仲間集め①
ジョブが変更になりました。
裁定者から裁定の使徒になりました。
神獣の欠片を所持しています。
頭に音声が流れたのでギルドカードを確認して確かめる。
「確かに変わってる」
固有スキルが一掃され、新たな固有スキルが使えるようになっていた。
これが使徒の資格の剥奪スキルか……
「これでまた一からレベル上げか……めんどくさいな」
「それには心配及びません。使徒は元々この世界でのステータスのほとんどを無視しているのでレベル上げ自体が意味がありません」
「それはまたなんで?」
俺がふと根本的な問題に悩んでいるとベリルが言う。
ジョブ変更になるとレベルが1に戻ってしまうからだ。
まぁ、俺のレベルは?になっているから分からないけど。
「この世界のステータスは邪神によって作られたものです。なので、邪神を倒すために派遣された使徒達はその影響をほとんど受けない、もしくは受けても精々力が数パーセント上がる程度です。だからレベルを上げること自体、そもそもあまり意味がないのです」
「そうなのか」
ということはアイツらバカ勇者共は今まで本当に無駄なことをしていたのか……
なお、本来勇者に流れるはずのほとんどの経験値や技能スキルが勇者の仲間に流れるため勇者の仲間はレベルやステータスが上りやすいとの事だった。
「使徒の名は『裁定の使徒』か……神獣の使徒ではないんだな」
「神獣はあくまで『裁定の使徒』の守り手です。他の使徒と違い、『裁定の使徒』は攻撃スキルがありません。故に神獣が他の使徒から『裁定の使徒』を守ります」
なんか……ようやく俺の真の力を見せてやる!
これで俺強えええええができると思ったのに立場は今までと大差ないような気がする。
俺がベリルたちから守られているという立場から………………
「『鍵』も手に入れた。時間がない。早急に炎の精霊に会いに行くぞ」
「お待ちください。炎の精霊がどこにいるかご存じなのですか?」
「お前は知っているのか?」
「はい。彼女はエルフ領域に住んでおります。しかし、エルフ族は……」
教皇はそこまで言って黙る。
「おい、黙るな」
「すみません。彼女はエルフ領域から一歩も外へ出ていかないうえ、ここから向かうとなるとかなり時間がかかります。そうなれば、王子派に行く手を阻まれてしまうかと」
「厄介だな」
邪神復活まで時間がないというのにクソ王子に時間を取られては困る。
孔を治すのが先かクソ王子を殺すのが先か……
「よし、先にクソ王子を殺そう。ベリル、俺の孔の状態でいけるか?」
「たぶんそこまで大がかりな精霊魔法を使わなければ大丈夫だと思います。それに私の生命力でもまだ少し孔を塞ぐ余裕があります」
クソ王子を殺し、安全な状態で炎の精霊と会おう。
炎の精霊がどの程度の強さかも分からないうえ、話が素直に通じる相手なら良いが、そうでない場合に敵として対峙すると前にも後ろにも敵がいるのは避けたい。
「よし、ならすぐに行動する!教皇、王妃すぐに準備しろ!俺たちは竜人族と幻人族地域に飛ぶ。レイン、ルル対応は任せるぞ」
「どんと来い!」
「お、お任せください」
さぁ、楽しい戦争の時間だ。
待ってろよクソ王子、貴様をあの世に送ってやる。
まず手始めに竜人族地域に俺たちは向かった。
王妃と教皇が幻人族地域との国境沿いに王妃派、教皇直属の兵達を用意しておくことになっている。
たぶん裏切ることはないが、裏切った瞬間殺すだけだがな。
「俺が呼んでくるよ」
転移石で竜人族地域に飛んですぐにレインがアルベルト達を呼びに向かってくれる。
「栗原様、お久しぶりです」
「今回は何用で?」
アルベルトやレイン達を待っている間、他の竜人族の者達が次々と集まってくる。
竜人族のガキ共なんか俺にお菓子作りきたの?とか言って更に群がってくる。
というか、なぜその輪にユキまで入ってる?
お前にはいつも作ってやっているだろうが!
