表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/28

彼女が水着にきがえられない。


「こんなところで兄妹喧嘩か」


 声の主は私の背後でちょうど着替え終わったところだった。

 開いていたロッカーの扉に隠れて気づかなかったが、毎度毎度ヤツはとんでもない。

 私はすぐに首を元に戻すと、正面からお兄ちゃんの目をふさぐ。


「な、何セリカちゃん?」


「毒だから」


「どく?」


 目に毒。

 学校指定のスク水。

 それは別にかまわない。


「なあ花咲、その水着着るの大変じゃなかったか?」


「ああ。久しぶりだからちょっと手間取った」


 その水着からはわがままなボディが野放しになっている。

 『花咲』と書かれたゼッケンがこれ以上ないくらい主張してくる。

 肉という肉がはみ出て、これはもうわいせつな罪に問われかねない。


「久しぶりって、どれくらい着てないんだ?」


「小二のときに海に行ってからかな?」


「小二? 今まで体育の時間とかどうしてたんだ?」


「休んでた。プールの塩素アレルギーだって言って」


「何でまた……」


「いや、その頃から胸がな……」


「胸って、小二だぞ?」


「うん。ちょうど今のセリカくらいにだったかな」


「ちょ、ちょっと待て。ふざけるな。ここまで育てるのに私がどれほど苦労したと思っているんだ」


「あたしだって散々苦労しているんだ」


 まあ、小二の時分から他を圧倒するような成長は男子のからかいの対象になる。

 こないだ、胸を押さえてあったタオルがずれて、「花咲、すごい胸筋」と話題になってたからな。

 うちの学校の男子がピカイチでバカでよかった。

 ただ、「ちょっと触らせてくれ」とか言われて、それを拒むのに難儀していたようだった。


 しかし、そんな苦労もすべては女子だとカミングアウトできずにいる自分の責任。

 そんな苦労を除いて条件をフラットにして考えると、やはり花咲の体は……。


「卑怯だな」


「ひ、卑怯?」


 あと卑猥だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