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目が覚めるとベリルが寝ている俺にキスをしていた。

最高の目覚めだったのでベリルの肩を抱くとそのままディープキスに移行する。


「!?!?」


ベリルは目を瞑って俺にキスをしていたので、急なディープキスに驚いて目を開ける。


「ぷはっ。ご主人様、起きたのなら普通に起きてください」


顔を真っ赤にして照れるベリルを見て俺もテンションが上がったところで


「「「「「「優斗君[さん][ますたー][ユウト][ユウトさん]」」」」」」


皆が俺に抱きついてきた。

辺りを見渡すと屋敷の自分の部屋だった。

よく見れば周りには奴隷たちやガキ共に、微精霊や準精霊たちまでいた。


「優斗君、体は大丈夫?」

「え、ああ、うん大丈夫だが……。あれ?確かクソ王子殺そうとして、急に体が動かなくなって……くそっ、殺りそこなったか」

「ははっ、いつも優斗さんです」


リリが笑うと皆もそれにつられて笑う。

皆、目の端に涙を浮かべていた。


「何かあったんだろう。ベリル、俺に対して話があるんだろう。教えてくれ」

「しかしここには多くの人がいますが……」

「かまわん。話してくれ」

「分かりました」


ベリルはゆっくりと話始めてくれた。


「ご主人様は裁定者の固有スキル『断罪』を使ったことで本来なら死んでしまっています」

「そうだったな」

「しかし、私の命を与えることでかろうじてご主人様は生きています。言ってしまえば、延命させているといると言うのが実情です」


なんとなく予想していた通りだったのでそこまで驚かなかった。


「ご主人様の体には目には見えませんが、あらゆる場所に魔力や生命力が流れ出してしまう孔ができてしまっています。普通はそれは自動的に塞がれるのですが現状それが壊れてできなくなっています。今はその孔を私の力で塞いでいますが、魔法を放ったり用意したりするときにその孔が開き、使えば使うほどどんどん大きくなってしまいます。それこそ私の力でもいずれは塞げなくなってしまいます」

「そうか……ありがとうなベリル。助けてくれて」

「いえ、あなたを守りきれず申し訳ありません」

「そう言うな。君は俺を、俺は君を守ると決めたんだ。どうか顔を上げてくれ」


ベリルは申し訳なさそうに顔を上げる。


「はい……。それと週1回ほど私の魔力で孔を塞ぐためにもその時はその……私とキスをしてくださいね」

「ああ、分かった。ありがとな」


そのためにさっきキスしてくれていたのか……

そうとは知らず、ついやっちまったぜ。

テヘペロ。


「まだ何かあるんだろう?」

「はい。私の力ではどのみちいずれ駄目になります。そのためにも最後の4大精霊、夏を司る太陽の精霊に会う必要があります」

「そいつならどうにかなるのか?」

「はい。彼女は生命力も司っていて死者すら蘇ることができると言われているほどの生命力を持ちます。彼女ならご主人様の状態をもとに戻すことができるでしょう。今は炎の精霊と呼ばれているはずです」

「でも確か炎の精霊は……」


リアたちの両親に精霊恐怖症を植え付けさせたほどと聞いていたが……


「問題ありません。私とユキちゃんが説得するので絶対に大丈夫です」

「そうか……、なら頼むユキ、ベリル」

「うん!」

「任せてください」


炎の精霊に会いさえすれば生き残る道があるってことを知れただけ心がだいぶ落ち着く。

やっぱりいざ死ぬんだと思うと恐ろしい。


「リア、俺は何日くらい寝ていた?」

「丸3日は寝ていたよ。だから、皆心配して……」

「すまなかったな」


3日間、皆に心配をかけていたということか。


「兄貴、すまねえ……俺が自分のわがままなんか言わずに付いていっていれば兄貴はこんなことには……」

「レイン、お前が気にすることじゃない。俺も自分の意志で使ったまでだ。それに新たに知れることも多かった」


特にベリルの事に関しては本当に嬉しかった。


「兄貴がそう言ってくれると助かる……」

「そんなに気負うな。それにお前は俺がいない間きちんとこの屋敷を守っていたんだろうな?」

「当然!」

「ならそれで良い」


その後一人一人心配をかけたことに対して謝罪をして礼を言った。


「ユウト、こんなことを起きてからすぐに言いたくはなかったんだけど……」

「どうした?」


言い終わった後にシルヴィアが俺に話しかけてきた。

見ればフェルミナやリアたちも暗い顔をしていた。


「僕はギルドの署長を解任させられたよ。ついでにギルドの職員の地位も追われた。フェルミナも同様にね」

「どうして?」


なぜシルヴィアたちがギルドを辞めさせられたんだ?