リア達も他の竜人族と世間話などを始める。
「あの世界最強と言われる竜人族がこんなに……す、凄いですわ」
その光景を見てリズリットは驚愕する。
まぁ、今の竜人族達は人族に強く忌避感があるからな。
俺たちとは例外的に仲良くしてくれるが、他の人族相手にはこうはならんだろう。
「栗原殿、お待たせいたしました」
そんなことを考えているとアルベルト達がやって来る。
「話がある」
「概要はレインから軽く聞きました。どうぞこちらへ」
アルベルトが立派な家に俺たちを招く。
後ろにはあの時の戦いで見た者達が多かった。
家の中で最も豪華な扉を開けて入ると中央の丸机の一番豪華な椅子に龍神がいた。
「久しいな主」
「お前も随分な待遇を受けているみたいだな」
「我はいいと言っているのだがな、他の者達がなかなか納得してくれなくてな」
久しぶりに見た龍神も相変わらずの様子だった。
「主は随分と調子が悪そうだな」
「分かるのか?」
「我も主の契約精霊。それが分からんようでは神獣の力を受けたものとして恥さらしだろう」
そう言いながら龍神はユキとベリルを見た後、ベリルに話しかけた。
「我を脅しておきながら自分の手で主を使徒にまでした気分はどうだ?」
「最高ですね。私の選んだ方は私との間に子供を作ってくれると約束してくれるほど、私を愛してくれているので。『鍵』を渡す前に使徒候補を殺された精霊よりはよっぽど幸せです」
「その物言い、貴様も相変わらずだな」
「そういうあなたもこんなところで油を売っているからいつまでたっても4大精霊の中で最弱と言われるんですよ」
ベリルは龍神を軽蔑の眼差しで見つめ返す。
龍神は大きくため息をつき、俺を見る。
「主よ何用でここに来たのか話すが良い。お菓子とやらを作りに来たのではないだろう?そのためにわざわざ指揮官達も呼んでおいた」
「それも分かるのか」
「主の表情を見ればな」
「ならば話は早い。お前達の力を借りたい」
俺は身に起きたことを伝えた。
敵には竜人族のかつての宿敵、ポルヴォー王国兵もいることを伝えると……
「龍神様、我らもぜひあの時の雪辱を果たしませんか!」
「そうです!龍神様、ぜひ我らに栗原様との共闘の許可を!」
俺が龍神を説得していると竜人族の幹部達も俺の側に回った。
「……。主よ、なぜ主は戦う?何のために戦う?」
「そんなのは分かりきっている」
その質問は今さらだ。
「俺は俺と俺の大切な人達のために戦う。世界のため?そんなのは俺には関係ない。本当の意味で世界を救いたければ自分達でどうにかしろ」
この先、邪神を無事倒したとしてもこの世界に平和が訪れるとは絶対に思えない。
奴隷制すら未だに残り、民族同士が互いに殺しあっていた歴史を持つこいつらが邪神が消えたとしてもどうせ再び争い始めるのは目に見える。
俺がどれだけやっても変わらないなら自滅の道を勝手に進んでいけ。
「これから先もそれは変わらない。邪神は倒す。奴は俺の道を拒むからだ。だから、今回の戦いもそうだ。復讐を果たす、やられたからにはやり返すのが俺の流儀だ」
龍神は俺の言葉を聞くと目をつむり、ゆっくりと目を開けて俺を見ると
「我はかつて主の前に別の主と契約を交わした。しかし、あの者は志半ばに死んだ。すべての人を救いたいと最期まで願いながら」
「全ての人を救うだ?人と人がいる限り、争いは決して無くならない。狂った考えを持ったやつだったんだな。全ての人は救えない。決してな」
「主はその考えのもとここまで来た。先代の主が辿り着けなかったところまで。だからこそ、今度は主に託してみようと思う。我の先代の契約者は全てを救おうとして失敗した。しかし、主は全てを救うのではなく、自分のために救う。我はどちらがその考えが世界を救うためにより良いのか分からない。だから、主よ」
龍神は俺を真剣に見る。
「我が子達を救うとここで誓ってくれるなら我らは主と地獄の果てまで付き従おう」
「答えはすでに決まってる。良いだろう、こちらもお前らの力を借りたい。お前らに地獄を見せてやる」
こうして無事に竜人族達と協力関係を築けた。
後は渚と、そうだな加山も巻き込むか……
勇者2人がストッパーにいればこちらも動きやすい。
投稿が少し遅れます。
ごめんなさい……