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始まり

「おい、そろそろ行くぞ。」


その声に俺は振り向く。


「なんだ、智樹ともきか」


学友の川島智樹かわしまともきがやれやれと首を振りながらこっちに来る。


「そろそろ出発するんだから急いでくれ。じゃないと、檜山ひやま先輩にまたどやされる。」


俺、栗原優斗はこれから同じ大学のサークルの仲者で飲み会をすることになっている。

智樹は遅れていた俺を迎えに来たということだ。


「すまないな。ちょっとRPGで魔王攻略に勤しんでいてな。こいつがまた強いんだわ。」

「お前今勇者のレベルいくつだ」

「97」


ゲームの話をしながら貴重品を持ち、コートを着て出かける。


「そういや雪乃ゆきのちゃんどこ進学したんだ?」

「うちの大学だよ。どうしてもうちの大学に通いたいって言って猛勉強して推薦で受かったよ。全く、あいつ成績良いんだからもっと上を目指せばいいものを」


雪乃とは俺の妹、栗原雪乃くりはらゆきののことで今年受験生であった。


「それはお前、雪乃ちゃん初めて会った時からお前しか見てない重度のブラコンじゃないか。うちの大学来たがるのは絶対お前がいるからだろ」

「そんなわけあるか」


あいつは断じてブラコンではないがな。

まぁ、それを言っても智樹が信じないのは知っているから何も言わんが。


「うう、寒っ」

「海風が強いしな」


俺は寮から大学に通っており、俺の寮は海の目の前にあるため冬の海風が容赦なく吹く。


「早く、夏にならないかなぁー。そうすれば、まゆき先輩の水着姿また拝めるのに」

「また、女子メンバーから白い目で見られるぞ」


まゆき先輩は我が大学のミスグランプリで準優勝した同じサークル仲間である。


「お前は雪乃ちゃんっていうすんごい美少女がいるから目の保養があるから良いだろうが俺らにはまゆき先輩しかいないんだよ」

「はぁ」


妹が目の保養になんかなるか。

まぁ、そう思いつつ今年の夏のまゆき先輩の水着姿を思い浮かべそっと海を見てみる。なんやかんや俺も結構下心的なことを考えているんだな。

ぼんやりと冬の海を見ながら智樹の下らん話に相槌をうつ。


そうしていると、海がおかしなことになっているのに気付いた。

海の一部が変色して、白色になっている。

ゲームのやりすぎで目が疲れたのかと思って確認するが、どうも違う。


「なんかあそこだけ海の色がおかしくないか」

「え、どこ。なんにもなってないじゃないか。」


智樹には見えないのか?


「お前、ゲームのやりすぎじゃね。眼科行って来れば。それよりも早く行こうぜ、もう先輩たちいるみたいだぜ」


智樹が俺をせかす。

そのまま10分ほど歩いていたが、


「智樹、やっぱりさっきの確認してくるわ。先に飲み屋に行ってくれ、後から追いつく」

「え、あ、おい。ちょっと。しょうがねぇな、早く追いつけよ。」


そうして、俺は先ほどの変色した海の場所に向かって走っていた。

俺は昔から興味の持ったものには熱中する性格だった。

だから、あの時見た海の色に非常に興味を持ってしまった。


海岸線に着くとさっき見た時よりも色が変わっている範囲が大きくなっている。

来る途中にすれ違った人たちはまるでその光景に気づかないようだった。

普通なら止めておくべきだったと今なら思うがその時は俺のテンションも上がっていた。

もっと近づいてみよう。

そう思って近づいた瞬間、白い海から手が出て俺の腕をつかむ。白い手だった。


「ちょっ、なんだよこれ。がぼぉふぉ」


そのあまりにも強い力に引っ張られ、俺は頭から白い海に突っ込み、口の中に海水が入る。

浅瀬のはずなのに白い海はとても深く、そして白い腕は強力に引っ張り続ける。

やばい、これはまずい。

そう思い、必死に白い腕に引きはがそうとしたが周りからも白い腕が出てきて俺をさらに海の底へ引っ張った。

やがて、息が続かずそのまま俺の意識は沈んでいった。


「ごめんなさい…」


かすかにそう聞こえた気がした。


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