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救い

「なぜ、お前が邪神のことを知っている?」


ベリルから聞いた邪神について知るものはもはやこの世界にはいないと教えて貰っていた。

誰も邪神のことを尋ねても知らないと言い、邪神の封印のことを教えても一笑にふすという。

そのため、ベリルたち精霊たちもこれ以上何か言う気も失せたと。

だからこそなぜこの女が邪神のことを知っている?


「邪神はこの世界の旧支配者、闇で世界を飲み込み破壊と混沌をもたらしてきました。それを封印したのが1000年前の勇者であったと。やはり栗原様はご存知だったのですね」


一部違うが、大体合っている。


「どこでそれを知った?」

「私が教えたのですよ」


俺の問いに答えたのは教皇だった。


「人族領域にのみに受け継がれ、時の教皇のみが知ることができる権利として邪神のことがあります」

「なぜ教皇のみが知ることができる?」

「それはきっと人族の最大の汚点だからでしょう。勇者と結託し、他の勇者様から力を奪ったのですから」

「奪っただと?」


ベリルが話してくれた噂は本当だったのか……


「お前はどこまで知っている。全て話せ!」

「それなら私と2つだけで良いです。頼みを聞いてください。別にお金や力を渡せと言うつもりはありません。本当に些細な簡単なことをお願いしたいのです」

「…………………………良いだろう。話せ」


一瞬、迷った。

コイツから邪神のことを知って良いのか……

別にわざわざコイツから聞かなくても拷問すれば良いだけではないかと。

それにベリルの教えてくれたことと同じ場合、意味がないだろう。

だが、コイツの奪ったという言葉を考えれば……


「まず1つ目は人族を見捨てないで頂きたいのです」

「…………………………」

「私がもし栗原殿と同じ立場ならまず人族領域から脱出し、竜人族の地域なり消えたと言われる幻人族の地域に入って亡命を行います。勝手ながら栗原殿の経歴は調査させていただきました。その上でもし世界最強と言われる竜人族と手を組んで人族と戦争をすれば、精霊の力も持つ栗原殿なら人族を絶滅させることも容易たやすいでしょう」

「よく分かったな」


その通り、俺はそう考えていた。

レインもいることだし、竜人族とパイプもある。

上手くことを運べば人族を滅ぼせる。

俺は人族に対して最悪と言ってもいいほど憎らしく思っている。

追い出すわ、喧嘩を売るわ、賊だと言われ購入したものや資産は全て奪われるわ。

これで憎しみを覚えないほうがおかしい。


もちろん、何人かの人族は残すつもりだ。

だが、別に人族が滅びたって俺は困らない。

人族が滅びるかどうか人族の問題になるのであって、人族と見ため同じとはいえ自分を人族だと俺は思っていない。

ゆえに殺すのだって独断何も思わない。

今回の戦いは俺と俺に協力する勢力VS人族といってもいい。

間違いなく俺は人族を絶滅させる勢いで殺しにかかる。

降伏させるよりは人族を最初から消し去ったほうがこの世界のためになる。


それをこの教皇は理解しているのだ。

人族の勝ち目なんて最初から無いことを……


「だからこそ、どうか人族も守って頂きたいのです。私は人族の教皇として人族が滅びるのを見たくないのです。だからどうか、人族も他の民族同様に等しく救ってほしいのです。人族のためにならに死ねと言うなら死にましょう。その代わりどうか、人族を見捨てないで頂きたいのです。もちろん、もし栗原殿が人族を見捨てないで頂けるのでしたら此度の栗原殿の戦い、我々は栗原殿の支援者となり最大限の協力を惜しみません。教会の影響が強い都市には栗原殿を支援するように命じます」

「なぜ俺にこだわる?他の勇者にでも頼めば良いだろう」

「この前の栗原殿の戦い、映像水晶で見ました。勇者以上に勇者らしく、逃げずに最後まで戦う姿に感動しました。それに裁定者の最強スキル『断罪』を使ってまで魔王を倒そうとしていました」

「おい、あれは子供向けの放送だろ?なんで大人のお前が見てんだよ」

「ユグドラシル教会がその放送の株主ですから……普段は聖歌の放送であまり人気がありませんが……」


なんていう繋がりだ。

こんなことあっていいのか?

世間狭すぎだろ……

俺は思いきりため息をついた。

どうする……どちらにしても攻め入るうえで全滅を目的とするよりはクソ王子側を一つ一つ潰していった方が楽に決まってる。


それに潰した後の戦後処理についてもコイツらに任せてやらせておけば問題ないだろう。

それにもし歯向かうようなら徹底的にまた潰してやれば済む。

現状を打破するなら組むのが得策か……


「はぁ、分かった。手を組もう。その方が楽そうだしな。それでもう1つは?」

「はい、ありがとうございます。それは彼女達を、つまりは帝国を救って欲しいのです」

「ふざけるな。なぜ俺がこの国を嫌いか知っているのか?クソ王子がいるからだ」


教皇は王妃を指差すととんでもない事を頼んでくる。

ふざけるなよ、俺が何度あの男を殺したいと思っていたと思ってる。

俺にとってあの男とあの男に連なる者は決してこの世に残すつもりはない。

それがたとえ血が繋がっていなくてもだ。

しかも王妃の娘まで助けろだ?

