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雷神

全てを見せ終わった後、俺は白い光に包まれた。


神獣の欠片の契約者になりました。


そんな音声がどこから流れた。

光に思わず目を閉じると徐々に意識が体と繋がったような気がした。

ゆっくりと目を開けると俺の前にベリルの顔があった。


「ご主人様!」


ベリルは涙を目の端に浮かべながら嬉しそうに微笑む。


「………………君はあの時のー」

「ご主人様、私はベリルです。あの時の子とは違います」


ベリルは俺が何かを言う前に言葉を合わせる。


「だとしても、俺は…君に合わせる顔がない」

「なら愛してください」

「えっ?」

「私がここにいたという事実が残るくらい愛してください。それが私がご主人様に望むものです」

「どうしてそんなことだけで俺を許せる?」


分からなかった。

ベリルが生きていたのは本当に偶々だ。

普通なら死んでいた。

しかも、俺もこの娘が死んだ理由に一枚噛んでいる。


「分かりませんか?あなたが好きだからですよ。好きって理由ではダメですか?」

「それでも俺は………」

「分かりました。なら私からご主人様に命じます。これがあなたの私に対する最後の贖罪です。だから、もうこれ以上私のお墓の前で嘆かないで」

「分かった。どんなことでもしよう。君が望むことなら何でも」


それが俺がしなければいけないことだから……


「では、魔王を倒しなさい。そして家に帰りましょう。私達は誰よりも一番早く出会っていたんです。こんなところで終わりたくありません。もっと長く長くあなたと一緒に居たいんです」

「それは……」


ふと視線をずらすとリアとリリ、ルルが俺たちの囲うように結界を張って魔王の攻撃を辛うじて防いでいた。

ユキは精霊魔法を何度も魔王に向けて放つが全く効いていないようだった。


「逃げなかったのか?」

「優斗君を置いて逃げられるわけないよ!」

「ごめんなさい、優斗さん。それだけはできませんでした!」

「ごめんなさい!」

「ますたーはわたしがまもる。ますたー、きずつけるおまえ、だいきらい!」


皆が皆、俺を守ろうとしてくれていた。


「俺は『断罪』を使った。もう俺は……死ぬ」

「大丈夫ですよ、ご主人様」


優しそうにベリルが俺に言う。


「どういうことだ?」

「私の蘇った理由は知っていますよね。この肉体には強力な生命力の塊です。それを使って今のご主人様は私とリンクさせています。要は私の生命力をあなたに分け与えています」

「ベリル!お前、なんてことを!」


生命力だと!?

要は寿命を与えているっていうものだろ。


「それでもあなたに生きてほしかった。ただ、私とリンクさせるということは精霊としての私の責務もあなたに背負わせることになるということ。たとえ、その責務を私が放棄したとしていずれは必ず関わらなければならなくなる。それだけが心残りです」


ベリル、お前はそこまでして……


「分かった。戦うよ」


俺は立ち上がろうとしたがうまく立てない。

ベリルが慌てて俺を支える。


「ははっ、ここまで体がいうことを利かないとはな……」


断罪の影響がここまで酷いとは思わなかった。

俺も精霊魔法を打とうと思ったが………


「魔力が圧倒的に足りない」


ギルドカードを見てみると、


栗原優斗

裁定者

レベル ??

HP ???

MP ???

冒険者ランクA


となっていた。

?ってなんだよ。

もはや数字がない。

雷鳴を打とうと祝詞を構築しようとするが頭の中で壊れてしまう。

これでは雷光すら打てないかもしれない。


「ご主人様、ユキちゃんから貰った加護で最も強い精霊魔法を打ってください」

「『雷神』か?無理だ。雷鳴の祝詞すら使えないんだぞ」

「ご主人様、私はあなたと共にあります、どうか私を信じてください。精霊の力は想いの力、あなたの想いの全てを込めてください。私の力を引き出すようにしてそれをユキちゃんに使ってあげてください。私の『水神』では倒せませんが、ユキちゃんなら必ず勝てます。だから、どうかお願いします。あなたならきっと使えます」

「分かった」


俺がそう言うとベリルはリアたちに向かって言う。


「リアさん、リリさん、ルルちゃん。結界に注ぐ魔力を全てご主人様に流してください。ユキちゃんこっちに来て!」

「どういうこと?」

「リア、ベリルの言う通りにしてくれ」

「何か索が有るんですね」

「そうだ」


索と言っても行き当たりばったりみたいな索だけどな。


「ベリルさん、私は支援魔法が余りできなくて……」

「何でも良いです。ともかくどんな形でもいい。私に魔力を流して!それをご主人様に私が一括で流します」

「……分かった。ベリルさんお願いね」

リアたちがベリルに魔力を流し始める。

「ユキちゃん」

「なぁに、ベリル?」

「ユキちゃんが頼りなの。あなたがご主人様を助けられるただ一人の存在なの!どうか私達を、いえ、ご主人様を助けて!」

「だいじょーぶ!ユキがますたーたすけるもん!ますたーからあとでいっぱいおかしもらって、いいこいいこしてもらうもん」

「ありがとうユキちゃん。あなたがご主人様の精霊で本当に良かった」


ベリルはユキの頭を優しく撫でる。

そしてベリルは俺に向き合うと


「では、ご主人様もうそろそろ流し込みます。どうか自分を信じて」

「ああ、分かってる」

「行きます!」


ベリルの掛け声と共に大量魔力が流れ込んでくる。

そうだ、俺は……ここで負けるわけにはいかないんだ。

ベリルと約束したんだ。

死ぬまで戦うと、逃げないと決めたんだ。

ベリルの前で誓ったんだ。

もう二度とベリルの信頼を裏切らない。

そしてリア、リリ、ユキ、ルル、そしてベリルと共に家に帰るんだ。

ならば今もう一度改めてここで誓おう。

俺の大切な人達の為に俺は……


「もう二度と失なってたまるか!」


俺の想いを全て注ぎ込んでもあのチート魔王をぶっ殺してやる!

左手のユキの加護の模様が光輝く。

そして何かに縛られていた鎖が砕け散ったような気がした。


「『我、大地の精霊と契約する裁定者が願う。我の契約したる精霊は正義の神獣。その真なる姿を見せ、あらゆる敵を滅ぼしたまえ。正義を突き通し、闇を打ち砕け。我が成すその真なる力を示せ』」


今までにないとても長い祝詞であった。

それなのに詠唱中はとても短く感じられた。

リアたちが作っていた結界が破られ、魔王がこちらに狙いを定める。


「『雷神』」


俺の言葉と共に隣にいたユキが光出す。

思わず目を背けてしまう。

徐々に光が収まっていくとそこにはさっきまで居なかった『白い虎』がいた。

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