しかも署長の解任なんて


「魔王討伐に失敗した責任でギルドの上層部が全員自任したんだ」

「それはなんとなく分かる」

「そして今回の討伐はギルド上層部が勇者たちをけしかけて無謀な戦いに挑まさせ、権威の失墜をさせたと糾弾されたんだ。この国や戦いに参加した国々にね」

「なんだと?」

「結果としてこの国のギルドの上層部は帰還したブロウ王子の息のかかった者たちに全員固められてしまった。その後、僕はギルドの署長不適格として解任させられ、勇者に対して非道な行いをしたとフェルミナ共々やめさせられたよ。まぁ、辞めさせられたのは僕とフェルミナだけだからたぶんユウトに対する八つ当たりだと思う」


あのクソが!

テメェの失敗をギルドに擦り付けるだけじゃなく、俺に対する嫌がらせまでやってくるとは良い度胸だな。

俺はもう奴を殺すことを躊躇しない。

今までアイツがこの国の勇者であり、拠り所であるから下手に手を出せなかったが、それが落ちぶれた今もう容赦する必要はない。


「それと、優斗君。もう1つ悪いことが……」

「気にしなくて良い。教えてくれ」

「うん、分かった。ギルドからこの前通達が来て、冒険者ランクの不自然な上り方があったということで冒険者の資格も剥奪するって通達が来て……」

「リア、やっぱりそれ以上は言わなくて良い」


あの野郎が露骨に俺を排除しにきているってことならこちらも動くまでだ。

やることは多いがあのクソ王子に目にものを見せてやる。







全員がいなくなったあと、俺は部屋にベリルとユキだけを残した。

ベリルに精霊の役目について聞くためだ。

これはなんとなく皆で聞いて良いようなことではないような気がした。


「ベリル、お前たち精霊はなんなんだ?」

「私達は神獣です」

「神獣?」

「はい。正確にいえば神の力を宿した存在です」

「神様ってことで良いのか?」

「どちらかと言うと神から指命を与えられた使徒・・たちの、監視役として派遣された使徒・・に仕えた者です」

「つまりお前たちはその使徒とやらの武器だったっていうわけか?」

「その認識で間違いありません」

「次に俺のベリルとの契約が精霊から神獣となっているのはなぜだ?」


魔王との時から俺とベリルの間に結ばれているのは精霊としてではなく、神獣の欠片として契約されている。

これは皆が居なくなった後、すぐに確認した。


「実は私達は精霊であると同時に神獣であり、神獣の契約者に成るには私達とより深く結び付くことが必須です。現在、ご主人様は私の魔力の機能を利用しているため強い結び付きとなったため、精霊の契約がさらに強化され、神獣の契約者となりました」


なるほどな……

それとベリルの言った使徒・・……

一度会ったあの白い奴が何かほざいていた内容にあった言葉だ。


「その使徒は何のためにやって来た?」

「この世界を支配していた邪神を討ち滅ぼすために約1000年前に13人の使徒が派遣されたと聞いています」


邪神、それが最大の敵ということか。


「結果として討ち滅ぼす一歩手前まで追い詰めたと聞きましたが、何かがあって滅ぼせずその監視役の使徒様は使徒としての力を奪われ、やむなく自身に仕えた神獣の力を4分割し、それぞれ4つの方角に配置することで邪神を封じたと聞きました。その4分割されたものが私やユキちゃん、龍神、そして太陽の精霊です。ちなみに他の精霊達は私達の力の影響を受けて精霊化した死んだ木々や虫といったものたちの魂です」


そういうことか……ベリルたちだけは他の精霊の中でも別格ということか。


「それなら邪神の脅威はもうないということか?」

「いえ、封印はできましたがそれは時間稼ぎでいずれは解けます。特に本来私達が配置されているべき場所に現在いるのは太陽の精霊のみです。私やユキちゃんはその場所から追い出されたり、捕まった結果こうしています。龍神は封印の指定場所が開発によって破壊され、もはや機能していません」


あの時のポルヴォー王国共のせいだな。

まさか回り回ってこんなところで迷惑をかけるとは、アイツらも本当に邪魔しかしないな!


