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インタビュー

高橋が出て行った後、数日間激務に追われながらなんとかやり遂げ、久しぶりにリアたちと城下町を歩いていると魔王討伐で大いに湧いている。

加山には高橋との会話であったことを伝えたところ


「分かりました。僕がいると皆さんが迷惑なら今回のことは高橋さんたちに任せます」


と応え、世界に対して今回の討伐の参加を見送ることを発表した。


「まだ討伐してもいないのに凄い盛り上がりようだね」

「流石に勇者が束になって挑むんだ。負けることが想定されていないんだろ」


負ければ面白いのにと思ったが、すぐにその考えを捨てた。

実際もし負けたりすれば魔王は確実に次はこの国を攻めるだろうからな。

負けてもらっては俺が困る。

しばらく歩いているとなにやら大きな機材を持った者たちが大勢いた。


「取材よろしいですか?」

「取材?」

「はい。今回の魔王討伐軍に参加することについてどう感じていますか?」


一人の男が俺の元に来るとそんなことを尋ねてきた。


「待て。そもそも俺たちは魔王討伐に参加しない。それよりもお前たちはなんだ?」


俺がそう答えると後ろから「なんだ、腰ぬけか」とか聞こえたが無視する。


「私達は今回の魔王討伐を世界に生中継するためにやって来た者です」

「生中継か……」


自分たちの戦いを世界に放送することで尊敬を集め、権威を高めたい称賛されたいという考えが見え透いていて呆れる。

リアたちもその考えに至ったのか呆れている。


「一つ尋ねたいのですが、どうして魔王討伐軍に参加しないのですか?ランクが足りなかったのですか?」

「ランクは足りているが勇者共が全員愚かすぎて呆れたからだ。自分のことしか考えないアホ勇者共に力を貸すつもりもないし、そもそも俺はクソ王子が嫌いだ。お前らも中継なんていうバカらしいことは止めとけ。戦いの最中に巻き込まれて死ぬかもしれんぞ」


実際、前回加山と倒した魔王は少なくとも弱いとは言えない。

加山が異様に強くなったから比較的苦戦しなかったが、弱いままの加山だったら負けていたかもしれない。

現に今の俺のレベルでも『雷神らいじん』『水神すいじん』を放つための魔力は全く足りないし、龍神の加護による精霊魔法で最も強い『風神ふうじん』も放つだけの魔力が足りない。

すると俺の言葉を聞くと尋ねてきた男はニヤリと笑い


「ご心配ありがとうございます。しかし、私達も魔獣との戦いを放送したこともある者です。危ない橋は何度も通ってきたので大丈夫ですよ」

「そうか、ならもう言わない」


なぜ笑ったのかは分からなかったがその日はクエストを受けた後帰宅した。



次の日、ギルドの公共水晶映像で魔王討伐についてのインタビュー映像が流れていた。

公共水晶とは水晶通しをリンクさせることで撮った映像をリンクさせてあるすべての水晶で放送できるものだ。

まぁ、もとの世界で言うところのTVみたいなものだな。

実際、こっちの世界でもいくつか民間で放送している。


適当にギルドで食事を取っていると放送が始まり、そこには多くの冒険者が今回の魔王討伐で功績を立てることを堂々と誓っていた。

活躍すれば各国から引き抜きもある上、場合によっては貴族に召し抱えられる場合もあるしな。


「皆、凄い気合いだね」

「だなー」


リアの言葉に同意しながら感心する。


「優斗君も活躍して貴族になりたいとかって思うの?」

「全く思わん」


俺なんか金があって魔獣を倒せるだけの力を持つまでが最初の目標だから、それが達成された今これ以上危険な橋に渡りたくもない。

それにこの国の貴族になんかなりたくもない。

誰が好き好んでクソ王子に関連することなんかに加わるか。


「俺は今この時が一番良い。リアたちがいて、魔獣も危険なことなく倒せる今がな」

「そうかもね」

「それにわざわざ厄介事に手を出すあいつらが一番意味が分からん」

「確かに」


リアと再び映像を見ているとケインたちも出てきて意気込みを語っていた。

あいつらは結局参加することに決めたらしい。

俺も人様のパーティーにまで口を出すつもりらない。

そんな風にボーッと見ていると俺が出てきた。


「あ!ますたーだ」

「本当ですね」

「ご主人様、映像でも格好良いですよ」


ユキが俺の腕を引っ張りながら俺の膝の上に座る。


「分かったから引っ張るな」


映像に目を向けると


「多くの冒険者が今回の魔王討伐に意気込みがあるなか、弱気の冒険者もいます」


などと司会の言葉が入り、俺の言葉が流れる。


「以上のように様々な考えの冒険者たちがいます」

「それでいて勇者様たちを侮辱する発言をしながら上からの物言いをするなど愚かなのはあなただと教えてあげたいですね」


司会の言葉にゲストと思われる別の男が答えながら、映像に出ていた多くの者たちが俺を批難していたり、バカにしていたりした。


「なるほどな。だからあの時の男は笑っていたのか」


良い映像が取れてこれを放送すれば面白おかしくできると思ったのか。


「ゆ、優斗君大丈夫?」

「何が?」

「怒ってない?」

「ご主人様、私が今からあの者たちを始末してきましょうか?」


リアたちが心配する様子で俺を見てくる。

ベリルに関してはもはや目だけで殺せそうなくらい怖い。


「別に良い。マスゴミ相手に目くじら立てる必要もない。あんなのわざわざこちらから行くほどの価値もない」


俺の言葉を聞くとリアとリリはホッとする。

俺だっていつも攻撃することはない。

ベリルは不満そうだが席に座り直す。

まぁ、あれだけ魔王討伐に勢いがあればさすがに倒せるだろ。

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