それこそ無理な話だ。

腹違いとはいえ、クソ王子と兄妹を助ける義理はない。


「栗原様がブロウによっえ受けてきたことは知っています」

「俺の事なんてどうでもいいんだよ!それよりもー」

「ご主人様、私の事は良いのです」


ベリルの方が、と言おうとする前にベリルに止められる。


「だがー」

「私はご主人様がいるからここにいるんです。あの男は確かに葬りたいですが、それはご主人様がなさってくれるのでしょう」

「それは確かにするが……」

「ならば、それ以外は私の復讐の目的ではありません。もし、それをしてしまえば私は罪の無いものまで殺したあの男と同類になってしまいます。ご主人様がなさいたい事は私は何でもします。人殺しでも手を染めましょう。しかし、私の事でご主人様には手を染めてほしくはありません」

「…………分かった。なら、ベリル個人としてはコイツらに恨みはない。殺そうとも思わないということか?」


ベリルはしばし考えたあと、王妃を見つめる。

その目はとても冷たく視線だけで殺せそうだった。

実際、王妃の娘はベリルの視線に怯えて足が震えていた。

だが、王妃は怖じ気付くことなくベリルを優しく見つめて返していた。


「きっとあなたには酷い事をしてしまったのでしょう」

「別に」

「あなたの受けた痛みを、私達がしてしまった罪を許してもらうことはできないでしょう」

「あなたがしたわけではないでしょう」

「それでも私がもっと注意していれば、ブロウが国の乗っ取るまで勢力を強めることはなかった。だから、それを許してしまった私は許されません」

「そう思うならそう思えば良いじゃないですか?」

「ええ。ですから、ブロウを排することができたあかつきには帝国は栗原様を全面的に支援することを約束いたします。信じられないなら私の首と引き換えでもございません。ですから、帝国を救って頂きたいのです」


最後の台詞はベリルに対してではなく、俺にも言っていた。


「ベリル、俺はお前の意思に従う。帝国を救うか否かはお前が決めろ」

「分かりました」


ベリルは再び王妃に向き合うと


「あなたは先程自分の首を差し出すと言いましたね」

「はい」

「なら頂きましょう」


ベリルは腕を横に一振りする。

王妃は地面に膝をつき、王妃の長い髪が地面に落ちる。


「お母さま!」


娘が叫び声を上げる。

まさか殺すとは思ってなかったのだろう……


「これは!?」


王妃・・が驚いたように自分の首を何度も触る。

そして王妃はベリルを見上げる。


「髪は女の命です。私はあなたを殺しました。これであなたの罪は許しましょう」

「ありがとう、ございます。そして申し訳ありませんでした」


王妃は静かに何度もベリルに礼を言うと涙を流して謝罪する。


「ベリル……」

「ご主人様、帝国を救って頂けますか?」

「ああ、お前が言うなら救おう」

「ありがとうございます」


そうしてしばらく経った後


「栗原殿にはある物をお返しします。おそらく栗原殿はすでにそれをご存じのことかと。それを手にすれば栗原殿はきっと勇者様方と同様の力を手にいれます。しかし、その結果もたらされる世界の危機を救って欲しいのです」


教皇は俺に話始めた。

ベリルの話では世界の終焉は俺が死んだ後のはずだ。

だが、教皇のことの態度何かあるんだろう……


「その理由は説明してもらえるんだろうな?」

「もちろんです」

「………………。分かった」


そして落ち着きを取り戻した王妃は俺を見ると


「私が今成せる事は栗原様を私兵と女王派の騎士団で支援することくらいしかできません」

「それで十分だ」

「いえ、それ以外にも栗原様が帝国を救ってくれたあかつきには我が娘、リズリットをぜひ差し上げます。どうぞ栗原様のお気の召すままに性奴隷にでもなさってくれて構いません」

「お、お母さま!?話が違いますわ!私は人質だと言っていたではありませんか!」


リズリットは聞いていないとばかりに反応する。

別に俺にはもう十分すぎるくらい魅力的な嫁たちがいるから要らないんだけど……

けど、人質ね……

確かに俺の信頼が王妃にきちんとあることを伝えるには必要だろうな……けどー


「ああ、別にいらん。こんな股の緩そうな女はいらない」

「なんですって!」

「ご安心下さい、栗原様。リズリットは処女ですよ。しかもまともに男性と触れあった事もない生娘です」

「お母様!」

「黙れ!んなこと聞いてねぇ。単純に人質なんか寄越さなくてもいいってことだ。きちんと救ってやるから自分の娘を人質に出すようなことはするな。その子も俺といるよりお前と一緒にいた方が良いに決まってる」


人質なんかいなくても構わない。

むしろいると邪魔だ。

俺がそう思っているとリズリットは俺の言葉を聞いて驚き、だんだんと顔が赤くなっていく。

王妃はそれでは困ると言う風に話を続ける。


「それでもこの娘には栗原様の元に居て欲しいのです。私といると命の危険がありますから」

「なるほど、そういうことなら預かろう。安心しろ、お前に手を出す気はない」

「あ、いえ、その、あ、ありがとうございます」


リズリットは急にしどろもどろになると俺に対する言葉遣いが丁寧になる。

王妃派にいる以上、王子派からはどうやっても狙われる。

なら俺のところに預けた方が一番安全だろう。

迷惑ではあるが、帝国を救うと決まった以上俺の協力者を見捨てることは得策ではないだろう。

俺が考えている間、リズリットから何度もチラチラと見られ、目が合うと顔を赤くして慌てて目を背ける。

そしてなぜか王妃はニッコリと笑い、リズリットの耳元でなにかを言うと顔が赤かったのがさらに赤くなる。


「なんだろう?凄い嫌な予感がする……」

「奇遇だねお姉ちゃん。ライバル増えないと良いね……本当に……」

「やっぱり帝国は潰しておきましょうか……」


リア達はそう呟くと何度も俺とリズリットを見る。

どうした?

ふとリズリットを見ると俯いていた。

少し顔が赤いが大丈夫か?

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