ひとりじゃない
俺たち3人は集団目かげて走り出す。
俺はすぐさま真ん中にいる大男の足元に風中級魔法ウィンドプレスを放つ。
男は俺の魔法に直撃し林の奥に飛ばされていった。
おそらく、飛ばされただけで倒れていないだろう。
まぁ、それは作戦の内などで問題ない。
すぐさまエイダ、セナが大男の飛んで行った方向にある林に向かって走り出す。
「ちっ!何だいあんたたち!ちょっとお前たちギルのやつを迎えに行ってやりな。ギルのやつと一緒にさっき林に入っていった2人を倒すんだよ!」
「分かりやした!ミランダさん!」
だが、俺は奴らにそんなことはさせない。
俺は下っ端どもがセナたちを追えないように水と土混合で作る上級魔法、泥沼を使う。
下っ端の奴らは泥に足が絡め取られ動けないでいる。
「ほぉ!坊やなかなかやるようだね。一体私たちに何の用だい?こんなことしてただて済むと思ってのかしら?」
「お姉さんたちが捕まえた魔族の女の子を助けに来たんだ。悪いけど手加減はできないよお姉さん。」
「ふふっ。ははははっ!笑わしてくれるね坊や!その余裕の顔を凍りつかせてあげるわ!あんたたちそんな沼早く出てさっさとあの坊やを殺しなさい。」
すると10人ほどの下っ端が何とか沼から出ようと這い上がろうとしてくる。
俺は好機だと思いブリザードを放つ。
沼に足を絡め取れていた下っ端全員は凍らすことができたが、あの魔法使いであろう女は自分の周りに火の魔法を使うことによって俺のブリザードを防いでいた。
「ほぉ!坊やその年でブリザードが使えるのかい!凄いねぇ。だけどねまだ私に戦いを挑むのは早かったようね!神秘なる焔よ全てを燃やし尽くしたまえフレイム!」
女が使ったのは火の中級魔法フレイム俺に目かげて広い範囲で炎が飛んでくる。
これを俺は水の中級魔法ウォーターウォールを使う。
俺の目の前に水の壁ができフレイムを無効化する。
女はそれに構わずドンドンとフレイムを使って俺に目かげて使ってくる。
悪いがそんな雑い魔法じゃ俺には届かないぞ。
俺はウォーターウォールで防ぎ続ける。
「あははっ!そんな守ってるだけじゃ何もできないわよ!そのまま何もできないまま魔力枯渇で倒れなさい!」
どうやら彼女は俺がまだ子供なので、このまま魔法を使い続ければ魔力枯渇で倒れると思っているようだ。
悪いが俺の魔法容量は常人を遥かに超えているとウィルから言われているのでたぶん先に倒れるのは向こうの女だろう。
だが待つのも面倒くさいので俺は攻撃に転じる。
もう一回ブリザードを唱える。
するとまた女は火の魔法を自分の周りに覆い自分が凍るのを防ぐ。
「無駄よ!あなたがどんだけ頑張っても私は火の魔法があるから凍らないわ!」
「それはどうかな?」
俺はそこで闇の上級魔法、魔力解体を使う。
魔力解体とは相手の魔法に使われている魔力を待機中に分解させることによって発動できなくする魔法である。
「な?なぜ?私の魔法がはつどうしないと?もしかしてあなた何かしたのね!しかも同時に2つの魔法が使えるなんてあんた一体何者よ!」
俺が二個の魔法を同時に使えるようになったのわつい数日前のことである。
どうやら、同時に使うことはなかなか出来ることではないらしいので、これからはあまり使わないでおこう。
「ごめんね、お姉さん答える気ないよ。」
そのまま女は凍りついていった。
俺の戦闘が終わるとすぐさまエイダとセナも帰ってきた。
どうやらあっちの戦闘も終わったらしい。
少しかすり傷があったので回復魔法を使ってあげる。
「ティファナは馬車中よね、早く助けてあげないと。」
エイダは馬車に入ると縄で縛られ、布を巻かれて口を塞がれていたティファナを発見した。
すぐさまティファナの縄と布を取ってあげる。
「き、貴様らの助けなど来ずとも妾だけでいけたのじゃ!余計なことしよって!」
「それならば最初から捕まってりしないんじゃないの?」
