も冒険を始める時にパーティーに参加しようとしたり、仲間を集めたりしたが裁定者は弱いし、固有スキルも使い道もないからいらないと言われ続けていた。

今思い出しても腹が立つ。

実際俺は魔法にも適正がないと分かった今、誰も俺を入れる気はないだろう。


「どうかしら~、どれくらいステータスは上がった?」

「今までよりも1割くらい上がったな」

「1割くらいか~、普通は2割くらい上がるんだけどね~」

「……」


何も言えなくなってしまった。

ため息をつきながらどうやって戦うか考える。


「……けて」


ふと何か声が聞こえた。


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