「そして私達だけに分かることですが、封印がいつ解けるかはなんとなく分かります。けど、今のペースでいけばご主人様が寿命を全うしたあとに解けると思います」

「そうか……」


俺が死んだ後に解けるなら今の俺にはどうしようもないな。


「そして私達と契約した者は精霊の力で封印を強化したり、邪神の使徒、つまりは魔獣と戦いなどが義務として課されます。ただ、ご主人様は今まで戦っていたので問題ありませんが。問題は本来監視役の使徒が担っていた別の使徒たちの監視や仲裁、場合によっては使徒の資格の剥奪も行います」

「ということはまさか……」


先程の言葉の通りなら……使徒が意味するのはまさか


「はい。使徒というのは勇者と魔王の本来の名です。そして不適格な勇者や魔王を殺すこともできます。ただ、勇者達や魔王のスキルや宝具の剥奪は使徒様として力が必要です。かつて神獣を従えた使徒様が持っていた力、資格の剥奪の『鍵』が必要だと聞いています」

「鍵?」

「はい。その『鍵』をかつて神獣の使徒様が持ち、何らかのことがあって無くしたらしいです。噂によると使徒様の力を恐れて別の使徒が『鍵』隠したと言われています」

「なぜそいつらは殺されるよりも剥奪を恐れる?」

「剥奪は未来永劫その家系すべてに適応されるうえ、死後は地獄の果てまで剥奪されたことへの罪を問われ、苦しみ続けるとされます。それに使徒の資格も才能さえあれば実の子供に受け継がせることもできるので子のことを思えば危険を排除した可能性もあります」


そういうことか。

殺されるよりも剥奪の方が恐ろしい運命が待っている、それはなんとしても避けないとな。

だが、ベリルたちの役割はそういうことだったのか……


「待てよ。なぜ今のこの世界では魔王と勇者、それとベリルたちの契約者を足すと14人になるんだ。使徒は13人派遣されたんだろ」

「私達が元の1つの神獣であったときに仕えた使徒は神獣という破格の力を捨てることで邪神を封印しました。しかし、本来13人で邪神を倒すことを目的としていた神は新たに一人使徒を派遣したのですが……」

「役割を果たさなかったということか?」

「分かりません。その後の使徒たちの事はほとんど知らないと先代のメアは言っていたので……ただ、世界のために自らの神獣を捨てた使徒様は他の使徒達から随分と責められていたそうです」

「なんだそれは!その使徒が世界のために犠牲になったのに何もしていないそいつらは何様だ!」


その使徒が世界のことを思って行動したことへの対応がそれだと!

ふざけるな!

俺なら舐めたことを抜かすそいつらをなんとかして殺そうと思うが、その時の使徒はどう思っていたのだろう。


「私もそう思います。ただ、メアはその元使徒様と一度だけ会ったそうですが恨んでもいなかったそうです。元からとてもお優しい方で、仕方ないと諦めていたそうです。それと使徒様は奥さんと一人娘のことを本当によく愛していたそうです。娘さんはきっととっても可愛い子のはずですよ」


ベリルはそう言うとユキを見た。


「そういうことか……」

「ますたー、わたしをみてどうしたの?」

「ユキは可愛いなっていう話だ」

「ほんとう?ますたーにいわれるとうれしい!」


ユキは俺に抱きつく。

俺はそっとその頭を撫でていた。

ベリルが使徒様と他の使徒たちを敬称で分けるのはそれだけその使徒様とやらはできた人間だったんだろう。

俺にはとても真似できないが。

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