裏事情
「殺してやる、殺してやる、殺してやる!」
全身に痛みを感じながらどうにか俺は離れた場所に降りる。
「アイツら、はぁ、はぁ、必ず、殺してやる!」
勇者とあの男を必ず殺してやる。
「あら、あなた、魔王ですか?」
「誰だ」
振り返るとエメラルドの髪をした女がいた。
「もう一度聞きます。あなたは魔王ですか?」
「はぁ、はぁ、だったらなんだ!」
「そうですか。どうやら杞憂だったようですね。さすがは私のご主人様です」
コイツさっきからなんだ。
俺が魔王か聞いてくるし……まさか
「お前、ロフトとリナの部下か!?」
あの二人は散々俺に今は動くなって命じてきたが、もしかして俺を助けに来たのかもしれない。
アイツらがいればあの勇者共も殺せる!
「お前、ロフトたちの部下なんだろ?アイツらを殺せ!アイツら、この俺様に楯突いた奴らだ!」
「すみませんが、私は違いますよ」
「うるせえ!良いから早くアイツらを殺しに行け!出来ないなら、早く俺を助けろ!」
エメラルドの女は俺を冷めた目で見つめる。
「なんだよ!その目は!良いから早くしろ!」
「煩いですよ」
女はそう言うと腕を横に一振りする。
突如、俺は地面に体が叩きつけられる。
なんだ、何が起こった!?
足がじんわりと熱くなり、恐る恐る顔を足に向けると俺の足が凍りつき、太股の部分で割れていた。
「うぁあああああああああああああ!」
「全くたかだか足の一本や二本で煩い人ですね」
「俺の、俺の足がああああああああ」
女はそのまま這いつくばっている俺の頭に足を乗っけると地面に頭を擦りつける。
「魔王風情が私に命じるとは良い度胸していますね。挙げ句の果てにご主人様に楯突くとはどういうつもりですか?」
「お前、俺にこんなことをしてロフトたちが黙っているわけー」
「それに何度も違うと言っているのにいつまでも私が魔王の仲間と思われているのも癪に障りますね」
コイツまさか……
「お前、勇者の仲間か!?」
「挙げ句、勇者風情の仲間と思う。どちらも不正解ですよ」
「だったらお前は何者だ!」
「これから死ぬあなたが知る必要はありません」
こんなの嘘だ。
俺はこの世界でハーレムを作って最強になるんだ!
「間違いだ。こんなの間違っている!」
「間違っているのはあなたの存在ですよ」
女は氷の剣を生み出すと俺に振り下ろした。
「全く汚れてしまったではありませんか」
魔王の首を切り取った時の返り血を水で洗い流していると
「お前は何者だ!」
声がしてそちらを向くと新たな魔王が二人そこにいました。
「人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗るものですよ」
「ロフトだ」
「リナ」
二人は顔を見合わせたあと、私を睨みながらそう答えました。
「私はベリルと申します。今代の魔王であるお二人が何のようで?」
「お前が殺したのか?」
ロフトと名乗った男は私の後ろにいる殺した魔王を指差します。
「そうですが、何か」
突如、爆発魔法がリナという少女が私に向けて放ちますが水の壁で防ぎます。
「無詠唱だと!?」
「私はこれから行くとこがありますのでここで失礼させていただきますね」
「待って!」
私がご主人様の元へ向かおうとするのをリナが止めます。
「あなた方では決して私に攻撃を負わせることはできませんよ。それに今回の案件は全面的にあなた方の管理不行届きです。私はあくまで『世界秩序』に基づいて判断を下しました」
「まさか……お前、四精霊か!」
ロフトは酷く動揺します。
「だとしたら、なんです?」
「あれが四精霊?」
「ああ、そうだ。この世界の調整役として存在する四精霊の一角だ。俺もガキの頃炎の精霊と会ったことがある。恐ろしく強い」
ロフトはリナに説明をする。
まぁ、世界秩序ということを言いましたが単純に私のご主人様にケガを負わせてまで氷河を使わせた魔王への仕打が9割9分ですが。
「では、私は失礼します。この元魔王だった者の死体は任せましたよ。言ってはおきますが、死霊術を使ってもこの男はもう蘇りませんよ。魂まで完膚なきまでに破壊しましたから」
そうして私はご主人様の元へと向かいました。
「ヤバイな。精霊たちが動いている以上、早急に7人目を探さないとまずいことになるぞ」
「なら、ここで倒せば?」
「バカ言うな。あんなのと戦ったら間違いなく死ぬ。俺はまだ死にたくない。まだいっぱい女の子と遊ぶんだ!」
「最後のは余計。はぁ、仕方ない。早く7人目を見つけないと」
「それに欠けちまった色欲の代わりの魔王も見つけないとな」
「やることが多い」
「だからって俺を殴りながら眉間に怒りマーク浮かべんじゃねえよ」
「じゃあ、どうする?」
「ここはいったん引く。憤怒に指事も仰がないと行けないしな」
「金がない……」
「確かにそうだね……」
加山から大量のガキ共が送られてすでに一ヶ月。
マジで金がない。
主にガキ共の食費がバカにならない。
一回、加山に金を請求したが、革命で滅茶苦茶金がかかるんですよと明細書を送られてきた。
あれを見たら思わず、顔を覆いたくなるような気分になってしまった。
こうなったら仕方ないと自力で金を稼ぐしかないとクエストを受けまくったが、竜人族のことや獣人族の方でも革命による動乱でクエスト報酬額が減ってしまってどうにもならん。
挙げ句、俺のところに来た獣人族のガキ共への教育もリリやフェルミナ、それに先に来ていた奴隷だった3人が主体的にやってくれているが、元々文字も書けないようなガキ共が多いためか教育が長引く上に元が奴隷だったせいか精神的に病んでる奴が多くてそのメンタルケアも面倒でしょうがない。
「仕方ない。こうなったら」
「こうなったら?」
「おい、ガキ共!お前ら、いつまでも俺が養ってやることはできないことくらい分かっているよな」
「うん」
「まぁ」
昼食時にガキ共に向かって言うとガキ共も何となく分かっているのか俺にそれぞれ言う。
「すでにお前らの食費でとんでもないくらいかかっている。というわけで、お前らには多少なりとも働いてもらう」
俺はガキ共を連れて屋敷の庭に連れていく。
「お前らにはここで野菜など作ってもらう。自分達で食べるものだ。お前らに拒否権はないからな。もしするようなら、加山に突き返すからな」
「神様が言うのであるならやります」
「私も!」
「俺も!」
「神様は止めろ!」
「相変わらず、優斗くんを見る子達の目は凄いね」
クソッ、いい加減止めろ。
コイツら基本的に俺の事を神様とか呼ぶし、挙げ句病んでる奴もそうだけど、俺が話しに行くと妙に恭しいから対応困るんだよ。
「ともかく、ここの庭は全部お前たちに任せる。ここで野菜なり花なり作れ。それをお前たちの食事に当てたり、切り花として売って食費に当てる」
ガキ共を働かせることで多少は家計が良くなったが、相変わらず家計が火の車の状態だった。
これは金回りが良いクエストを受けるしかないか。
100話!
見てくださっている方々に感謝します。