お酒はほどほどに。
「・・・ーま。・・こさま。」
うるさいなぁ。
誰かに呼ばれてるような気がする。
今何時?いや、まだ寝かせてほしい。昨日も遅くまで働いてたし、なによりお酒がまだ体に残っててつらいんだから。もうちょっと、寝かせてよー。
あぁ、それにしてもこのふかふかのベッド気持ちいいなぁ。
うちのベッドこんなふかふかだったかなぁ。
「みこさま。」
「んー、・・・うるさい。」
掛け布団を引っ張って、暖かい布団の中に潜り込む。
もう、なんなのよー。寝てるんだから静かにしてほしい。
「神子様っ!」
大きな声と同時に、自分じゃない力で布団が一気に引っ張り上げられた。
「うわぁ!?はい!?って、え?」
吃驚して寝ぼけながら飛び起きて、辺りを見回して固まった。
「え?」
だめだ。
お酒が残ってるし、寝ぼけてるしで全っ然頭が働かない。
なんで、知らない部屋の知らないベットで寝てるのかとか。
なんで、知らない人達がいるのかとか。
なんで、知らない人達は美形が多いのかとか。
なんで、美形は美形だけれどアジアの顔立ちじゃないのかとか。
ちょとまて、私を起こしたお爺さん。アンタ誰だ。
「神子様。おはようございます。神子様のお目覚め、喜ばしい限りでございます。私、神子様にお会いできたこと、身に余る光栄でございます。」
私の腰ぐらいほどしかない、小さなお爺さんは私に恭しく礼をとる。
なんだか、よく分からず私の頭も下げておく。
「さて、お目覚め所大変申し訳ございませんが、神子様のこと詳しくご説明をさせて頂きたいのですが宜しいですか?」
はい?
みこ?ミコ?ミコとはなんのことですか?
ん?私がミコ?私は優子。あれ?
「あの、私ミコっていう子じゃないんですが。私は優子って言います。此処はどちらでしょうか?私、酔っ払ってしまって。」
そうだ。昨日は、私の誕生日で、ママのお店でやけ酒して、それから。
きっと酔っ払っていたのを介抱してくれたに違いない。うーん。家に着いてからの記憶が無いし。ちゃんと帰れなかったのね、私。
「ご迷惑をおかけしてしまったんですね。大変申し訳ありませんでした。わざわざ介抱してくださって、ありがとうございます。あの、仕事もありますし、一度家に帰ってから、また改めてお詫びに参りますので。」
ベッドの上からで申し訳ないけど、深々と頭を下げる。
いやー、お酒の飲んでやっちまったことあまり無いのに。これはやっちまったなー。大の大人が情けない。
「いやいや、神子様!頭をお上げください。」
お爺さんがわたわたと慌ててるが、私の名前は優子だ。
なるほど、外人だから聞き取りずらいのかな?そういうことにしといていいかな?
お爺さんは、ゴホンと咳払いをすると私に深々と頭を下げた。
「神子様。貴方様は、この世界を救う神の子、神子様でございます。そして、神子様をお守りするのがこちらにおります。王子殿下、騎士団長殿、魔術師殿、そして神官の四名でございます。この国には魔王がおりまして、そして魔物がおります。ですから、神子様のお力でその者等を浄化をしていただきたいのです。どうか、この世界のためお力をお貸しいただきますよう、お願い申し上げます。」
お爺さんの言葉と共に、目の前のキラキラした外人さん達も跪いて頭を下げる。私に。
やばいなー。これはやばいなー。変なのに捕まったなー。
どうして、私が世界を救うのよ。私はただの三十路の女です。一般人です。
いや、これは夢か?やっぱり飲み過ぎはよくないんだなー。
「えーっと、夢ですよね?それともからかってるとか?」
「夢などではございません。からかうなどとんでもない。神子様。現実でございます。」
そんなわけない。
だって、私以外は西洋の顔立ちで煌びやかな服を着てるなんて。
西洋の顔立ちのくせに日本語で言葉が通じてるなんて。
窓から見える外の世界がビルや建物が一つも見えないなんて。
夢以外の何者でもない。
「この世界は、チキュウとはまた別の世界でございます。この世界の名前はアンフラボン。魔術の世界でございます。」