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砦攻防戦

竜人族達と合流するとすぐに進軍を開始した。

竜人族達の軍は数が少ないが、半分は龍神と共にポルヴォー帝国を攻めさせ、もう半分はアルベルトの指示の元、俺と共に行動している。

ちなみにポルヴォー帝国を生かすも殺すも龍神に任せてある。


加山、渚はそれぞれの民族地域に戻らせ、竜人族との三民族同盟を結ばせた。

三民族同盟は戦争時の相互防衛、相互援助を締結した内容になっている。

これで進軍中の物資の供給も十分となる。


今回の戦いはあくまで表向きは竜人族と人族の戦争という形にしてある。

竜人族にとって英雄である俺をビザスティン帝国の王子が迫害し、命を奪おうとした。

これは我らに対する挑戦であるとして、俺を守るためという大義名分のもとビザスティン帝国とそれに協力する同盟国に宣戦布告をした。


まぁ、教皇はあの時の放送から世界に向けて真の敵の存在を語ったり、俺を新たな勇者であると何度も言っているようだが、あまり影響はないみたいだ。

逆に俺の放送を聞き、クソ王子は俺を悪魔と罵って自分に協力するように即座に放送した。

これがなぜか人族領域には受けが良いようでクソ王子派の国々に協力する国が増えた。

掃除が大変だなぁ~


そして加山、渚たちには余分な人族の兵力が過度に俺達に向かないように人族領域国境に軍を用意させた。

これによって、国境沿いの人族の国々は警戒のために兵を派遣するうえ、竜人族を恐れる国々は今回の俺とクソ王子の戦争に関して中立を宣言せざる終えなくなった。

ここまで準備をしておけば後は問題ない。

教皇との人族を救うという約束も果たした。


そして、出発してすぐに俺はセルディア砦という砦の前に着いた。


「このセルディア砦は砦が一つの国になっている珍しい国で、世界では五本の指に入るほど屈強な砦として有名です。この砦の中を進めば、ビザスティン帝国に最も早くつくのですが………」


アルベルトに説明を受けながら、砦の見取り図を見ているとアルベルトが説明を途中でやめてしまう。


「どうした?」

「いえ、その、この国はつい先日ビザスティン帝国に共鳴して栗原殿を殺害すると警告してきたのです」

「なるほどな、なら話は早い。潰そう」

「しかし、中には私達の同胞もいて……戦闘は避けたいのです」


そうなると少し手を打たないとな……


「アルベルト、降伏勧告を出せ。そしてついちょっと前に生捕りにしたあの国の兵達と交換で砦の中の竜人族を回収できるか?」

「それならすぐにできるでしょう。あの国から捕虜交換の打診がありましたから。しかし、良いのですか?あの国も先日の奇襲攻撃の時に捕まえた捕虜をこんな簡単に返して?」


実は進軍してすぐに俺達は奇襲されたが、微精霊達の危険察知能力とリアの感知魔法の前に勝てる者などいない。


「ああ、構わない。それよりも降伏勧告は念入りにしろ。開城すれば、保護の約束もすると伝えろ」

「分かりました」


クソ王子、よりにもよって自分に従うと誓った国々が俺に降伏してはいけないと御触れを出し、降伏した場合クソ王子が直々にその国を成敗しに行くと発信した。

多くの国々はそんなことはないと即座に反応したらしいが、とりあえず今後の動きにも俺の影響を与えるため、念入りに何度も降伏勧告を出した。

俺の軍門に下れば、クソ王子から守ることも伝え、仮に再びクソ王子に占領されても成敗はしないと伝える。


「優斗君、どうしてそんなに念入りに降伏勧告を出すの?たぶん、あの砦の中の人達は絶対に降伏しないと思うけど」

「それはこの戦争を早期に終わらせるためには必要なんだ。俺はこの戦争を5日で片付ける」

「5日!?そんなの普通にほとんど戦闘もなく、進軍しないと無理だよ!」

「大丈夫だ。戦いはこの砦とビザスティン帝国内だけしかないからな」

「どういうこと?」

「それは見ていれば分かる」


その後、捕虜交換はすんなりといき、砦内の竜人族を回収し中に残ったのは人族だけとなった。


「我は悪魔に屈しない!」


砦の中の王がそう言い、俺と本格的に争うと宣戦布告した。


「よし、これでようやくやれる。お前らはなにもするなよ。ここは俺に任せろ」


俺がそう言うとみんなは首をかしげる。

俺はユキのもとに行くと耳打ちをする。


「え、そんなことでいいのー?もっとすごいことできるけど?」

「それでいい。ユキ、頑張ってくれるか?」

「うん、いいよ!そのかわり、おわったらますたーのおかしいっぱいたべたい」

「良いだろう!腹一杯になるまで食べさせてやる!」

「ほんとう!?ますたー、だいすき!」

「俺もユキがやってくれたら大好きになるぞ」

「それほんとう!?よーし、がんばるぞー!」


ユキをおだてて全員にできる限り砦から離れるように伝える。

ユキはなぜか菓子をたくさんあげたときよりも妙にやる気を出しているように見える。

そんなにうれしいことがあったのか?

