表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/142

救出

「さて、行くとするか」

「うん!」


リアたちが準備ができたのを確認して玄関を出ると映像水晶を持った二人組がいた。


「今回、救出作戦を企画していると聞いて来ました!どうですか、勝算はありますか?」


あれは幻覚だな。

俺は何も見なかったことにして転位石を取り出しつつ、扉を閉めようとすると扉に手をかけられて閉められないようにされる。


「おい!離せ」

「少しくらい話をして下さいよ。せっかくおいしいネタがあるって聞いたんですからどうか1つお願いします」

「時間が無いんだ。お前らに付き合っている暇はない。早く向かわないといけないんだからさっさとどけ」

「そこをなんとか!移動しながらでもいいんでどうかお願いしますよ!」


しつこい。


「優斗さん、この手の人達は諦めた方が早いと思います。パパとママにも前にこの手の取材ありましたが、答えない限りとてもしつこかったので」

「……その通りかもしれない」


仕方なく扉を離し、二人組を無視して先へ行く。


「討伐軍が壊滅したほどの魔王相手に単身挑んで勝てると思いますか?」

「お前、どこから俺が向かうことを聞いた?」


歩きながらも俺に向かって尋ねてくる眼鏡をかけた女に聞く。

シルヴィアの親父にこれ以上無謀なことをする奴らを増やすなと言っておきながら自分はやっているんだ。

問題になるに決まっている。

だから、黙っていたというのに。


「昨日、ギルドでちょ~っと小耳に挟みましてね。何やら面白い相談しているみたいなので来ちゃいました」

「1つ言っておく。俺は魔王を倒しに行くんじゃないぞ」

「ふぇ?そうなんですか?なら何をしに行くんですか?」

「単純に知り合いの冒険者を結界の外に出られるようにするだけだ」

「それじゃあ、戦わないんですか?」


闘うわけないだろ。

俺に死ねって言っているのか?


「戦うつもりなんてまるでないからその映像が撮りたいなら別のところに行くんだな」

「いえいえ~、それで構いません。映像の前の皆さん見ていますか!友のため、命を懸けて助けに行くこの姿とてもカッコいいと思いませんか!」

「まさか!?お前、放送しているのか!?」

「あ、大丈夫ですよ。うちの放送局見ている家庭なんてそれこそ少数なんで」


俺の行動が多くの人に見られているのか思ったが、映像水晶を持った男がそんなことを教えてくれる。


「ライバル局に討伐軍の戦闘の取材取られてこっちは視聴率がた落ちしたんですよ~。あ、そうだ。少しで良いので戦ってくれません?そうすればウチの局の視聴率きっと上がるんで」

「元からうちの局は視聴率低いんで気にしなくていいですよ」

「……」


もうなんかこいつらダメダメすぎて呆れた。

まぁ、心配はなさそうだな。


「せっかくの生放送ですよ?格好良いところ好きなあの子に見せられますよ」

「いい加減黙れ!生放送でそんなふざけた態度取っているから視聴率が低いんだよ。だいたい、俺の好きな子はここにいるから問題ない」


リアたちを指差すとリアたちは照れてくれる。

可愛い、俺の彼女たち本当に可愛い。


「あ~、はい。ごちそうさまです」

「飽きたんなら帰れ」


女アナウンサーは呆れたような表情になる。


「まぁ、現状視聴率も良いみたいなんでこのまま続けます」

「0.1パーセントですけどね」


ホント低いな。

これならとりあえず大丈夫か。


「だいたい、ただの冒険者取材したってつまらんだろ」

「いえ!男同士の友情から生まれる更なる友情!じゅるり」


ダメだコイツ。

腐ってやがる。


「だいたい、お前らさっきからそんな口調で良いのか?取材な上放送されているだぞ」

「大丈夫ですよ。ウチはもともとこういうスタンスなんで。それにただの冒険者相手に敬語使う必要もないんで」


別に敬語使えとは言わないが、せめて最低限の礼儀くらい持て!

どいつもこいつも人をバカにすることしか脳がないのか。

本当にムカツクな!






