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撤退

「リア、リリ、今ならまだ間に合う。俺たちの元に戻ってこい。すでにそいつは人族領域では指名手配がついた。その仲間も協力者も皆殺しになる。俺たちの元にくれば、お前たちの罪は不問となる」

「何度も言うよ。お父さん、私はナタリア・バインズとして栗原優斗君のパーティーメンバーです。仲間を捨ててまで生きたくありません!」

「私もお姉ちゃんと同じです!パパとママが相手でも今回ばかりは引けません!」


リアはハッキリと言うと再びフレデリックに構え、リリは杖をリネットに構える。

ユキとベリルは俺を守るように前に出る。


「魔法騎士は魔法と剣の腕が中途半端な奴がなるものだ……。どっち付かずのスキルで、俺の剣術からそいつを防ぎきれると思ってんのか?」

「リリちゃんは私よりも合成魔法は得意だけど、一つ一つの動作が遅すぎるわ。もう少し経験を積めば良いんでしょうけど、今のままではだめだわ~」


二人の周りの奴らも俺らに対して剣を構えたり、魔法を唱え始めたりする。

フレデリックとリネットの次の攻撃のために構え直したその時、


「龍神法、壱の型から肆の型まで『鳳翔ほうしょう』『玄牙げんが』『斗虎とと』『紫竜したつ』」


フレデリックとリネットたちの上からケインの龍神法で壊れかけている天井を一緒に破壊しながら加える。

ケインには2階から奇襲役として上がっていてもらって助かった。

空中での突きと蹴りに合わせて竜巻、衝撃波、火球、真空の砲撃が襲う。


「「「ギャアアアアアアアアア!」」」

「なんだこれは!?こんな攻撃があるなんて聞いてない!」

「貴様ら、私たちを守れ!」


二人はリネットの張った結界に守られたが、他の騎士や冒険者、魔導師たちはみなレインの攻撃で倒れる。

中にはリネットたちに自分を守るように命じている奴もいた。


「チッ、これだからついてくるなと言ったんだろうが」

「仕方ないわ~、ここにいるのは欲の深い者ばかりだもの。どうせ栗原ちゃんの資産が目当てで襲いに来たんでしょう」

「レイン!こっちに来い!転移石で飛ぶ」

「分かった!」


二人の意識が俺たちから削がれている今がチャンスだ!

このまま戦ってもあの二人に時間を取られて、援軍でさらに敵が増えても困る。

ここは一旦引いて、建て直してから事の元凶であるクソ王子を殺しに行こう。

親玉が死ねば、後はこちらの思い通りになる。

うまくいけばフレデリックやリネットたちとも争う理由がなくなる。

やはり親子で殺し合いなどさせたくない……

俺は幻人族領域に飛ぶため転移石を取り出したが


「シェースチ・アンチトランスポート」


転移石を使用できません。

使用できる場所まで移動してください。


そんな音声が頭のなかに流れた。

なんだと!?


「悪いけど、転移させないわよ。栗原ちゃん、娘たちの命のためにもここで死んでもらえるかしら?」

「なぜクソ王子側についた?俺がクソ王子に勝機がないと思っているのか?」

「栗原ちゃんなら十中八九勝てるでしょうね。でも、栗原ちゃんはここで負けないといけない」

「なぜだ?」

「一般の冒険者が勇者を殺したとなれば、その後の国の統治に多大な期間がかかる。一冒険者の方が勇者より強いと勇者を国の統治の基礎に置いている国ではそのシステムが崩壊するわ。それにどんな理由があろうとも勇者を殺したことを正当化する国なんてこの世には無いわ。栗原ちゃんがもし王子を殺せば、少なくとも栗原ちゃんだけでなくリアちゃんやリリちゃんにも被害が及ぶ。親として我が子の危険は排除するまでよ」


そういうつもりならなぜ……


「どうしてあの日俺たちが出ていった日俺を殺さなかった?あの時、お前にもクソ王子への殺意を教えていたはずだ」

「あの時の栗原ちゃんは感情で動くような人間でないことはなんとなく分かっていたわ。私の今の言葉も頭では理解していたはず。だけど、今会って分かったわ。今のあなたあの時のように理性で自分をコントロールできていない、いや違うわね。そうね……、何か殺すことへの義務や責任、正当性を見つけた。そんな感じがあなたからはするわ」

「………………」


確かにクソ王子を殺したいとあの時からずっと思っていた。

けど、実行したあとの影響だって分かっていた。

けど、ベリルを知った今だからこそ、そうなってもいいからベリルが受けた痛みを苦しみを、あの場にいた全員の恨みをあのクソ野郎に与えなければいけない。

それに自分があの野郎を殺す義務もできた。

ベリルの記憶が確かならクソ王子は…………


「リネット教えてやろう」

「何かしら?」

「俺は確かに弱職の『裁定者』だ。だけどな、今は『神獣』の契約者だ!ならば邪神の手下は殺す」

「栗原ちゃん、何を言っているの?神獣?邪神?」

「お前が分かる必要はない」


分かるのはリアたちだけで十分だ。


「リネット、無駄だ。アイツはもうどのみち逃げられない。ここで殺す」


フレデリックが攻撃を加えようと踏み込もうとしたとき


「これは!?」


大量の煙玉がどこからともなく大量に出てきた。

すると俺たちの周りに忍者姿の者たちが現れる。


「一体なんだ!?」

「静かにして欲しいでござる」

「ござる?」


なんだその語尾は!


「拙者たちに早く付いてきて欲しいでござる」

「お前らはいったい何者だ!」

「拙者たちは暗部でござる。ご安心くだされ、拙者らは栗原殿の御味方でござる」


いやいや、いきなり現れて味方とか言われても信用できるかっての。

ていうか、なぜ俺の名前を知っている。

俺たちはそいつらと距離を取ろうとするが


「お願いでござる!ぜひ拙者たちに付いてきて欲しいでござる!」


忍者っぽい奴らは土下座して頼んでくる。

後ろの二人を見てみると


「テメェら、何もんだ!」

「随分と身のこなしが上手いわねぇ~」


二人と忍者たちが交戦していた。


「どうやら敵、ではないようだな」

「優斗君、どうする?」

「どのみちここから逃げるつもりだったんだ。それにあの二人と戦っているということは少なくともクソ王子側ではないということだろう。それに万一何かあってもここから逃げられさえすれば転移石で逃げられる。何か流されているようで癪ではあるが、お前らについていく」

「たかじけない!」

「ただし、妙なマネをしたら即刻殺すし、逃げるからな」


ベリルやユキ、レインに視線をやるとしっかりと頷く。

三人が警戒してくれるなら問題ないだろう。

それにリアやリリも警戒しているし……


「勿論でござる。拙者らは栗原殿の御味方でござる。ではこちらへ」


俺らはその忍者っぽい集団の指示に従って逃げ出した。

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