ユキが光輝くと大きな白い虎が再び現れた。

あの時、以来だな。


「ユキちゃんは優斗君の『雷神』が無くてもその姿になれるの?」

「私達は最後の神獣の力さえ、解放されればあのように神獣化するのは自由にできるようになります。ただ、あの姿で力を最大限引き出すにはそれこそ契約者の詠唱が必要です。まぁ、契約者が居なくなってもあの姿にはなることはできますが、力は半減しますし重症を負えば再び『雷神』『水神』などを唱えてもらわなければ神獣化できません」

「そうなんだ」


意外と契約者の存在は重要だったんだな。

ユキは神獣化すると砦に向かって突っ込んでいく。

砦の兵達がユキに魔法を放っていくがまるで効かない。

まぁ、魔王すら倒したユキに魔法が敵うわけもないがな。

そうしてユキは砦を正面から突破すると大穴が開く。


「そんな…………我が国の砦が……」

「おお……神よ、我々をお見捨てになるのか」


などと言いながら恐怖に襲われるもの


「打て!打つんだ!あの悪魔に屈してはいけない!」


とユキに向かって魔法を必死に放つものなど様々だ。

ユキは突破した砦にできた大穴をさらに広げるように砦の壁をさらに破壊していく。

あの砦は町の周囲を円上に囲んでおり、その砦を3分の1ほど破壊し終わったところで、いったんユキが戻ってくる。


「ますたー」

「ユキ、よくやった」

「えらいー?」

「偉い偉い」


ユキの頭を撫でながら再度アルベルトに降伏勧告を出すように言い、進軍を再開する。

すでに砦はボロボロ、いくら屈強な砦といえど無ければ意味はない。

竜人族と人族が正々堂々戦えば、竜人族に敗北はない。

ユキにはもう一度神獣化してもらい、俺達の隣を歩いてもらう。

町の中心には城があり、そこを落とせばいいのだが、向かっている最中、必死に兵が俺達に戦いを挑んでくる。


「なんて無駄なことを……すでに勝敗は決まっているのに」

「本当ですね。私の前でご主人様を攻撃するなんて死にたいんですかね?」


兵達の攻撃は全てベリルの精霊魔法の前では無意味であり、後はリア達や竜人族が遠くから魔法や龍神法で蹴散らしていく。


「なんだか私達の想像していた戦いとは大きく違うような気がするのですが……」

「当たり前だ。言っただろ、最初からクソ王子に勝利はない。アイツは死ぬしか選択肢がない」


アルベルトに注意しつつ、辺りを見渡す。

兵達の死屍累々が広がり、町の一般住民は進軍してきた俺達によって逃げ惑うもの、兵達と一緒に攻撃に加わる者など様々だ。

尚、壊した砦はベリルの『氷壁』で覆っている。

そして城に着くと城壁を破壊、城内の兵を皆殺しにして微精霊達から教えてもらった王の逃走経路を全て準精霊達に破壊させた。

そして今俺の前にはこの砦の王が縛り上げられて地面に転がされている。


「いい加減、降伏しろ。今ならまだ間に合う」

「悪魔がふざけるな!我々はお前に屈したりしない!」

「これ以上の戦いは不要というのが分からないのか?俺はクソ王子とは違う。降伏して俺に従えば悪いようにはしないし、クソ王子が制定したバカな法からも守ってやる」

「ブロウ皇太子殿下を貶すとは!悪魔め!そのような虚言に私は騙されないし、我が国は砦が無くても屈強な兵士達が多くいる!貴様の首がはねられるのも時間の問題だ!」


ため息をついてしまう。

ここまで追い込んでもまだ勝てると思っているのが逆に凄い。


「優斗君、このままじゃ埒が空かないよ。この人達、死ぬ気で優斗君を殺そうとする」

「栗原殿、我らもナタリア殿と同じ意見です。すでに城外の兵達が城壁近くに集まりつつあります」

「仕方がないか……これをする前に降伏して欲しかったんだけどな……」


俺はこの砦全体に伝わるように水晶を使って放送の準備をする。


「あー、あー、マイクのテスト中」

「優斗君?何をするの?」

「まぁ、見てろ」


リア達は俺が何をするのか不思議そうに見ていたが、ユキを見た瞬間顔が青くなっていく。


「♡♡♡♡♡」


ユキの俺に向ける視線がいつもよりもキラキラし、何か別の感情も飛んでいるような気がする。


「まさか……これは……」

「考えるうえで最もあれな……」

「流石ですご主人様!私、ご主人様に憧れてしまいます!」


リア達が全力で俺を誉める?