「お前ら、本当に付いてくるのか?」


ギルドで手配してくれた馬車に乗って現地に向かっていてもコイツらは付いてきた。


「当然です!社長を説得して最後まで撮れるようにしたんですから」

「お前ら死ぬぞ」

「大丈夫ですよ。逃げ足は自信あるんで」


言っても聞かないとなるともうどうしようもない。

最後まで撮りたくて最期にならないといいな。


「優斗君、大丈夫?」

「大丈夫じゃない。なんで隣国に着く前にこんなに疲れなくちゃいけないんだ」

「あ、お姉さんたちは笑顔でこっち向いて」

「えっ!?」


しかもこのバカ二人組は番組と称してふざけた報道するし、リアたちがキレイだからって無茶な要求ばかりしてくるし、迷惑この上ない。

馬車から叩き落としても、すぐに別の馬車で急いでやって来るから迷惑この上ない。


「キャアー、この子滅茶苦茶カワイイ~」

「ますたー、こいつこわい」


ユキは俺の所に逃げてくるわ、リアもリリも心底嫌そうにする。

これだからマスコミ?(コイツらをマスコミと言うとマスコミに対して失礼になる気がするが)は嫌だ。


「いい加減、私もイライラしてきました。ご主人様、あの方々消して良いですか?」

「ベリル、放送されていなければゴー!と言いたいんだが我慢してくれ。もう少しの辛抱だ」


ベリルもさすがにあのバカ二人が邪魔なのかイラついているのが良くわかる。

後少しで到着だ。

それまでの我慢。

実際、行動を始めたら黙っているように伝えているから大丈夫なはずだ。

たぶん…………、もし止まらないようならエレメント・サンダーで黙らせよう。

そしてようやく隣国に到着した。

二日で到着できたのは本当に早い。

今回は軍単位でいないのも理由かもしれないが。

とはいえ、ゆっくりしていられない。

早く結界の穴を見つけなければいけない。

リアとリリに任せ、その様子を見ていると……


「今は何しているんですか?」

「結界の穴を開ける場所を探してもらっている」

「あなたは何もしないんですか?」

「俺は穴が開いた後に仕事がある。というか、なんでお前に説明しないといけない」

「良いじゃないですか。減るもんじゃないし」


ため息をつきながら説明を続ける。

この手の奴らは本当にウザい。


「ほうほう、つまり魔王が襲いに来なければあなたは役割がないと」

「おおむねそうだな。魔法はリアたちが得意だし、任せるしかない。魔王の足止めくらいならなんとかできるだろ」

「勇者様ですら倒せなかった相手に戦えるんですか?」

「俺一人ならキツいがユキとベリルの補助もあれば問題ない。もとより倒す気は無い」


するとアナウンサーの女は酷く驚いてユキと俺を交互に見る。


「ええっ!あの子、子供ですよ!子供にも戦わせるんですか……なんて鬼畜な……」

「確かにユキは子供だが、精霊だ。俺よりも何倍も強いから下手に機嫌損ねると殺されるぞ」

「まさかの衝撃の事実です!皆さん、見ていますか!あの子供、実は精霊だそうですよ。私はてっきりこの方の子供かと思っていました!」


テンション高いな~。

水晶に向かって熱烈に語るバカを見ていると


「優斗さん、見つけました!ここなら破れそうです!」

「分かった。俺たちも準備をする」


リリの声で俺は緊張感を張り直す。

そして持ってきていたラジオのようなものでケインたちに連絡を取った。

ラジオは使い終わったら返せと言われていたからな、使い終わるまでは俺が自由に使っていいということだろ。


「ケイン、生きてるか?」

『優斗か!まだなのか!?もう俺たちは限界でー』

「今、リリが結界の穴を見つけた。場所はー」


町の見取り図を確認して場所を見つける。


「町の中心地から南東の門があるのが分かるか?」

『ああ、分かるぞ』

「その門のから壁伝いに300メートルほど離れた壁に穴を開ける。そこまで来れるか?いや、来い」

『分かっているさ。行かなかったら死ぬ、それだけだろ』

「そうだ」

『なら待っていてくれ。たぶん30分くらいで着く』

「分かった」


俺は通話を切ると壁に向かって精霊魔法を放つ。


「『我、土の準精霊と契約する裁定者が願う。エレメント・メルティング』」


壁がゆっくりと溶け出し、十分人が通れるくらいの穴を作る。

壁に空いた穴には薄い皮膜のようなものが見える。


「この結界の特性から考えると通ることはできても抜けられないものだと思います。お姉ちゃん、私が中から干渉するから外からお願いね」

「分かった」

「二人とも頼んだぞ」


後はケインたちが見えるまで待つだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