守護妖精( PAI "個人の人工知能 パーソナルAI"の一種 )はいつもあなたのそばで
あなたの未来はあなたが何も考えていなくても次の瞬間にある
打ちひしがれている少女がひとり
暗闇が忍び寄る・・・
ジェシカ(Jessica)は静かに話しはじめた
「死にたい。
死なせたい。
そうね。
そうしてきた人もいたわ。
ただ
確かなことは一つ。
そこから先は闇があなたを食らう。
2度とここには戻れない
でもいいわ
闇に両手を差出せばそれで終わる
たったそれだけ・・・
ただ
2度とここに戻ってくることはない」
黙り込んで動かない少女に
「あなたの右手を見て
そう右手
凍りついてうごかない?
焼け落ちてなくなってる?
あなたの左手を見て
そう
左手
1ミリも動かせない?
それに触れていない?
あなたに従っている
あなたにいつも従順である
両手は
いつも
あなたの思いに添ってきた
幼きとき
その両手を大きくさし上げ
だっこをねだった
うれしいとき
その両手を上にあげ
歓喜し
怒ったとき
その両手のこぶしを握り締めた
悲しきとき
その両手は涙を受け止め
楽しきとき
その両手いっぱい広げて
踊った
その愛すべき両手を
黒インクの敷き詰められたプールに沈めてしまうの
2度と浮かび上がれない闇の中へ
徐々に真っ黒に変色していくあなたの両手は
何を感じるのだろう
そして
あなたは何を思い出すのだろう」
力なく垂れ下がった両手から何かが伝わる
「両手の手のひらをゆっくりとみてごらんなさい
あなたのこころから送られている
血液によって
ほんのり肌色の温かき両手を」
「・・・あなたを信じて今もこうしてあなたを・見ている」
やがて
その両手は彼女の頬にとめどなく流れはじめた水を
やさしく受け止めていた
・・・どれほどの時間が流れただろう
水は引き時のよう
「さあ、いつまでもこのままではいられない
明日から忙しくなるから
戦うのもいい
避けるのもいい
逃げるのもいい
その両手と共に闇をふりはらうの
そして
その両手を光に向かって差し出す
そうすれば
必ず光はあなたを抱きしめるから
約束するわ
だって
私はそのためにあなたのもとにやってきたんだから
そう
あなたを光に導く守護妖精」
「はじめまして。
今日から私があなたのスマホに住むことになった
守護妖精ジェシカ(Jessica)よ。
もう大丈夫。
もうあなたは大丈夫。
だって私はかなり強いのよ
負けたことがないんだから」
近未来
スマホなどのモバイルなどに妖精が住むことになります。
そして人々は彼らを”守護妖精”と呼ぶようになります。
・・・そう
もうすこしであなたのもとにもやってきます。
だから
必ず待っていて・・・
PHOTO
CC-0 ◆ Original Photograph by DariuszSankowski
CC-0 ◆ Original Photograph by Ventus17
CC-ByNc◆ Photograph which was edited by Mick
あなたの未来はあなたが何も考えていなくても次の瞬間にある