日常①
ナタリア、リリアナの二人と自己紹介を終えるとナタリア達に風呂を薦められたので入った。
3日ぶりに風呂に入ってすっきりした。
風呂から上がると質問攻めにあった。
一度、異世界から来たと伝えた際に勇者ことについて聞かれた勇者関連は軽く話す程度にした。
あんなクソ王子を信頼する勇者共のことなんてむかつくことこの上ないが、どうにかイラつくのを抑える。
ナタリアからは勇者と知り合いなのかと聞かれたので知り合いとだけ伝える。
2人についてや両親も聞いてみた。
ナタリアは高等魔法学院、リリアナは城下町にある魔法学校に通っており、2ヶ月後ナタリアは卒業、リリアナは高等魔法学院への進学予定という。
両親は元凄腕冒険者で国に実力を認められるほどすごい人物だそうだ。
母親はともかく変態はなぁ~想像がつかん。
この世界について聞いてみた。
この世界の一年は360日程度で、今の季節は夏にあたる。
成人すると長男長女は家を継ぎ、それ以外は冒険者や下働きになるのが一般。
因みにこの世界の成人年齢は16歳である
ただ、ギルドや教会、王城、貴族で働く者もいる。ギルドの受付嬢もその一つである。
多くはそういうところで働くことで異性との出会うためだと。
ただし、長男長女でも家が貧乏であったりステータス得るために冒険者として活躍する者もいる。
冒険者となり活躍すると国から爵位を貰うこともあるという。
ただ、そういう者はほとんどおらず、特に男性冒険者は多くが途中で死ぬためこの国を含め世界中の多くの国が重婚を認めている。
差別はないというが、それは表面上だ。
「なるほど、俺はそういうのは全く知らないから助かる」
ナタリア「別にそれはいいけど、栗原君は異世界から来たのよね?」
「ああ」
リリアナ「栗原さんの世界はどんなところなんですか」
「俺の世界か、なんとも説明に困るな。この世界と比べると戦うとかそういうことはなかった。ただ、毎日仕事と戦う社畜がいる世界だな。俺は進学して大学に通っていたから社畜ではなかったがアルバイトと勉強が忙しかったな」
ナタリア「社畜って。それよりもアルバイト?」
リリアナ「大学?」
社畜はこの世界にもいるのか。
「大学はそうだなこの世界で言うところの魔法学校の延長線みたいなところだ。アルバイトは日雇い労働者みたいなやつだな」
リリアナ「それって魔法大学校ですか?」
「なにそれ?」
ナタリア「簡単に言えば魔法研究の総本山みたいな場所かな。高等魔法学院で一握りの人間しかいけない場所だよ」
「そんなたいそうな場所じゃないな。そうだな、俺が学んでいたのは魔法を使わないで人に役立つものを作ることを教わっていたな」
リリアナ「魔法を使わないでそんなことできるのですか?」
「できる。知りたいなら、俺が覚えている範囲でなら教えてやれる」
リリアナ「なら、後でぜひ教えてください」
ナタリア「むー。私にも教えて」
「別に構わんが」
ナタリアとリリアナが見つめ合うと火花が散っている気がする。
ナタリア「リリ、あなた今まで色恋に関して全く興味がなかったじゃない」
リリアナ「それはお姉ちゃんでしょ。私は別に興味はあったけど私の周りの男は子どもみたいで嫌だっただけよ」
まぁ、ケンカするほど仲が良いってことか。少し羨ましい。
俺も妹とケンカしたのっていつだろう。
かなり昔にしたことしか覚えてないな。
なんとなく微笑ましいものが見れた気がする。
ナタリア「なんか、すごく優しい目で見られていて嫌なんだけど」
リリアナ「うぅ~、栗原さんから見ると私って子供?」
「なに言っているんだ、二人ともまだ子供だろ」
ナタリア「私はもうすぐ18よ」
リリアナ「私だってもう16です」
「子供じゃないか、俺の地元では大人は20からだ」
3人で騒いでいると確かリネットだったか母親が帰ってきた。
手が赤いがきっとトマトでも握りつぶしたのだろう。
「あらあら~、二人とも彼とだいぶ仲良くなったのねぇ~」
「今さらだが、栗原優斗だ。傷を治してくれて助かった」
「リネット=バインズです~。きちんとしつけておいたから安心してね~」
「当然だ」
「うふふ~」
俺たちの様子をナタリアとリリアナが微妙な顔つきで見ている。
「今日はもう泊まるんでしょう~。外もだいぶ日が落ちているし~」
「そうだな、今日はこのままここで休ませてもらう」
「なら~、今度こそ優斗君に私の手料理食べて貰わないと~」
「「!?!?」」
ナタリア、リリアナに衝撃が走っているみたいだが
「すまないが、今日は俺に料理をさせてくれないか。あんたにわざわざ治療して貰ったんだ。治療院なら
銀貨50枚は取られるところだったしな。その礼だと思ってくれ」
「そんなの気にしなくて良いのに~」
「お母さん、今日はやめよう。栗原君が作ってくれるって言うし」
「そうだよ。栗原さんに頼もう」
なんか察することができた。この母親は料理ができない、もしくはすごくまずいのか。
ナタリアが俺に耳打ちする。
「栗原君は料理できるの?」
「人並みには。ただ、材料は勝手に使うがいいか?もちろん自分の分の食費はあと出払う」
「う、うん。」
ナタリア「何これ!?すっごく美味しいんだけど」
リリアナ「こんなに美味しいご飯始めてかも知れません」
母親「おいしいわ~、リアちゃんの料理もおいしいけどここまでおいしいものを食べたのは何年振りかしら~」
変態「俺は認めないからな」
変態は戻ってきたが相変わらずうるさい。
「そこまでうまいか?」
ナタリアなんか感動して涙まで流しているし。この世界には火鉱石と言うのがあり、その鉱石を釜戸に入れその量で火加減を調節する。最初、料理するときは火の調節に戸惑った。
ナタリア「幸せ」
リリアナ「感動です」
「まぁ、喜んでくれるならそれに越したことはないが」
食事が終わりリビングでくつろぐ2人に作っておいたクッキーを渡す。
ナタリア「これは何?」
リリアナ「なんか固いですが」
「この世界にはないのか?クッキーを作ったんだが」
二人とも首をかしげる。
「まぁ、お菓子だよ。食べられないなら食べなくていい。日持ちする物だからな」
ナタリア「お菓子!?でも、これ以上食べると太るかも」
リリアナ「栗原さんは太った子は嫌いですか」
二人が見上げてくるがすっとだれかの手がのびるとクッキーを取る。母親だった。
「あら~、なら私もらうわね~。わぁ~、とてもおいしいわ」
「そうか、それは良かった」
「だれかへの贈り物~?」
「そうだな。ここを紹介してくれたギルドの子に渡すものだ。これはちょっと形が悪いやつでな」
「ギルドの子って女の子~?」
ナタリア、リリアナがピクンと反応する。
「そうだが。ギルドの受付嬢だしな」
「あら~、頑張ってね~」
「頑張る?何を。クッキー渡すだけだぞ」
「じゃあね~、あとこれだけくれる~?」
そう言うと皿にあったクッキーを半分ほど持っていく。
ナタリア「ライバル増えそう」
リリアナ「お姉ちゃん、共闘も考えておこう。クッキー食べよう。日持ちするからってこのまま残すとママに全部食べられるかも」
ナタリア「そうだね」
妙にテンションが低いがクッキーを食べたら元気になっていた。
この様子なら十分のできだな。