俺も放送を始める。


「これから10分後に掃討作戦を開始する。ただし、何度も言ったように降伏を受け入れる者に攻撃はしない。よってこの国で降伏を受け入れるものはユグドラシル教会に逃げ込め。そこには攻撃はしない」


10分待ち、ユグドラシル教会に前もって密かに向かわせていたルルに妖精魔法による結界を張らせた。

思ったよりも教会の中には人数がいなかった。

仕方ない、最低限の譲歩はした。


「ユキ、最後の仕事だ。ってくれ。女子供にも容赦はするな、ここでの戦いが今後の動きに大きく影響するからな」

「うん!わかったー!」

「本当に分かっているのか?きちんとやれるのか?」

「できるよー!ベリルからおしえてもらったけど、にんげんはころしつくさなきゃ、まなばないっていってたもん!それににんげんをころさなきゃ、ますたーがころされちゃうならころすもん!」

「良い子だ、ユキ」


流石、ベリルの教育、素晴らしい!


「ちょっとベリルさん!ユキちゃんになんてこと教えているんですか!」

「いやー、ユキちゃんまるで乾いたスポンジみたいにいっぱい覚えてくれるからつい……てへぺろ」


リリとベリルの会話を聞きながらユキに命ずる。


「ユキ!敵を蹂躙しろ!」

「わかったー!」


そしてその日のうちにセルディア砦は砦とユグドラシル教会を残して壊滅した。

兵舎、民家、豪邸を等しく尽く破壊しつくし、教会の中に居た人間以外は全て殺し尽くした。

ユキの精霊魔法の前には死体も残らず消え去った。


「そ、そんな……バカな……私の国が……」


全てが終わった後、王を解放した。

王であった者は放心したまま瓦礫の中を歩き続けていた。

これはもう駄目だな……

心が壊れている。


「さて、中継していたな」

「は、はい」


これは映像水晶で世界に放送しておいた。

俺の力を見せるためにも、クソ王子と戦うためにも。


「これから俺たちは進軍を再開する。俺の目的はクソ王子を殺すことただ1つだ。それを邪魔する者はいかなる手段をもっていても排除する。ただ、俺に協力する者、俺の目的の邪魔をしないというなら決して手を出しはしない。無関心の者にも手出ししない。これを踏まえたうえで行動しろ。降伏した結果、クソ王子の作った法律で殺される危険があるなら俺が保護を約束しよう。選択はお前らに任せる。以上だ」


映像水晶を切るように伝えて放送を終了する。

これでこれから進軍する場所は降伏してくれるだろう。

間違っても無駄な戦いをするわけにはいかない。


「ご主人様、見事な手腕です」


リア達の元に戻ろうとするとベリルがやって来た。


「てっきり罵られるかと思ったが……」

「ここで徹底的に叩きのめすことで世界にご主人様が勇者様であることを植付け、今後の戦いで犠牲になる人数を減らすうえでは重要です。故に今回のは必要でした」

「とは言ってもやはり虐殺だ。クソ王子とやっていることは何ら変わらない」


今回の目的はこの国を徹底的に破壊し、今後の進軍で通過する国が戦わずして降伏してくれることを期待したものだ。

今回の犠牲でこのあと多くの国々と人々が救われるなら仕方がないと自分の判断で動いた。

だが、本当に良かったのだろうかと未だに思う。

破壊している最中、何度も許しを城外から乞われたがそれを尽く無視した。

俺が攻撃しないのは教会だけだと言っていた。

そして残ったのは教会関係者と数百人の住民だけだった。

リアとリリは途中から気持ち悪くなってしまい、最後まで見ていない。

けれど、俺を止めはしなかった。

それはきっと自分達も今回の犠牲は必要だと思っているし、加担している自覚があったからだと思う。


「いいえ、あの男とは違います。この国は敵国の連合の中でも人口が少ない。故に潰すならこの国が最良ということでしょう。ご主人様、少し良いですか?」

「なんだ?」

「後悔はいけません。後悔をしたらそれこそ犠牲になった仲間達に失礼です」

「今回の俺達の損害はゼロだろ?」

「今後の戦いでは必ず出てきます。そのときに自らの判断を後悔をすることは散っていった仲間達に失礼です。判断を反省することは大切ですが、後悔は決してよくありません」


ベリルに言われると重みが違う。

そうだな。

後悔は良くない。

俺もベリルのことを知らない間ずっと後悔しっぱなしだった。


「……ありがとうな。その通りだ」

「いえ、私達はご主人様の本当の価値を知っています。ご主人様となら私達は共に地獄まで付き合います」


そして俺たちは二人でリア達と軍の所へ戻っていく。

もはや地獄への片道切符は切られた。

だが、不思議とさっきまでの嫌な気分は晴れた。

たぶん、吹っ切れたんだろう。

尚、帰ってくると竜人族強硬派から王と崇められた。

何でも俺が憎き人族を駆逐する王ではないかと思われたらしい。

使徒、勇者、王、悪魔と一気にジョブの春が来たな。

笑えないけど。

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