「う、うるさい!お前は黙っておれ!お前たちに助けられるぐらいなら奴隷になっておったほうがマシだったのじゃ!どうせ妾は1人だし新しいご主人に仕えるのもわるくないしの!」
ここまでくると救いようがないな。
俺がそう思っているとエイダがティファナに近づく。
何をするのだろうと思ったがエイダは思いっきりティファナの頬に向かってビンタを喰らわせた。
「な、何をするのじゃ!この人間!貴様!妾を舐めておるのじゃな!」
そう言うとエイダはティファナを強く抱きしめた。
「ティファナ、自分のことをそんな風に言っちゃいけません。女の子なんだから奴隷になってもいいだなんて、そんなこと良いはずがないでしょ!自分を大事にしなさい!」
「う、うるさい人間!貴様らなんて妾のことを魔族だからといって差別の目をして見るのじゃろ!貴様らのとこにいても奴隷と変わらん!妾は一人なのじゃ!」
「そんなことないわよ、ティファナ。貴方は私たちの家に住んでるのだから貴方は私たちの家族の一人よ。」
「そ、そんなこと口でのでまかせじゃ!」
「それじゃあ何で私たちが貴方を助けに来たと思うの?」
「そ、それは・・・・」
ティファナは何も口にできずにいる。
「それはねティファナ、私もセナもアランも貴方のことを家族として受け入れているということなのよ?まだ来て2週間しか経ってないけど、貴方が来て私は娘ができたみたいに嬉しかったのよ?」
エイダの顔には慈愛で満ち溢れた顔をしている。
彼女は嘘偽りなど本当に言っていないのだろう。
ティファナはエイダの顔を見る。
ティファナの目には涙が溜まっていた。
「本当か?お主達は妾を毛嫌いせんのか?殴ったり蹴ったりせんのか?」
そんなティファナにエイダはコクリと頷いて答える。
するとティファナはエイダの胸に顔を埋め泣き始めてしまった。
多分ここに来て2週間の間溜まっていたストレスや悲しみが一気に解放されたのだろう。
そんなティファナに対してエイダは頭を撫でてあげヨシヨシと慰めてあげている。
やはり、エイダもお母さんだなぁ。
俺の場合は泣くことなんてないからあんなことされたことないが、ちょっと羨ましかった。
しばらくし、俺のエアブーストを使い家に戻った。
するとハンスは俺たちのことを待ってくれており、再び料理を温めなおしてくれた。
しかし、ティファナは疲れたのか先に寝ると言い出した。
その時ティファナはエイダと一緒に寝たいと言い出しエイダは今ティファナと一緒に寝ている。
まぁ、これでティファナもエイダには心を開いたのだろう。
多分これでティファナも何とかここで暮らしていけるだろう。
本当に良かった。
【ティファナ視点】
今妾は幸せじゃ。
エイダという人間じゃが妾のことを愛してくれる。
昔の妾ならこんな状況死ぬまでありえんと思っておった。
妾が3歳の頃、城の外で遊んでいるとき人間の賊に襲われて捕まったことがあった。
どうやら人間の賊が妾が魔王だということを嗅ぎつけて、奴隷として売ればかなりの額になると思って捕まえに来たらしい。
その時の賊達は妾に対して蹴ったり、唾を吐いたり、食さえも与えてくれなかった。
4日後に父が妾を見つけて助けてくれたが、その時の妾は人間というものが心の奥底から憎くなった。
魔族のことをなんとも思っていなくて、玩具だとしかおもっておらん。
妾はその時から人間のことなど一生信頼せんと決めた。
しかし、このエイダという女は妾のことを娘のように大事だと言ってくれた。
その眼を見ていると母上と同じ眼をしている。
その時、妾は人間の中にも良い人も居るのだと初めて気づいた。
妾は何て狭い世界だけを見ていたんだと。
あんな賊だけが人間の全てではないんだと気付かされた。
もしかしたら父上はこのことを伝えたくて妾をここに置いたのかもしれぬ。
でもまぁ、父上のことだから何と考えていなくてもおかしくわないのじゃが。
まぁ、もう疲れた。
今はエイダの腕の中で寝るとしよう。




